定番コスメの誕生秘話
身だしなみのためだけでなく、自分を表現するためのツールとしても取り入れられるなど、今や多くの人が自由に楽しんでいるメイク。
メイクは、古代から儀式のために用いられたり、限られた階級の特権として取り入れられたりしてきたけれど、かつてのコスメは現在のものとは全く違う形状や材料でつくられていたそう。
そんな長い歴史があるコスメが今の形状になり多くのユーザーに親しまれるようになるまでには、どんなストーリーがあったのか。意外と知らない定番コスメの誕生秘話をご紹介。
リップ
唇を彩るリップは、日本でも江戸時代から親しまれており、欧米でも女性の権利が徐々に確立されるにつれて自信とエンパワメントの象徴へとなっていったものの、その形状はジャータイプなどがメジャーだった。
そんななか、リップスティックと呼ばれるスティック型のリップが世界ではじめて誕生したのは1912年。世界初のスティック型のリップは、1828年に創業した世界屈指の老舗化粧品メーカーであるゲランが開発したという。ただしこのときに生まれたリップは、一度繰り出したらケースに戻すことができなかったのだとか。
そしてその3年後に誕生したのが、必要な分を自由に繰り出せる今のスティック型リップの前身となった形状のリップ。この誕生を機に大量生産されるようになり、広まっていくことに。
マスカラ
まつげを長く濃く見せるマスカラの前身となったのは、今のような液体状のものではなく、ブラシでこすって使う固形のタイプ。ワセリンとオイルでつくられていたという固形マスカラは、1913年頃に現在のメイベリンニューヨークにあたる企業が初めて発売したという。
それから長い年月を経て1958年になると、細長い形状のボトルでフタがブラシになった今と同じ形状のマスカラをレブロンが開発。多くのブランドからも同様のマスカラが登場し、ツイッギーらまつげのメイクが印象的なミューズが活躍した60年代には、一躍大人気のアイテムに。徐々にカラーマスカラやウォータープルーフマスカラも出回っていった。
チーク
頬を赤らめて血色をアップさせるチークが誕生する前には、赤やピンクなどのジャータイプのリップを頬に丸く塗るのが一般的だったという。
1920年代後半になると、今のタイプの起源となるパウダーチークが誕生。ただしこの頃のチークは、かなり鮮やかに色がつく派手な印象で、いまのように肌になじんだ自然な色づきではなかったという。そして1960年代になるとレブロンが、肌の色が透けて見えるように仕上がる自然なチークを発表。本格的なブームとなっていった。
ファンデーション
メイクの基礎であるファンデーションもほかのアイテムと同じく古くから存在していたけれど、それぞれの肌色にマッチするようなものではなく、極端に白いものが多く流通していたそう。
1930年代に入ると、カラーフィルムが導入されたことがきっかけで世界初のパウダーファンデーションが誕生して、発売がスタート。多くのハリウッド映画のメイクに携わった伝説のメイクアップアーティストであるマックス・ファクターが開発した固形ファンデ「パンケーキ」が、世界初のパウダーファンデだという。ちなみに、メイクアップという言葉を生み出したのもマックス・ファクターだったという。
じつはリキッドファンデーションもパウダータイプと同時期に開発されていたのだけれど、肌に密着しにくくヨレやすかったことからすぐには浸透せず、先に人気を集めたのはパウダーファンデ。
その後、多くのブランドがリキッドファンデの開発で試行錯誤を繰り返し、少しずつ人気のアイテムに。1952年にはフランス発のコスメブランドであるコティから、長時間崩れにくいリキッドファンデが、当時としては多い6色展開で発売。多くのブランドも後に続き、リキッドファンデが地位を確立していったという。
定番のコスメが誕生した知られざる歴史。これまでなにげなく使っていた定番コスメも、こんな歴史を思い浮かべて使うと、ちょっと違った楽しさを味わえるかも。(フロントロウ編集部)