『世界にひとつのプレイブック』
躁うつ病の主人公パット(ブラッドリー・クーパー)と性依存症のティファニー(ジェニファー・ローレンス)が出会い、最愛の人を失い心に傷を負った2人が再生していく姿を、笑いや涙を交えて描いたヒューマンコメディ。主人公が感情を抑えられずに騒ぎを起こす様子は、周囲の状況に対応することが困難になる精神障がいの様子をうまく描いていると言われている。アカデミー賞では作品、監督、脚色、主演・助演男女と主要部門すべてでノミネート。ジェニファーが主演女優賞を受賞した。
『17歳のカルテ』
本作の主人公は、一般的には“ボーダー”とも言われる境界性パーソナリティ障害の少女。薬物の大量服用による自殺未遂を起こして精神科病院に収容されたスザンナ(ウィノナ・ライダー)は、境界性パーソナリティ障害という自覚が無く、環境に馴染めなかった。けれども、病棟のボス的存在であるリサ(アンジェリーナ・ジョリー)の、堂々とした態度に魅かれていく内に、精神科病院が自分の居場所と感じるようになっていく。監督は映画『LOGAN/ローガン』のジェームズ・マンゴールド。本作に出演したアンジェリーナは、新人ながらその熱演が評価され、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の助演女優賞を受賞した。
『なんだかおかしな物語』
うつ病を抱えた16歳の少年が、自殺願望が強くなってきたことで焦りを抱き、自ら精神科に短期入院するというヒューマンコメディ。主人公は自らストレスと向き合い、それを受け入れ、様々な患者との交流を通して人生の意義を見つけていく。映像作品ではしばしば、理解不足が原因で、心の病を患った人々を誤った描写で表現していることがある。しかし本作ではそのようなことはないため、困っている人々が助けを得て、深刻な状況からの救済としてユーモアを使うシーンも安心して見ることができる。
『アイアンマン3』
マーベル映画『アイアンマン3』では、ロバート・ダウニー・Jr演じるトニー・スタークことアイアンマンが、不安障害に苛まれる。かつての戦いで不眠症やパニック障害を患ったトニーは、悪夢や発作に悩まされ、どこに行くにもアーマーを持ち歩く「アーマー依存症」とも言うべき状態に陥ってしまう。彼は、「NY」という地名を聞くだけでパニック発作になってしまうほど弱っていた。完全無欠に思われるアイアンマンでさえ苦しめられるメンタルヘルスと、そんな彼の再生が描かれていく良作。
『インサイド・ヘッド』
『インサイド・ヘッド』は、ピクサー長編アニメーション20周年を記念して制作された映画。この作品が描くのは、私たちの頭の中にある感情。主人公ライリーの頭の中にある「ヨロコビ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」「カナシミ」という感情たちを擬人化して、日常にひそむメンタルヘルスの問題をポップに描き出している。5人の感情は、頭の中にある司令部に住んでいて、装置を使うことでライリーに様々な感情を起こさせるという表現がストレートながら斬新で面白い。
『スケルトン・ツインズ 幸せな人生のはじめ方』
偶然同じ日に自殺しようとしたことをきっかけに10年ぶりに再会することになった二卵性双生児の姉弟のそれぞれが、ぶつかり合いながらもうまくいかない自分の人生に向き合って、受け入れていくまでを描いている。うつ病を率直に描いた本作は重厚感があるものの、小さな救いを見出していく姿に心温まる。映画『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のクリステン・ウィグとドラマ『バリー』のビル・ヘイダーという有名コメディアンが見せる名演技をぜひ。
2020年は、新型コロナウイルスによる世界的パンデミックのため普段の生活や支援がままならない状態となり、メンタルヘルスを崩しやすい年。メンタルヘルスについての知識や支援情報が知りたい方は、厚生労働省が公開している世界メンタルヘルスデー2020の特設サイトをチェックして。(フロントロウ編集部)