マクドナルド、ゴミを使ったアイテム
アルゼンチンを本拠地とするArcos Dorados(アルコス・ドラドス・ホールディングス)は、世界最大のマクドナルドのフランチャイジーであり、ラテンアメリカやカリブ海地域においてマクドナルドを展開している。
そんな巨大企業が、今後はマクドナルドの“食品トレー”を、廃棄物をリサイクルして作っていくと発表した。
使われる素材はUBQと呼ばれるもので、UBQを作るイスラエルの企業UBQ Materialsの会長は、その素材にどのようなものが使われるかを米Fast Companyに話す。
「UBQは、ゴミ廃棄場に送られる雑多な家庭内ごみからスタートします。バナナの皮や鶏肉の骨、その他の食べ残し、段ボール、紙、おむつ、様々なプラスチックなどですね。ガラスと金属はダメで、それらは私たちが取り除いてからリサイクルに送ります」
食品ロスや食品廃棄物って環境に悪いの?
これまでの食品トレーは、プラスチック製。プラスチックは自然に分解されず、海や街に蓄積していることや、原料が化石燃料にあたる石油であることが大きな問題となっている。Arcos Doradosは2018年からプラスチックの削減を進めており、食品トレーをUBQ素材のものにするのも、その一環。
そして、UBQが食品廃棄物(※)を原料とできるところも注目の点。というもの、食品廃棄物の焼却や埋め立てによって排出される温室効果ガスは、環境問題の1つだから。
ちなみに、埋め立てのほうが環境に悪く、気候変動に関する政府間パネルによると、食品の埋め立てで発生するメタンガスは、二酸化炭素の約25倍の温室効果があるとされている。国として温室効果ガスを最も排出しているのは中国、そして次にアメリカが並ぶけれど、食品廃棄物による温室効果ガスを排出量をそのランキングに入れた場合、アメリカに次ぐ3番目の多さになる。
※食品廃棄物は、リンゴの芯など、食べられないものも含む廃棄物。食品ロスは、食べられるのに捨てられたもの。
ちなみに、食品ロスについては別の問題も。食品が個人の手に渡るまでには、畜産、加工処理、配達など、様々なプロセスがある。そこで温室効果ガスが排出されているため、もし食品が最終的に捨てられるのであれば、最初から作り出さなければ、その分の温室効果ガスは排出されない。
東京都環境局によると、人間は食品ロスに関してだけで、なんと36億トンもの温室効果ガスを排出している。
ブラジルのマクドナルドでいち早く導入
もちろん、まずは生産される食品の量自体を減らさなくてはいけないとされていて、例えば国連に参加した専門家たちは、肉の消費を減らそうと呼びかけている。とはいえ、出てしまった食品廃棄物をリサイクルすることも、対策の1つ。
UBQ MaterialsのCEOは、世界ではまだまだリサイクル技術が進んでいないとし、その原因を説明した。
「世界の中でリサイクルインフラが非常に整っている場所であっても、80%のゴミがリサイクルできないものであると見られています。その原因は、適切でないゴミの仕分けや、食品による汚れ、湿気、様々な素材を重ねて作られた製品であることなどです」
そんななかでも高いリサイクルテクノロジー技術を誇るUBQ Materialsによって、ブラジルのマクドナルドでは、すでに7,000以上の食品トレーがUBQ素材によって作られたものだという。また、現在もトレーの生産は続けられており、最終的には国中でUBQ素材のトレーを展開したいと思っているという。さらに、このトレーが壊れた時には、通常のリサイクルに出せるそう。
UBQは、家の床や家具にも使えるということで、UBQ Materialsの会長は、最後にこのようなユニークで興味深いメッセージを残した。
「想像してみてください。マクドナルドのレストラン全体が、もしくはビル全体がUBQによって作られたら?」
マクドナルドのトレーとして使われ始めているUBQが、積み重ねられ増えていくばかりとなっている地球のゴミ問題の救世主となるかもしれない。(フロントロウ編集部)