バンクシー、地下鉄の車内に新作を描く
イギリスの覆面アーティストとして有名なバンクシーが、新たな作品を自身のインスタグラムで公開した。今回の舞台は、イギリスのロンドンを駆け巡る電車、通称チューブの中に描かれた。英BBCによると、バンクシーはキャリアの初期にはチューブにねずみやさるをスプレーペイントしていたということで、今回は久しぶりにチューブに戻ってきたことになる。
この映像のなかでは、バンクシーと思われる男性が防護服を羽織り、清掃員のフリをして電車の中へ。そして、くしゃみをするネズミ、マスクをするネズミ、手の消毒液を持つネズミなどを大きく描いた。
また、最後には駅のホームの壁に「I get lockdown(ロックダウンされた)」という文字を、そして閉じていく電車のドアには「but I get up again(でもまた立ち上がる)」という文字が。これは、イギリスのアナーキーパンクバンドのチャンバワンバによる1997年の大ヒット曲「タブサンピング(Tubthumping)」の歌詞、「I get knocked down, but I get up again(ノックダウンされた、でもまた立ち上がる)」に合わせたフレーズのようで、動画ではこのシーンに、同曲がBGMとして使われた。
ロンドンの電車を管理するロンドン交通局はこの映像が公開される数日前に、そのポリシーにのっとって、落書きは消したという。しかしバンクシーには感謝しているとし、こうコメントしている。
「人々にマスクをつけるよう奨励する思いには感謝しています。バンクシーには、適切な場所で、利用者に向けた新しい彼のメッセージを伝える機会を是非オファーしたいと思っています」
バンクシーの顔が見えた?
これまでバンクシーは、自身が描いたグラフィティだけを発表することが多かった。イギリスの老舗オークションであるサザビーズで、約1億5,000万円で落札された直後にシュレッダーで半分まで裁断された「少女と風船」は、本来は絵がすべて裁断される予定だったと明かすために制作過程を映した映像が公開されている。
しかし今回の映像では、マスクやゴーグルをしているとはいえ、バンクシーらしき人物が落書きをする様子がしっかりと映っている。この人物はただの役者である可能性もあるけれど、スプレーペイントをしている様子も収められているため、本人なのではないという声もある。
ここで振り返りたくなるのが、2019年7月に英テレビ局ITVの倉庫から見つかったとされる、2003年にバンクシーをインタビューしたとされる映像。口元をバンダナで隠したこの映像の男性が本物かどうかは不確かだけれど、この時のエキシビションは運営側もはっきりしている公式のものだったという。しかしバンクシーは、「ノーコメント。こんなのは大量にあるんだ」とした。
果たして今回の映像の人物はバンクシー本人なのかどうか、覆面アーティストはその正体にも注目は尽きない。(フロントロウ編集部)