ディズニー・チャンネルの人気シリーズ『ハイスクール・ミュージカル』でライアン・エヴァンスを演じた俳優のルーカス・グラビールが、もし同作をもう一度作るなら、ライアン役は他の誰かに譲りたいと語った。(フロントロウ編集部)

「ライアンはゲイ」とケニー・オルテガ監督

 テレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』シリーズの監督を務めたケニー・オルテガが先日、米Varietyとのインタビューで同シリーズに登場するライアン・エヴァンスのセクシャリティに言及。

 “これまで手がけてきた作品では共通してクィアの美しさを描いてきたのか”という質問に対する回答の中で、「『ハイスクール・ミュージカル』に出てくる、シャーペイの双子の弟のライアンについては、大学に行った時にカミングアウトするっていう設定にしたんだ」とケニーは語り、高校を舞台にした作品内ではライアンがゲイであることは明らかにしなかったものの、彼はゲイだと明かした。「カミングアウトよりも、彼のありのままの色を前面に出してみたんだ」

画像: 「ライアンはゲイ」とケニー・オルテガ監督

 ケニーはライアンがゲイであることを、2006年から2008年まで続いたシリーズの中で明かさなかった理由について、「僕が懸念していたのは、ファミリーや子供たち向けだったということでね」と、『ハイスクール・ミュージカル』がファミリー向けの映画であったことをあげ、「ディズニーにはまだその一線を超える準備ができていないんじゃないか、まだその領域に進む準備ができていないんじゃないかって思ったんだ」と、2020年の現在ほどLGBTQ+の人々に世間がそれほど寛容ではなかった時代に作品内でカミングアウトを扱うことのハードルの高さを振り返った。

ライアン役がケニーの発言に言及

 ケニーのカミングアウトを受けて、今回、同シリーズでライアンを演じた俳優のルーカス・グラビールが米TMZとのインタビューでケニーの発言に言及した。

画像1: ライアン役がケニーの発言に言及

 もし今、もう一度『ハイスクール・ミュージカル』を作るようなことがあれば、ライアン役をぜひ他の人に譲りたいとルーカスは考えているようで、「(ライアンを演じられる)才能のあるゲイの俳優たちはたくさんいるからね。だからもし今、『ハイスクール・ミュージカル』を撮影するとしたら、僕がライアンを演じるかは分からないな」とルーカス。

 「演じたいとは思うよ。だけど、僕が最もしたくないのは、他の人たちから機会を奪ってしまうことだからね」とした上で、「ストレートの白人男性として、僕は自分が意図しなくても、他の人たちから機会を奪ってきてしまっただろうからね」と、これまで有色人種や性的マイノリティの俳優たちから機会を奪ってきたことを自覚していると打ち明け、そういった人たちに役を譲りたいと語った。

画像2: ライアン役がケニーの発言に言及

 ルーカスは続けて、『ハイスクール・ミュージカル』を撮影していた当時、ケニーにライアンがゲイであるか尋ねていたことを明かして、次のように当時を振り返った。「ある時、ケニーのもとへ行って、『キャラクターについて少し話すことはできますか? ライアンはゲイですよね?』って訊いたことがあった」とルーカス。

 「ケニーからは、『そうだね、これは子供向けの番組においては、時に繊細なトピックになりうるんだけどね。ディズニーにはまだそういう準備ができていないんじゃないかと思うんだ。もちろん、彼がゲイであることには同意するし、リアルな人物像を示す機会はあると思うけどね』って言われたんだ」とルーカスは語り、ケニーが自身にもディズニーの子供向け番組で性的マイノリティを描く上での懸念を打ち明けていたことを明かした。

画像3: ライアン役がケニーの発言に言及

 ライアンは続けて、『ハイスクール・ミュージカル』が公開された2006年当時の状況を回想。「(カミングアウトは)多くの子供たちが経験することだと思うけど、あまりテレビで描写されることはないよね」と、現在でも子供たちが見るような番組でカミングアウトが描かれることは少ないとした上で、「当時はすごく煌びやかに描かれるか、公表せずに、口を閉ざしたままのどちらかだったと思う」と語り、当時の性的マイノリティの人々の描写のされ方について、少々大袈裟にフィーチャーされるか、公表されないかのどちらかというステレオタイプがあったことを振り返った。

 「僕らは可能な限り、幼い頃から子供たちを教育していくべきだと思うし、だからこそ、この国の将来を担っていく子供達に素晴らしい番組を提供できるかは、ディズニーの手に委ねられていると思う」とルーカス。幼い子供たちを教育していけるかはディズニーで働く大人たちにかかっているとした上で、「映画産業にいる僕らには、楽しませるだけでなく、教育していく義務もあるんだ」と、自分たちにはエンターテイナーとして、教育していく義務もあると力強く語った。(フロントロウ編集部)

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