奴隷貿易が残した傷跡について知る
「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」
毎年8月23日は、「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー(International Day for the Remembrance of the Slave Trade and its Abolition)」。
この国際デーは、16~19世紀にかけてアフリカ大陸から“商品”として世界各国に売られ、奴隷として酷使された黒人の人々の悲劇の歴史を胸に刻み、奴隷貿易の廃止について知識を深めるためユネスコ(国際連合教育科学文化機関/UNESCO)により1998年制定された。
8月23日という日付は、1791年8月22日から23日の夜にかけて、当時フランスの植民地だったサン=ドマング(現在のハイチ)において、大西洋奴隷貿易の廃止のとなった反乱「ハイチ革命」が始まったことにちなんだもの。
ユネスコ加盟国は、毎年、この日に合わせて若者や教育者、芸術家、知識人、人道活動家らを招いて催しを開催。さらに、文化越境プロジェクト「奴隷の道」(The Slave Route)と題したプロジェクトの一環として、奴隷制の史的要因や制度、状況について学び、注目する機会をもうけている。
自宅に居ながら参加できる
「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」の催し
2020年は、3月末にアメリカ・ミネソタ州のミネアポリスで起きた、黒人男性のジョージ・フロイドが白人警官による過剰な制圧により亡くなった事件がきっかけで、アメリカ全土および世界中に根強く残る黒人に対する人種差別に抗議する運動「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命も価値がある)」が活性化。
黒人たちの人権向上を訴えるいくつかの記念日に関しても、例年よりもさらに注目度が増し、さまざまな取り組みが行なわれているが、8月23日の「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」もその1つ。
新型コロナウイルスというパンデミックの影響で、例年のように、大勢の人を集めたイベントは見合わせる関連機関が多いが、自宅にいながら、奴隷貿易の歴史や、それがもたらした数々の悲劇について知識を深め、奴隷貿易廃止のために尽力した人々の功労を知るための新たな試みを導入している施設や団体もある。
2007年の「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」に開館して以来、8月23日に合わせて毎年、啓発イベントを行なっているイギリス・リバプールにある国際奴隷制博物館(International Slavery Museum)は、第21回目を迎える2020年は、オンラインでバーチャルイベントを開催。
Delighted to announce that our annual Slavery Remembrance Day will be going digital this year; and we are making a weekend of it! #SRDAtHome will bring us all together, regardless of where you are in the world. Everyone can get involved.
— International Slavery Museum (@SlaveryMuseum) July 16, 2020
Full programme https://t.co/q2BPgQBDZr pic.twitter.com/18ENIl7VZ2
YouTubeの公式チャンネルを通じて、有識者やアクティビストたちによる講演やパネルディスカッションの模様が配信されるほか、4歳~7歳の子供と一緒に参加できるオンライン工作講座も行なわれている。
アメリカ・メリーランド州にある「ソッタリー・プランテーション(Sotterly Plantation)」では、奴隷貿易とその廃止を記念する国際デーを記念してイベントを開催。
イベントには、マスク着用の厳守やソーシャル・ディスタンスを確保したうえで参加することもできるが、その模様はFacebookで世界に向けてライブ配信(要事前登録・英語のみ)されるほか、8月21日~23日の週末にかけて、奴隷解放運動に関するウェビナーも行なわれる。
また、これは、約5年前に公開されたものだが、日本の国連広報センターは、奴隷貿易の歴史や奴隷として世界各国に連れて来られた人々が今も直面している社会の不平等に関してまとめた『奴隷航路:抵抗する魂』(日本語字幕つき)という下の動画をYouTube一般公開している。
現在も蔓延する、黒人に対する差別や不平等の根源についても学ぶことができるので、こちらもぜひチェックを。(フロントロウ編集部)