ゼンデイヤが史上最年少で最優秀主演女優賞
米現地時間2020年9月20日に開催されたアメリカのテレビ界最高峰のアワード「エミー賞」で俳優兼シンガーのゼンデイヤが、最優秀主演女優賞を受賞した。ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』(以下『ユーフォリア』)で主演を務めたゼンデイヤは、エミー賞のドラマ部門の最優秀女優賞で史上最年少の受賞となる。
ドラマ『ユーフォリア』は、ディズニー・チャンネル出身の俳優・歌手・ダンサーとして活躍するゼンデイヤが、これまでの清純なイメージを覆す難しい役どころに挑戦し、演技派としての実力を開花させた作品。
新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで開催されたエミー賞に自宅のリビングルームから参加したゼンデイヤは、家族に見守られながら受賞の発表を聞き、「信じられない!」と涙を浮かべながら受賞の喜びを表した。
More #Emmys history tonight! At 24, @Zendaya is the youngest person to win for Lead Actress in a Drama Series! pic.twitter.com/AVUzIqyckH
— Television Academy (@TelevisionAcad) September 21, 2020
ゼンデイヤのドラマ部門の最優秀主演女優賞受賞は、黒人の血を引く女性としては、2015年のヴィオラ・デイヴィス(ドラマ『殺人を無罪にする方法』)以来、史上2人目の快挙でもある。
そんな彼女が「巷の若者たちには、望みがあるということを伝えたい。私たちのドラマは、良いお手本とは言えない時もあるけど、私たち若者には望みがある。ストリートで一生懸命働いている仲間たちに言いたい。私にはあなたたちが見えているし、尊敬している。あなたたちに感謝してる」と、さまざまな不安や苦悩を抱える同世代の人たちにメッセージを送ったドラマ『ユーフォリア』とは一体どんな作品?そのあらすじや魅力をご紹介。
ドラマ『ユーフォリア』のあらすじ
『ユーフォリア』は、ソーシャルメディアが浸透した現代社会に生きるティーンの困難や葛藤を描くドラマ。日本では、Amazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX」で配信が行なわれている。ちなみに「ユーフォリア」とは、“幸福感”や“多幸感”という意味。生まれて物心ついた時にはインターネットが普及していたデジタルネイティブ世代の“幸福感”や“多幸感”とはかけ離れた「リアル」を描いている。
ゼンデイヤ演じる主人公のルーは、わずか17歳にして重いドラッグとアルコール中毒患者。薬物のリハビリ施設から戻ったばかりだけれど、更生する気はまるでないうえとても嘘つきで、様々な不安を抱えている。
本作は、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ビッグ・リトル・ライズ』など、数々のハイクオリティなドラマで知られる「HBO」と、映画『ムーンライト』や『ミッドサマー』など映画賞を席巻する作品を世に送り出し続けるスタジオの「A24」がタッグを組んだ作品。
誰もが「見て見ぬ振り」をしている若者の現実を描く
セックス、ドラッグ、依存症、アイデンティティの悩み、リア充やオタクといった自分の立場など、若者を取り巻く様々な問題や悩み、社会との繋がり、親子関係をリアルに描いているところが『ユーフォリア』の最大の魅力。
ドラマ『13の理由』でも同じようにティーンの悩みが描かれていたけれど、『ユーフォリア』ではさらにリアル。ショーに登場する高校生は、精神疾患に苦しみ、性的暴力の犠牲になり、薬物に手を出してしまうけれど、あくまでも美化せず、エンパワメントな内容に持っていくこともなく描写されている。
ゼンデイヤは、「人々が好むと好まざるとにかかわらず、これは本当のこと」と米New York Timesのインタビューで語っている。さらに、『ユーフォリア』で描かれている若者たちの日常について、「あなたの身に起こっていないからって、他の人にも起こっていないとは限らない。(『ユーフォリア』で描かれていることは)毎日、様々な場所で起こっているの」と続けた。
