Photo:ゲッティイメージズ,スプラッシュ/アフロ
消息不明となっていた湖で遺体となって発見された人気ドラマ『glee/グリー』の俳優ナヤ・リヴェラ。彼女が自分の命を危険に晒して、4歳息子を生かそうとした可能性があることを警察が発表した。(フロントロウ編集部)

ナヤ・リヴェラ、最後の力を振り絞って息子を救った可能性

 米現地時間の7月8日に4歳の長男ジョージ―君と泳ぎに出かけたカリフォルニア州ロサンゼルス近郊にあるピルー湖で消息がつかめなくなっていた俳優のナヤ・リヴェラは、現地警察やレスキュー隊による5日間におよぶ懸命の捜査の末、7月13日午前、遺体で発見された。

 13日午後に行なわれた会見で、過去にも水難事故が相次いでいたピルー湖で発見された遺体がナヤのものであると「確信している」と発表したベンチュラ郡警察は、今後、検死の過程で調査する歯科治療歴をもとに、遺体の身元を断定するとしている。

画像: ナヤ・リヴェラ、最後の力を振り絞って息子を救った可能性

 この会見の中では、ナヤの最後の瞬間を目撃したとする、長男ジョージ―君の証言をもとに、胸が締め付けられるような推測についても明らかにされた。

 ベンチュラ郡警察のビル・アユーブ保安官は、自殺や他殺の可能性は無いとしたうえで、ナヤを襲った不運な事故について、こんな見解を示している。

「彼女の息子の話から、湖に出かけたナヤと彼が、ある時点では、一緒に泳いでいたことが分かっています。彼女の息子は、ナヤからボートに戻るのを手伝ってもらったと話しており、後ろから押し上げてデッキに乗せてもらったと説明しています。振り返ると、ナヤが水中に消えていくのが見えたと、彼は捜査員たちに話しました」

 「湖では午後になると、とくに流れが強くなることから、当局は彼女が消息を絶ったのは午後の半ば(午後3時頃)だったのではないかと見ています。固定されていなかったボートが流されてしまい、彼女は力を振り絞ってなんとか息子をボートの上に戻しましたが、自分自身を救う力は残っていなかった可能性があります」

 警察の推察を要約すると、ジョージ―君と2人で湖の水中で遊んでいたところ、ボートが流されてしまい、ナヤは慌てて、なんとかジョージ―君をボートに押し上げたが、力尽きてそのまま溺れてしまった可能性があるということ。そして、ジョージ―君は水の中へと沈んでいくナヤの姿を目の当たりにしたということのよう。

画像: 事故が発生したピルー湖のほとりで会見を行なうベンチュラ郡警察のビル・アユーブ保安官。

事故が発生したピルー湖のほとりで会見を行なうベンチュラ郡警察のビル・アユーブ保安官。

 ナヤと『グリー』で共演したアーチー役のケヴィン・マクヘイルは、警察の発表を受け、「ナヤが愛する息子をボートに帰すことができて本当に良かった」と、彼女に宛てて綴った長文メッセージの中でコメントしている。


ボートに残された救命胴衣

 ジョージ―君は、ボートの返却時間が過ぎてもナヤたちが戻って来なかったことを不審に思って探しに来たボートの管理担当者により、湖の北側を漂流しているのが発見された。

 発見時、ジョージ―君はボートの上で1人で眠っていたことが分かっているが、ジョージ―君は母が戻って来るのを待ち続けているうちに、疲れて眠ってしまっていた可能性が高い。

画像: 2019年2月、ウェエスト・ロサンゼルスで行なわれた映画『レゴ ムービー 2』のプレミアにジョージ―君を同伴したナヤ。

2019年2月、ウェエスト・ロサンゼルスで行なわれた映画『レゴ ムービー 2』のプレミアにジョージ―君を同伴したナヤ。

 ジョージ―君は救命胴衣を着用していたが、アユーブ保安官は「大人用の救命胴衣はボートの上で発見されました」と報告しており、ナヤは救命胴衣は着けず、水着だけで泳いでいたよう。

 もしも、ナヤが先にボートに上がり、その後、ジョージー君を助けていたら、もしかしたらこのような結果にはならなかったかもしれない…と考えると、なんともいたたまれないが、愛する息子に危険が迫っている状況で、一体どれだけの母親もしくは父親が咄嗟の判断を下せるだろうか?

 ジョージ―君は、現在、父親のライアン・ドーシーのもとへ引き取られている。ナヤとライアンは2018年に正式に離婚が成立しており、共同親権のもと、協力し合ってジョージ―君の育児を行なっていた。

画像: 2017年、まだ赤ちゃんだったジョージ―君を連れてスーパーに買い出しに出かけたナヤ。

2017年、まだ赤ちゃんだったジョージ―君を連れてスーパーに買い出しに出かけたナヤ。


ピルー湖に警告サインを 署名活動がスタート

 米Los Angels Timesによると、1994年から2000年の間に7人もの人が溺れたと伝えられるピルー湖。さらに、ピルー湖の公園緑地管理者を務めたダグラス・ウェスト氏は2000年に発刊された新聞記事のインタビューで、23年にわたる勤務期間において12件以上の水難事故を目にしたと証言している。

 ウェスト氏いわく、事故に遭った人のほとんどが、遊泳禁止区域に入ってしまった人たちだというが、「泳ぎが得意であっても救命具を持参して身に着けるべきだ」などと忠告していた。

画像: ピルー湖に警告サインを 署名活動がスタート

 ナヤの事件を受けて、オンライン署名サイトChange.orgでは、過去にも何件もの水難事故が発生しているピルー湖に遊泳の際の危険や注意事項を警告するサインを設置するべきだという署名運動が開始。記事執筆時点で3万8千件を超える人々が賛同している。

 現時点ではピルー湖全体が遊泳禁止となることは視野に入っていないようで、アユーブ保安官はピルー湖では「泳ぐことが許可されています」と明言している。(フロントロウ編集部)

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