元WWEレスラーがトランスジェンダーであることを公表
2009年から2012年までアメリカで最も有名なプロレス団体WWEの一員として、「タイラー・レックス」というリングネームで活躍したギャビー・タフト(旧名ガブリエル・タフト)。
FCWフロリダヘビー級王座に輝いたこともあるスター選手だったギャビーは、米現地時間2月4日に出演した米情報番組『Extra』で、自身のジェンダーは、生まれたときに割り当てられた「男性」ではなく、「女性」であると初告白し、女性らしく変貌を遂げた姿をお披露目して世間を驚かせた。
その直後に更新したインスタグラムの投稿では、「これが私。恥じることなく、ありのままの私。私は、ずっと、自分のこの側面について、世間にどう思われるか不安で、怖くて…家族や友だち、フォロワーに何を言われるか、どんな反応が返ってくるかが怖くて、ずっと隠してきた。でも、もうこれ以上、恐れない。今なら自信をもって言える。私は自分が自分であることが愛おしい」と綴り、これまで使用していた「ガブリエル」ではなく、「ギャビー」と名乗ってこれからの人生を生きていくことを明かした。
隠し続けた「本当の自分」
現役引退後は、ボディビルダーやフィットネスインストラクター、バイクレーサーとしても活躍してきたギャビー。10歳の頃には、両親の留守中にこっそり母親の洋服を着て、その姿こそが「しっくりくる」と感じていたという彼女は、筋肉粒々のたくましい男性たちが切磋琢磨するプロレス界に身を置きながらも、ずっと心の中に葛藤を抱え、自身の本性を押し殺そうと必死だったという。
カミングアウトに至るまでの8カ月間は、「人生でもっともダークな時間だった」と語り、「トランスジェンダーとして世間と向き合うということの、精神的な動揺に何度も負けそうになった」と悩みに悩んだことも明かしたギャビー。
それでも、大きな不安や恐怖を乗り越えて、公表の日を迎えられたことについて「今日という日は、私の人生において一番ワクワクする日かも。結婚式と子供が生まれた日の次にね」と、約19年前に結婚した妻プリシラとのウェディングや、プリシラとの間に2011年に誕生した娘のミアが生まれた日と同じくらい大切な意味を持つ日だと続けた。
約20年来の妻との関係
WWEデビューする以前から交際していた妻プリシラと2002年に結婚したギャビー。23年来の付き合いである2人は、お互いを“ソウルメイト”と呼び合う、おしどり夫婦として世間に認知されてきた。
ギャビーは、自身が不安に打ち勝ち、無事、公表の日を迎えられたのは、プリシラがずっと傍らでサポートし続けてくれたおかげだとExtraに語っている。
プリシラにいつ打ち明けたのかは明言していないものの、ギャビーがトランスジェンダーであることを告白して以来、2人の間に肉体関係はなく、自分たちの夫婦関係において「まったく新しい側面を発見した」という。
結婚するまでお互いに性経験が浅く、初めてのキスをしたのは、結婚式の当日だったというギャビーとプリシラ。プリシラにとっては、ギャビーが初めてのセックスの相手だった。
プリシラは、ギャビーが女性だと知ってからも、パートナーとして関係を続けていくと話しており、「ほかの人と付き合ったりしようとは考えていません」と話している。
変わらぬ愛を感じる妻の言葉
そんなプリシラが、ギャビーのカミングアウト後に投稿した1本の動画が話題に。2人のこれまでを振り返る映像には、ギャビーとの深い絆を感じさせる、こんなコメントも添えられていた。
「魂は中性的なもの。そして、愛は永遠なるもの。23年間、愛してきた。そして、これからも一生続いていく」
あるフォロワーからは、「この動画を見るのはキツい。あなたがどれだけ辛い思いをしたか。ギャビーを支えていこうと決断できたのは素晴らしいけど、それに伴う痛みは私には想像もできない。あなたは凄い人だね」というコメントが。これに対し、プリシラは、自分を心配してくれたことに丁寧にお礼を言ったうえで、「いくつもの段階を経て、(現実を)受け入れられるようになった」と、心に折り合いをつけるのは、決して簡単なことではなかったとも打ち明けた。
娘の「ひと言」も背中を押す
ギャビーが、これまでトランスジェンダーであることを公表するのを躊躇してきた理由の1つには、もしも世間に嘲笑され、9歳になる娘のミアが傷ついてしまうようなことがあったらと不安に思ったということもある。
しかし、思い切ってミアに相談したところ、ミアからは、力いっぱいのハグと「パパ、私は絶対にあなたのことをからかったりしないからね」という温かい言葉が返ってきた。
ギャビーとプリシラは、現在もミアとギャビーのジェンダー移行について会話を続けているという。
「あなたの姿を見て、『彼女にできるなら、自分にもできるかも』と考える人が増えるかもしれませんね」とExtraのレポーターに話題を振られたギャビーは、「その通り! 」と、それが自身がインタビューに応じた狙いだとコメント。
「私は、自分の物語を100%透明性を持ってお伝えするつもり。トンネルの向こうには光があり、それが希望の光だと知っていたら、人は生きていけるもの。『私/僕にだってできる』と思ってもらえるかもしれない」と、以前の自分と同じような苦悩を抱える人たちが、より明るい方向へと歩き出せるよう背中を押すことができたらと語った。(フロントロウ編集部)