アメリカ各地で「郵便ポスト」が次々と姿を消している件に、セレブたちが危機感を露わにしている。一体何が起きている? (フロントロウ編集部)

アメリカの街から消える「郵便ポスト」

 今、アメリカ各地で街のあちこちに設置さえれていた「郵便ポスト」が忽然と姿を消したり、使用禁止の措置が取られるといった前代未聞の現象が起きている。

 これは、11月に行なわれる大統領選挙で再選を目指す共和党のドナルド・トランプ大統領が、自分にとって不利となる恐れがある郵便投票をなんとかして阻止しようと講じた策の1つで、8月15日から16日の週末にかけて、アメリカ各地のたくさんのSNSユーザーたちが、前触れもなく回収されて収容所に山積みにされた郵便ポストや使用禁止のため施錠された郵便ポストの目撃情報を報告している。

 新型コロナウイルス(Covid-19)のパンデミックが続くなか、11月3日に行なわれる大統領選では、未だかつてない記録的な人数の有権者が郵便による事前投票することが予想されている。もともと、郵送での選挙を行っていたコロラド州、ハワイ州、オレゴン州、ユタ州、ワシントン州の5州に加え、パンデミックに伴い、カリフォルニア州やニューヨーク州なども郵便投票の利用を呼びかけている。

 そんななか、これまでに行なわれた世論調査で対立候補である民主党のジョー・バイデン前アメリカ副大統領にリードされているトランプ大統領は、とくに投票率が低い傾向にある若者たちが、投票所に出向かずとも投票が行える郵便投票を活用することで、民主党への票が増えることを数カ月前から警戒。「郵便投票は“不正をしてくれ”とお願いするようなもの。用紙を盗んだり、勝手にサインをして送ったりするだろう」と、ツイッターを通じて郵送による投票に拒絶反応を示した。

画像: アメリカの街から消える「郵便ポスト」

 専門家は、郵便投票が不正にはたらくという証拠は無いと説明しているが、トランプ大統領は、米国郵政公社「USPS(United States Postal Service)」に対し、すでに全米各地で報告されているポストの撤去のほか、補助金の拒否や営業時間の短縮といった方法でも圧力をかけ、国民の投票用紙の返送が期日内に間に合わなくなるよう仕向けている。

 これを受け、民主党幹部のナンシー・ペロシ議長は、公開書簡を通じてトランプ大統領率いる共和党は「大統領選を妨害する運動を展開している」と非難。「大勢の命や生活、そしてアメリカの民主主義の命が、この大統領によって脅威に晒されている」と危惧し、アメリカ郵政公社を守るための法案を審議するため、休会中の連邦下院を再開して近日中にも採決する方針を示した。

画像: ニューヨ―ク・ブロンクス地区の駐車場に集められた回収済みの郵便ポスト。

ニューヨ―ク・ブロンクス地区の駐車場に集められた回収済みの郵便ポスト。


多くのセレブがトランプ大統領の「選挙妨害」を非難

 トランプ大統領がこれまで行なってきた、分断的で弱い者に対する強硬策を辞さない政治に不満を抱き、11月の大統領選では必ず「落選させてみせる」と宣言したシンガーのテイラー・スウィフトは、「トランプによる計画的な郵政公社の解体は、ある1つのことを明らかに証明している。彼は、私たちが自分に大統領でいて欲しくないと思っていることを認識しているの。彼は権力にしがみつくために、図々しくもズルをして、何百万人ものアメリカ人の命を危機にさらしている」とツイート。

画像: 多くのセレブがトランプ大統領の「選挙妨害」を非難

 さらに、ドナルド・トランプ大統領の無能なリーダーシップは、私たちが巻き込まれている危機を重大に悪化させた。そのうえ、彼は、それを利用して、私たちが安全に投票を行なう権利をくじこうとしている」と続け、「みんな、投票用紙を早く請求して。期日前投票を行おう」と有権者たちに呼びかけた。

 テイラーと同様に反トランプ派で知られ、これまでにも再三にわたって自身のファンたちに賛同を訴えてきたディズニー・チャンネル・オリジナル映画『ディセンダント』シリーズのダヴ・キャメロンやドラマ『カーニバル・ロウ』のカーラ・デルヴィーニュ、ドラマ『バットウーマン』のルビー・ローズ、ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のマヤ・ホークも、テイラーの先のツイートをインスタグラムストーリーでシェア。

画像: 左から:ダヴ・キャメロン、カーラ・デルヴィーニュ、ルビー・ローズ、マヤ・ホーク

左から:ダヴ・キャメロン、カーラ・デルヴィーニュ、ルビー・ローズ、マヤ・ホーク

 映画『プロジェクト・パワー』のジョセフ・ゴードン・レヴィットもテイラーのツイートを引用して「早めに投票しよう」と呼びかけたほか、ディズニーチャンネルのテレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』のアシュレイ・ティスデイルもテイラーのツイートを引用して「これが真実」とコメントした。

画像: 左:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、右:アシュレイ・ティスデイル。

左:ジョセフ・ゴードン・レヴィット、右:アシュレイ・ティスデイル。

 『ハイスクール・ミュージカル』のヴァネッサ・ハジェンズは、資金繰りに困窮する郵政公社を救うため「#SaveTheUSPS」というハッシュタグのもとに拡散されている「もしも大人のアメリカ国民の半分が11ドルくらいで販売されている切手シートを購入すれば、それだけで15億ドル(約1,590億円)の支援になる」という投稿を共有。

 リアリティスターのクロエ・カーダシアンは、「スティーブン・ムニューシン財務長官に私たちには郵便投票が必要だとツイートして、郵政公社を救いましょう。#MailedItというハッシュタグを使うとサマンサ・ビーが1回あたり1枚の切手を購入してくれます」と、テレビ司会者のサマンサ・ビーが主導する支援活動を後押しした。

画像: 左:ヴァネッサ・ハジェンズ、右:クロエ・カーダシアン

左:ヴァネッサ・ハジェンズ、右:クロエ・カーダシアン

 郵政公社は政府からの補助金、つまり税金からの収入が無いため、その運営資金は切手やオリジナルグッズなどの商品の販売収益に頼るしかない。郵政公社が提供しているサービスは、郵便投票だけに限らず、アメリカ国民にとってはさまざまな局面で重要な役割を果たしている。

 現在アメリカでは、トランプ大統領の“やり方”に反対する人々が、相次いで切手やグッズなどの購入に奔走しているほか、郵政公社を救うための数々の署名運動が勃発している。(フロントロウ編集部)

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