また、ゼンデイヤは本作の初放送を前に自身のインスタグラムに注意喚起を投稿。「今日の初放送の前にみんなに知っていてほしいことがある。『ユーフォリア』は、十分に成長したオーディエンスに向けたものなの。現代社会における依存や不安障害、生きることの大変さをとてもリアルで正直に描写しているから。なにかの引き金になってしまいそうな、もしくは見ていられないような、まるでその現場を目の当たりにしたかのようなシーンが登場する。もしそれをきちんと理解して対処できると思うのなら、ぜひ見て欲しい。みんなにとってベストなことをしてほしい。どんなときでもあなたたちのことを愛しているし、あなたたちからのサポートは感じているからね。愛をこめて。デイヤ」と、若者が向き合う問題を主題にし、忠実に描かれているからこそ、視聴者側の注意と理解が必要だと主演のゼンデイヤ本人が呼びかけた。
“ジェネレーションZ”を代表するキャストが勢揃い
生まれながらにインターネットが整った環境で育ってきたデジタルネイティブの年代のことを「ジェネレーションZ(Z世代)」という。『ユーフォリア』に登場するのは、そんなSNSのムーブメントやトレンドを作っていく世代ともいえるZ世代の俳優たち。
主演のゼンデイヤ演じるルーが友情以上の感情を抱き始めるジュールス役には、トランスジェンダーモデルで、LGBTQ+の活動家であるハンター・シェイファーが起用。セックス動画の流出をきっかけにSNS上の“女王”となり、コンプレックスを自信に変えていくキャット役には、ボディポジティブ活動家として知られるハービー・フェレイラが抜擢されるなど、現実世界でもティーンのムーブメントを巻き起こしている注目の人物が登場。
さらに、厳格な父が望む息子になるため、性的指向への不安を怒りと暴力で封印しようとするアメフト部のネイト役には、Netflix映画『キスから始まるものがたり』で注目されたジェイコブ・エローディが、男性から性的対象と見られることで自信を保っているチアリーダーで、ネイトと別れたりヨリを戻したりを繰り返すマディを映画『ブリグズビー・ベア』のエレクサ・デミーが、将来を期待されたアメフト選手ながら大学では思うようにいかないクリスには、映画『デトロイト』のアルジー・スミスが、その彼女で、過去のセックス動画投稿を悔やんでも悔やみきれないキャシー役には、ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』のシドニー・スウィーニーが演じている。
セレブもドハマりするビジュアルや世界観、音楽
本作は1エピソードあたり約550万人が視聴していると言われている話題作で、すでにシーズン2の放送も決定している。とくに陰鬱でリアルな描写は素晴らしく、映画『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオも大絶賛するほど。映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のロサンゼルスプレミアに参加したレオナルドは、米Varietyのインタビューで最近見ているドラマについて聞かれ、「『ユーフォリア』を見ているよ」と語り、「とても素晴らしい。あの番組は本当に素晴らしいよ」と言った。
また、劇中には90年代のヒップホップやオルタナティブ・ポップなどからビリー・アイリッシュまで新旧の楽曲が起用され、サウンドトラックは映画『ワンダーウーマン』でシーアとコラボでエンディングテーマを提供し話題を呼んだラビリンスが手掛けている。そして本作のプロデューサーには、ラッパーのドレイクが名を連ねており、もちろん彼の楽曲も作品の中で登場する。
さらに、劇中歌にはそんなラビリンスとゼンデイヤがタッグを組んでリリースした「all for us(オール・フォー・アス)」も使用されている。
「本当の自分」を表すメイクアップがSNSで一大ムーブメントに
ドラマ『ユーフォリア』は、2019年のSNSトレンドにもなった。本作に登場するキャラクターがした個性的でドラマチックなメイクが多くのファンの共感をよび、インスタグラムではそのメイクを体験できるフィルターが生まれたほど。
蛍光色のアイシャドウやたっぷりのグリッター、顔中にちりばめられた星空のようなスワロフスキーや金箔など、それぞれのキャラクターによって異なるそのアイメイクは、大きな反響をよび、メイク担当のドニエラ・デイヴィーが大注目された。
監督のサム・レヴィソンはメイクを新しく自由な自己表現方法だと捉えているとドニエラは米Vogueで明かしており、キャラクターの性格によってメイクの雑さやうまさ、方法を変えたりしているそう。
TikTokでも流行したこの『ユーフォリア』のメイクアップ・チャレンジが気になる人は、ぜひ試してみて。
ゼンデイヤが主演女優賞を受賞したドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』は、シーズン1がAmazon Prime Video チャンネル「スターチャンネルEX」で配信中。シーズン2の制作も決定している。(フロントロウ編集部)