『ハリー・ポッター』シリーズでマルフォイの父親であるルシウス・マルフォイを演じたジェイソン・アイザックスが、20年にわたって闘った薬物やアルコールへの依存を語る。当事者の彼が語った依存のきっかけとは?(フロントロウ編集部)

16歳から依存症に悩んだジェイソン・アイザックス

 原作小説から映画まで、世界中で大人気の『ハリー・ポッター』シリーズで、マルフォイの父ルシウス・マルフォイを演じたジェイソン・アイザックスが、英The Big Issueのインタビューに応じた。ジェイソンといえば、『ハリー・ポッター』シリーズの他にも、『アルマゲドン』のロナルド・クインシー博士や、『スウィート・ノベンバー』のチャズなど、数多くの役柄を演じてきた演技派。そんな彼の演技の深さは、乗り越えてきた苦しい過去も影響していたのかもしれない。ジェイソンは、こう明かす。

画像: 16歳から依存症に悩んだジェイソン・アイザックス

「僕は依存的な性格でね。16歳になるまでにはお酒を飲んだことがあったし、その頃から数十年にわたるドラッグとの関係が始まったんだ」

依存症のきっかけとなった出来事とは?

 ジェイソンが、まだ幼い16歳という年でお酒や薬物にハマったのには、あるきっかけがあったという。

「当時僕は、今思い起こせば刑務所にいるべきだと思えるバーの店員をヒーローだと思っていて、彼は(リキュールの)サザンカンフォートのボトルを1本くれたんだ。トイレで1本全部飲んで、ふらふらしながらパーティーに出かけて、滑稽なほどよろよろしてた。吐いたし、倒れながら巨大なカーテンを引き倒して、1人の女の子にキスして…、彼女に申し訳ない。そして外に出て、また吐いて、道端でコケて頭にケガをして、服が血まみれになった。

翌朝は、頭が割れるような頭痛やゲロの臭い、大きなかさぶたと、本当に恥ずかしい記憶とともに起きた。そこで考えたのは、ただただ…、こんなことをもう1度するのが待ちきれないってこと。

なぜかって?自分にも分からない。遺伝?育った環境?星座?ただ僕が知ってるのは、あの夜に感じた完全なるエクスタシーを20年間追い求めて、結果は本当に悲惨なものだったということ」

ジェイソン・アイザックス、16歳の自分に思うこと

 酷い記憶や身体的な負担があれば、反省してお酒やドラッグに手を出さないという選択をしそうなものだけれど、ジェイソンはむしろその出来事がきっかけで、お酒やドラックを追い求めるようになったという。当事者として、その経験を隠さず話す彼はさらに、自分でも衝撃だったという様子で、当時頭に浮かんだある考えも明かす。

画像: ジェイソン・アイザックス、16歳の自分に思うこと

「自分は壊れてると思った。自分が(依存から)足を洗う前に、もし知っている人が全員、本当に1人残らず死んでも、そんなに気にならないなって突然思った瞬間を覚えてるんだ。もしそうなったら、部屋で1人座って、ドラッグをする言い訳になるし、他の人達はみんな『まぁ、そうだよな。仕方ないさ。何が起こったか知ってるだろう?』って言うだろうから」

 ジェイソンの話から単純に計算して、16歳から36歳の間、依存症と闘ったジェイソン。現在彼は57歳となっており、立ち直ってからも20年が経った。そんな彼は、16歳の自分を振り返ってこう語った。

「16歳の自分が驚くだろうことは、僕は大丈夫ということ。シンプルな幸せを、シンプルなことに見出せるようになった。いつもではないし、完璧でもないけど、充分なんだ」

(フロントロウ編集部)

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