制作者の強い愛で作られた映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は1985年に公開され、PART3まで続いたSF作品。ロバート・ゼメキス監督が手掛けたこの大ヒット作は、社会現象を巻き起こすほどの大ヒットを記録し、現在でも『BTTF』という略称で親しまれている。
先日フロントロウでは、そんな大ヒット作の制作チームの作品愛の強さにまつわる逸話をご紹介した。シリーズの脚本担当、ボブ・ゲイルは、『BTTF』をまるで我が子のように大切にしており、「誇り高き親として、子供を簡単には売り出したくない」と、4作目を作らない理由をを米Colliderに明かしていた。
そんなボブが、米Comic Bookとのインタビューで、今度は映画公開前の制作秘話についてコメントした。
『BTTF』、脚本は40回もボツ!
アメリカでは2020年10月20日に、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開から35周年を祝って新たにブルーレイが発売された。その特典映像の中でボブは『BTTF』の脚本が40回もボツになってしまったことを明かしており、インタビューではその詳細を明かした。
ボブは「1981年4月に作られた第二稿は40回以上もボツになったものだ。いろいろなレベルで違っていたよ。でもマーティがタイムスリップして、両親の再会を妨害して、両親を元に戻さなければならないことや、ジョニー・B・グッドのことなど、物語の核となる部分は全部入っていた。でも、ドクは冷蔵庫の中にタイムマシンを作っていた。まだデロリアンではなかったんだ」と言った。
ところが問題はそれ以前の段階で、せっかくこだわりを持って作っているにもかかわらず、映画会社には「タイムトラベル映画は儲からない」と言われていたそう。タイムトラベルを扱った映画でヒットしたのは、1960年公開の『タイム・マシン 80万年後の世界へ』くらいで、1980年前後はなかなかヒット作がなかったため、ボブたちもこの意見に反論できずにいたという。
映画会社が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に手を出さなかった理由はもう一つある。それは単純に、当時映画が求めていたものと『BTTF』とにはギャップがあったから。彼らが求めていたものは、『BTTF』のように「素敵でスイートな映画」ではなく、映画『ポーキーズ』や『パラダイス・アーミー』などといったおバカでラフなコメディ映画。多くのプロデューサーや映画スタジオからは何度も「この映画はディズニー向けじゃないか?」や「ディズニーにはピッタリかも」と言われていた。
ところが当の『BTTF』チームはディズニーで制作することに対しあまり前向きではなかった。けれども最終的にディズニーに脚本を送り、見てもらったそう。しかしそれがまさかの展開に。
ディズニーは『BTTF』の脚本に激怒
ディズニーの重役と打ち合わせをするためオフィスに行ったボブは、なんとお叱りを受けるハメに。「お前らはおかしいのか?」「ディズニーがこんな映画を作ると思うか?」と、罵声を浴びせられ、ボブは「何? 何が悪いんだ?」と混乱しながら返したという。
すると重役は「これは近親相姦の映画じゃないか。子供と母親が車に乗ってるんだぞ? 近親相姦だ! 我々はディズニーだ。そんなことはできない」と言ってきた。他の映画会社の人々に「素敵でスイートな映画」と評されていただけにボブはかなり面をくらってしまったそう。
最終的に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』はユニバーサルスタジオで制作された。このように、さまざまな困難に直面しながらも、こだわりを持って作り出された『BTTF』は、長年にわたって愛される素晴らしい作品となった。(フロントロウ編集部)