新型コロナウイルスは言い訳にすぎない
俳優であり、これまでに多くの人道活動を行なってきたアンジェリーナ・ジョリーが、新型コロナウイルスの影響で各国で増加しているDV(家庭内暴力)について、米Timeへの寄稿で語った。アンジェリーナは、新型コロナウイルスの影響が深刻化した今年4月にも、DVの加害者と被害者を家の中に閉じ込める状況は、意図せずDVを加速させていると危惧していた。
そして国連が9月に、新型コロナウイルスは「ジェンダー平等が今後数十年にわたりひっくり返される危険がある」という報告をまとめた。これによると、性別による暴力を受ける女性や女の子の数は、ロックダウンによって3ヵ月ごとに通常より1,5000万人増える可能性がある。アンジェリーナはこの状況を危惧しながらも、新型コロナウイルスが発生する以前から問題はあったとして、新型コロナウイルスは言い訳だとした。
「これらの問題は、すべてが新型コロナウイルスのせいだと責めることはできません。ウイルスは社会における不平等を生じさせましたが、それを作り上げたわけではありません。不公平な法やシステム、そして人種や社会の不平等には、ウイルスではなく人間に責任があるのです。新型コロナウイルスは、私達が自分たちで直さなかったすべてのことに対する最新の言い訳にすぎません」
若い世代は忍耐強くある必要はない
ジェンダー平等や女性支援は、そこに明らかな問題が存在するにもかかわらず、反発が強い。もちろん数十年前よりは進歩が見られるけれど、それで満足すべきでなかったと振り返るアンジェリーナは、これからを担う若い世代は忍耐強くいる必要はなく、強く行動すべきだとメッセージを送る。
「国際的な人道支援のうち、ジェンダーを基にした暴力へのプログラムに対して向けられているのは、1%未満です。そういった犯罪を防ぐことは、政府にとって優先度が高くないという明らかなシグナルですね。エボラのような過去のパンデミックの際に、女性は病気よりも、暴力に抵抗する支援が足りていないことで亡くなる可能性のほうが高かったにもかかわらず、弱い立場にある女性のためのニーズを満たす国際的な努力はいまだに資金が足りておらず、政治的反動の対象にすらなっています。
今考えてみると私達は、増加中の、心が痛むほど遅い、そして簡単にひっくり返ってしまう女性の権利の進歩を受け入れるか、祝福してしまった。若い世代は、今度のアメリカ大統領選挙で初めて投票する人達も含めて、忍耐強くあるべきではないし、妥協を受け入れるべきでもない」
現在、DVをめぐる状況が悪くなっており、まずは早急な支援が必要。しかしアンジェリーナは、社会は元に戻るのではなく、さらなる進歩を見せることが重要だとした。
「私達には、パンデミックの前の状態に戻るよりも多くのことが必要です。自分の家で、私達はもっと大きな安全が必要です。家庭内暴力を防ぐこと、十分に増えた暴力やトラウマにさらされた子供達を含むサバイバーを支援するサービス、そして責任をともなうシステムが」
(フロントロウ編集部)