足立区議会自民党の白石正輝議員による、「ゲイやレズビアンが法律で守られれば、足立区は滅ぶ」という発言が波紋を広げている。同性愛は選択できるものだという考えが背景にあると思われるこの発言。では、セクシャリティが選べるものならば、異性愛者たちはいつ異性愛者になろうと選ぶのだろうか?(フロントロウ編集部)

当事者や科学者が「自然」と言っても

 足立区議会自民党の白石正輝議員が少子高齢社会への対応について話す中で、「L(レズビアン)だってG(ゲイ)だって法律で守られているという話になれば足立区は滅んでしまう」とした発言。

 人口の10%前後いると言われている同性愛者は、社会で認められようと認められまいとその比率は変わらない。しかし白石議員は、同性愛者を認めると、同性愛者が今よりも増えてしまい、異性愛者が減ることで出生率が下がり、地域が滅んでしまう、という主張をしている。つまりこれは、同性愛者は「なろう」と“選択”してなるものだという誤認が背景にある。

画像: 同性愛者であるルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相は、「同性愛者であることは選択ではありません。しかし同性愛者を受け入れるかどうかは選択です。ホモフォビア(※同性愛者に対するネガティブな感情・行動・思想)は選択です」と国連でスピーチした。

同性愛者であるルクセンブルクのグザヴィエ・ベッテル首相は、「同性愛者であることは選択ではありません。しかし同性愛者を受け入れるかどうかは選択です。ホモフォビア(※同性愛者に対するネガティブな感情・行動・思想)は選択です」と国連でスピーチした。

 当事者である同性愛者たちが生まれつきだと唱えても、ハーバード大学とMITが共同で運営するブロード研究所が「自然」なことであると研究結果から発表しても、自然界において450以上の種に同性愛が確認されても、LGBTQ+の権利が法律で守られた地域で爆発的に同性愛者が増えたというデータが一切なくても、一部の人々のあいだ、“同性愛は選択・ライフチョイスである”という考えがなくなることはない。

 アメリカでは、そんな考えをも持つ人たちに「ある逆質問」をしてみた人たちがいる。

同性愛は選択とする人に「あなたはいつ…」と質問

  “同性愛は生まれつきではない”と考える人たちに対して「ある逆質問」をして話題になったのは、現在はFIJI WaterやPOM Wonderfulといった飲料を扱うThe Wonderful Companyに勤めるトラヴィス・ナッコルズと、現在はフリーランスのコピーライターとして多数の大手メディアで活躍するクリス・ベイカーが2008年に行なった街頭インタビューでのこと。

 このインタビューではまず、「同性愛者になることは選択だと思いますか?」と質問。そしてそれに対して、選択であると答えたか、生まれつきではない可能性を口にした人に、逆にこんな質問をぶつけてみた。

「あなたはいつ異性愛者になることを選んだのですか?」

 セクシャリティが自然なものではなく選択であると言うならば、きっと異性愛者も「自分は異性愛者になろう」と選択したことがあるはず。そんな逆質問を投げかけられた人たちは、それまではハッキリと意見を述べていたのに、一瞬止まって、混乱した様子を見せる。以下が、それぞれの解答。

「えーっと…いい返しだね。僕は選んで異性愛者にはなっていない。つまり生まれつきかな(笑)?」

「私にとっては選択ではなかった。こう生まれたの」

「それは良いとこついてるね。私自身は選択していないと思う。(同性愛者にとっても同じだと思うか?)…わからない。その論点は良いところを捉えているかもしれない」

「わからない。それについて考えたことはない。(同性愛者にとっても同じだと思うか?)わからない。もしかしたらそうかもしれない」

「ハハハ。考えたことないね。私は私なだけ。(同性愛者にとっても同じだと思うか?)かもね。もしかしたらそうなのかもしれない」

 同性愛者に対する“選択”だろうという考えが、逆に自分たちに向けられた時に、考えそのものの矛盾に気づく人が多かったこの街頭インタビュー。トラヴィスがYouTubeに投稿したこのインタビュー動画の説明欄には、2人から、「誰かに何かを教えようとするよりも、正しい質問をする方が重要な時もある」というコメントが添えられている。

ゲイやレズビアンも子供をもうけている

 白石議員はまた、「L(レズビアン)とG(ゲイ)についてだけは、もしこれが足立区に完全に広がってしまったら、足立区民いなくなっちゃうのは100年とか200年の先の話じゃない。私たちの子どもが一人も生まれないということ」とも発言している。

 では、ゲイやレズビアンに子供は生まれないというのは事実なのか? 同性カップルには、養子縁組をしたり、異性愛者の元パートナーとの子供を育てていたりと、様々な愛にあふれた家族のカタチがあるものの、ここでは、同性愛者による出生の部分にフォーカスする。

 1995年に同性婚が合法化されたスウェーデンにおいて、結婚から5年以内に子供を出生した初婚カップルのデータによると、2000年代に入りレズビアンカップルの家庭での出生率が上昇し、とくに、公立病院でレズビアンの人工授精が許された2005年を境にレズビアンカップルの間での出生率が激増。つまり、レズビアンが法律で守られたことで、国が滅びるどころか子供が増えたことになる。一方で、子供をもうける男性同士のカップルは急増していなかったものの、毎年安定して存在していた。ちなみに、同時期の異性愛者のカップルの出生率は減少を続けていた。

画像: 夫との間に3人の子供をもうけているゴールデン・グローブ賞受賞俳優のマット・ボマー(右)をはじめ、代理母出産によって子供を授かっている男性同士のカップルは多数存在する。

夫との間に3人の子供をもうけているゴールデン・グローブ賞受賞俳優のマット・ボマー(右)をはじめ、代理母出産によって子供を授かっている男性同士のカップルは多数存在する。

画像: ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のミランダ役で知られるシンシア・ニクソンは、現在の妻と婚約後に精子提供を受けて子供をもうけた。

ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』のミランダ役で知られるシンシア・ニクソンは、現在の妻と婚約後に精子提供を受けて子供をもうけた。

 さらに海外では著名人のあいだでも親になる同性愛者たちが増えており、養子縁組をしたり、前の結婚からの子供だったり、代理母を使ったり、精子バンクを使ったりと、異性愛者に様々な家族のカタチがあるように、同性愛者の間でも様々なカタチで家族が誕生している。(フロントロウ編集部)

 

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