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大人気カーアクション映画『ワイルド・スピード』シリーズに登場するハンは、もともと人種も名前も異なった設定のキャラクターだった。そんな彼の出演には、監督であるジャスティン・リンの努力が隠されていた。(フロントロウ編集部)

『ワイスピ』人気キャラクターのハン

 『ワイルド・スピード』は2001年から続く人気カーアクション映画で、日本のファンからは『ワイスピ』という愛称で親しまれている。

 9作目にあたる最新作の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は予告編が公開されるとわずか24時間で5億回の再生回数を突破。公開は2020年5月を予定していたものの、新型コロナウイルス流行の影響により、2021年に延期となった。

 そんな最新作の予告編で最も話題を呼んだのが、2006年に公開されたシリーズ3作目の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で命を落としたと思われていたキャラクター、ハンのカムバック。何事もなかったかのようにファミリーの基地を訪ねてくるハンの姿に、ファンは大歓喜した。

画像: ©️UNIVERSAL PICTURES / KEYTE, GILES

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 ハンを演じるサン・カンは、アメリカ出身の俳優で、ドラマ『フェリシティの青春』や映画『パール・ハーバー』など様々な作品に出演している。ハン役しては、2006年に公開されたシリーズ3作目の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』から『ワイスピ』シリーズに参加(※)。

※『ワイルド・スピード』シリーズは制作された順番と時系列が異なっている。『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で登場したハンは同作で命を落とすが、時系列では『TOKYO DRIFT』はシリーズ6作目の『ワイルド・スピードEURO MISSION』のあとの出来事。よって、シリーズ4作目『ワイルド・スピードMAX』とシリーズ5作目『ワイルド・スピードMEGAMAX』、シリーズ6作目の『ワイルド・スピードEURO MISSION』でハンは健在。

 そんな大人気キャラのハンだけれど、脚本の時点では全く異なる設定の人物だった。

映画とは全く異なっていたハンのキャラ設定

 映画『ワイスピ』でのハンはアジア系アメリカ人で、若いレーサーたちにとっては兄貴のような存在。ところが脚本の段階でハンは、「フェニックス」という名のアフリカ系アメリカ人という設定だったと、サン・カンは米Mandatoryに語った。

画像: 映画とは全く異なっていたハンのキャラ設定

 『TOKYO DRIFT』の制作が始まると、劇中に登場するトゥインキーというキャラクターがバウ・ワウによって演じられることが決定。そのころから監督のジャスティン・リンは「他の人に尊敬されていて、陰気だけれど好感の持てるアジア系アメリカ人のキャラクター」を入れたいと考え始めたそう。

 ところが映画スタジオである米ユニバーサル・ピクチャーズはこのアイデアに関心がなく、リン監督は熱心に説得しなければならなかった。

ハンが関係する一本の映画

 リン監督は『ワイスピ』にアジア系アメリカ人のキャラクターを入れるため、ある一本の映画を用意した。その作品は、日本未公開の映画『ベター・ラック・トゥモロー(Better Luck Tomorrow)』。

 2002年にリン監督によって作られた本作は、アメリカで優等生として何一つ不自由のない生活を送りながらも、アジア系アメリカ人という人種が抱える差別のために、どこか満たされない生活を送っている若者たちの群像劇。実際にオレンジ郡で発生した殺人事件をもとにした、鋭い社会風刺の効いた作品でもある。

 そんな『ベター・ラック・トゥモロー(Better Luck Tomorrow)』でメインキャストを演じていたのが、サン・カンで、その役名はなんと『ワイスピ』のハンと同姓同名のハン・ルー!

 実は、『ワイスピ』のハンは、『ベター・ラック・トゥモロー』のハンをもとに作りあげられたキャラクター。リン監督は、米辛口批評サイトRotten Tomatoesで81%のスコアを取得しているこの映画『ベター・ラック・トゥモロー』を配給会社の重役たちに見せてハンの魅力をアピールした結果、見事ユニバーサル・ピクチャーズの説得に成功し、フェニックスというアフリカ系のキャラクターを、ハンというアジア系のキャラクターに変更できたのだった。

 そんなバックストーリーが隠されていたハンが登場する『ワイスピ』シリーズの新作映画『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は、2021年公開予定。(フロントロウ編集部)

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