『The World to Come』
ノルウェー出身の女性監督モナ・ファストヴォルドの荒々しい時代劇ロマンス『The World to Come』。ジム・シェパードの2017年の同名短編小説を映画化したもので、ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映された。
18世紀のニューヨーク州北部を舞台に、恋に落ちた農家の妻2人の姿を綿密に描く。キャストには、キャサリン・ウォーターストン、ヴァネッサ・カービー、ケイシー・アフレック、クリストファー・アボットなどが参加。
『We're All Going to the World's Fair』
ノンバイナリーの映画制作者、ジェーン・シェーンブルン監督による長編映画デビュー作。10代の少女ケイシーがオンライン文化を探求する物語で、アイデンティティと孤立をテーマにしている。
映画の中で、ケイシーは謎のオンライン・ロールプレイング・ホラーゲーム『ワールズ・フェア・チャレンジ』に挑戦することを決意する。奇妙なインターネットのゲームとして始まるものの、すぐに夢と現実が入り混じった世界へと変わり、何もかもが思い通りにならなくなっていく。
『Together Together』
孤独な中年男性と、その代理母になることになった26歳の主人公が、思いがけない友情を築いていく物語。「2人が恋に落ちる」という古典的なロマコメ展開を覆す、プラトニックな深い友情を描いていることで話題。
コメディのアイコン的存在であるエド・ヘルムスと鋭い口調の新人パティ・ハリソンがタッグを組み、映画『Stockholm, Pennsylvania』のニコール・ベックウィズが監督を務めた。
『Passing』
俳優のレベッカ・ホール監督デビュー作となる『Passing』。黒人差別が色濃い1920年代を舞台にした本作は、テッサ・トンプソン演じるアイリーンとルース・ネッガ演じるクレアが10年ぶりの再会を果たすところから始まる。同じ黒人として高校時代を過ごしていたにもかかわらず、クレアは髪を金髪に染め、肌を白くして、人種差別主義的な白人男性と結婚していた。衝撃の再会を果たした2人は、互いの生活に入れ込んでいく。
『The Most Beautiful Boy in the World』
ルキノ・ヴィスコンティの名作映画『ヴェニスに死す』に出演し、現在でも耽美な美少年のアイコン的存在となっているスウェーデン出身の俳優、ビョルン・アンドレセン。『The Most Beautiful Boy in the World』は、そんな彼の人生を追ったドキュメンタリー映画。60代になったビョルンは、自分が受けた無責任な扱いや「美の呪い」が、彼のアイデンティティの形成をどのように歪めたのかを勇敢に語る。
『Ma Belle, My Beauty』
ヨーロッパの野原を駆け抜ける熱い夏の冒険のような陽気な雰囲気を保ちながら、性の流動性と三角関係の重厚さと複雑さのすべてを秘めたポリアモリーの世界へと、ほろ酔い気分で飛び込んでいくロードムービーである『Ma Belle, My Beauty』。監督は、ベトナムとフランスとイギリスにルーツを持つマリオン・ヒル。マリオンはこれまで、クィアな短編映画やミューズックビデオを手掛けてきた監督で、今回長編映画デビューとなる。
『Knocking』
フリーダ・ケンプ監督と脚本家エマ・ブロストロームによるスウェーデン映画である『Knocking』。主人公のモリーは悲劇的な事故に遭い、新しいアパートに引っ越してきた女性。しかし、彼女の新しい家では、天井からノックの音が聞こえるようになったため、彼女は休息やリラクゼーションは得られない。アパートにいる他の誰もが何も聞こえないと言って彼女を見捨てる中、モリーはその音がただのノックから女性の叫び声に変わっていくのを耳にする。
『Flee』
真の未来を手に入れるためには、自分の過去と向き合う必要があるという男の実話を描いたアニメーション・ドキュメンタリー。監督の知り合いで少年時代にアフガニスタンからデンマークにやってきたアミンの姿を描いている。
彼は学者として成功し、長年のボーイフレンドと婚約したが、20年間隠し続けてきた、アフガン難民であるという秘密が、自分の築き上げてきたものを台無しにしてしまうのではないかと心配する…。
『Ailey』
映画『ムーンライト』『ビール・ストリートの恋人たち』などを手掛けた監督バリー・ジェンキンスが、アメリカのモダンダンスを変えた伝説的な振付師、アルビン・エイリーを描いた『Ailey』。
自身のプライベートをあまり公にしてこなかったアルビンは、持病である躁うつ病やアルコール依存、ドラッグ依存、人間関係などに苦しんだ人生を送り、58歳でエイズによりこの世を去った。そんな人生を描き出した一作。
『Unliveable』
3日に1人のトランスジェンダーが殺害されるブラジルで、行方不明になったトランスジェンダーの娘を探す母親の様子を描く。時間切れになってしまった彼女は、未来への一つの希望を見つける。
監督は、ブラジル出身のマテウス・ファリスとエノック・カルバリョ。20分という短編映像の中に収められた衝撃的なストーリーに注目が高まっている。
『This Is the Way We Rise』
ハワイ出身でクィアのスラム詩人ジャマイカ・ヘオリメライカラニ・オソリオが、ハワイのマウナ・ケア山頂の聖地を守るという使命のもと、彼女の芸術を再活性化させていく過程を追った12分の短編ドキュメンタリー。スラム詩人とはポエトリー・リーディングを競う競技を行なっている詩人のこと。
『My Name Is Pauli Murray』
弁護士、黒人活動家、フェミニスト、詩人、聖職者という肩書きのどれもがぴったりといえるトランスジェンダーのパウリ・マレーの人生を描いた長編ドキュメンタリー映画の『My Name Is Pauli Murray』。
監督を務めたのは映画『RBG 最強の85才』のベッツィ・ウェスト。マレーの文章、写真、音声記録に加え、新たに発見された映像やインタビューを織り交ぜ、粘り強い精神を持つ先駆者の物語を語る。
(フロントロウ編集部)