アジア系アメリカ人の作品は外国語映画?
ドラマ『ウォーキング・デッド』のグレン役で有名なスティーヴン・ユァンが主演した新作映画『Minari』が高い評価を得ている。しかし一方で、現在、作品を巡ってある議論が勃発中。
というのも2021年2月28日に開催されるゴールデン・グローブ賞において、『Minari』が属するのは「外国語映画賞」とされたから。
本作は、アーカンソー州に移り住んだ韓国系アメリカ人一家を描くもので、韓国語によるセリフが多い。ゴールデン・グローブ賞は、セリフの50%以上が英語以外の作品は外国語映画賞にカテゴリーされるとしており、そのことが理由で『Minari』は外国語映画賞のカテゴリーとされた。一方で、出演者のスティーヴン・ユァンやハン・イェリは主演男優賞や主演女優賞へのノミネート資格があるという。
映画『フェアウェル』も同じ問題に直面した
同様の問題は、アメリカと中国を舞台とし、アジア系アメリカ人のオークワフィナが主演して高い評価を受けた2019年の映画『フェアウェル』でも起こっており、オークワフィナはゴールデン・グローブ賞で主演女優賞を受賞した一方で、中国系アメリカ人のルル・ワン監督は外国語映画賞へノミネートされることとなった。
ワン監督は『Minari』にも同じ問題が起こったことで、ルールの改正を求めるコメントをしている。
「今年、『Minari』以上にアメリカな映画を見ませんでした。これは、アメリカンドリームを掴もうとする“アメリカ”に住む移民家族の物語です。アメリカ人は英語だけを話すという時代遅れなルールを変える必要がある」
『フェアウェル』の予告編。
また、中国系カナダ人であり、マーベルMCUでヒーローのシャンチーを演じるシム・リウは、『Minari』はアメリカの制作会社であるA24が手掛けたもので、そして、実際にアメリカに多く存在する移民家族を映すことはとてもアメリカらしいと反応した。
「言っておくけど、『Minari』はアメリカ人監督によって撮られたアメリカを舞台とした作品で、アメリカ人俳優が主役を務め、アメリカの制作会社によってプロデュースされた。…、そして何もネタバレしないけど、あれは移民家族が新しく人生を築こうとするすごく美しい物語。それ以上にアメリカなものってある?」
ドラマ『LOST』などに出演し、現在はアジア系アメリカ人が主役の泥棒映画を制作中の韓国系アメリカ人俳優ダニエル・デイ・キムは、「自分の国に帰れと言われてその国がアメリカだったときの映画版」と痛烈な皮肉を短くツイートした。
また、俳優だけでなく政治家からも声があがっており、台湾系アメリカ人のテッド・リュウ下院議員は、こうコメントしている。
「拝啓ゴールデン・グローブ賞。あなたたちの名前を、“Golden Only For English Speaking People(ゴールデン英語を話す人々だけのもの)に変えていただけませんか?そのほうが正確でしょう。『Minari』はアーカンソー州に住む韓国系アメリカ人一家についてのアメリカ映画です。なぜ最優秀作品賞は英語でなければいけないのでしょうか?グローブ(世界)という言葉があなたの名前にあるのに。分かります?」
ルールというものは絶対的なものではなく、人と時代が作るもの。向上のためにはつねに変化がつきものであり、ゴールデン・グローブ賞にも今一度ルールの見直しが求められている。
ゴールデン・グローブ賞のノミネーションリストは、2021年2月3日に発表される。(フロントロウ編集部)