※注意:この記事には、暴力/虐待/DV/性暴力に関する描写が含まれます。
『ゲーム・オブ・スローンズ』俳優、マリリン・マンソンによる虐待を告発
ドラマ『ウエストワールド』の俳優エヴァン・レイチェル・ウッドの告発を皮切りに、精神的・肉体的虐待、性的暴行、セクハラ等の行為の対象となったとされる10名以上の女性たちから被害を告発されているミュージシャンのマリリン・マンソン。
社会現象的ヒットを記録したドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に娼婦のロス役で出演し、DCEUドラマ『スーパーガール』などへの出演でも知られる俳優のエスメ・ビアンコが、米The Cutのインタビューを通じて、自身もマリリンから精神的・身体的虐待を受けた被害者の1人であると、マリリンとの馴れ初めやマリリンから受けたという虐待行為の数々を告白した。
イギリス・ロンドン出身で、10代の頃からマリリンの熱狂的なファンだったというエスメがマリリンと知り合ったのは、バーレスクダンサーのディタ・フォン・ティースの紹介がきっかけ。ディタはマリリンが2003年から交際し、2005年から約12カ月間結婚生活を送った女性。
友人だったディタの紹介で、2005年からマリリンと交流するようになったエスメは、2009年、マリリンの7作目のスタジオアルバム『ザ・ハイ・エンド・オブ・ロウ』の収録曲「アイ・ウォント・トゥ・キル・ユー・ライク・ゼイ・ドゥ・イン・ザ・ムーヴィーズ(I Want to Kill You Like They Do in the Movies)」のミュージックビデオの撮影と称してマリリンが暮らすロサンゼルス市内の自宅に呼び寄せられ、それを機にマリリンと男女の関係になったという。
しかし、ミュージックビデオ用のコンテンツの撮影が始まると、マリリンはエスメの同意無しに、ランジェリー姿の彼女をプレイヤーニーラー(祈りを捧げるためにひざまずくため膝つき台)に縛りつけ、何度もムチで打つなどの暴行をくわえ、性行為中にも暴力行為をはたらいたとエスメは主張。結局、マリリンが撮影した映像をミュージックビデオとして公開することはなかった。
斧を持って追いかけられ、ナイフで切りつけられたことも
ハリウッドで成功することを夢見ていたエスメは、マリリンからアメリカに滞在するためのビザを世話してもらっていた。当時は、着るものから寝る時間、食事の時間まですべてをマリリンにコントロールされ、食事の代わりにコカインを与えられたとも話している。
ほかの被害告発者が主張しているのと同様、マリリンに洗脳され、脅され、服従させられたというエスメ。彼女にはマリリンとの交際を始めた頃、夫がいたが、2011年に夫の元をもとを去り、マリリンと同棲を始めると、マリリンの虐待はさらにエスカレートしていったという。
あるときには、激昂したマリリンから斧を持って追いかけ回されたこともあり、この模様は、虐待被害の告発者の1人であり、当時マリリンのアシスタントを務めていたアシュレイ・ウォルターも目撃していたとThe Cutに証言している。
「自分は囚われの身だと感じていました。彼の悦びのために右往左往していたんです。相談したこともありましたが、彼らはみんな完全に彼らにコントロールされていました。クローゼットに隠れて家族に電話をかけたこともあります」。
そう振り返ったエスメ。マリリンにナイフで腹部に何度も切り傷をつけられたこともあるといい、「私はただそこに横たわっていただけで、抵抗しようとはしませんでした。あれは、私が希望や安全の感覚を失った最後の瞬間だったと思います」と、マリリンの支配に対する恐怖で精神が錯乱した状態にあり、マリリンは悪くないと自分に言い訳をし、されるがままになっていたという。
『ゲーム・オブ・スローンズ』の「濡れ場」を何度も…
エスメは、2011年に米HBOで放送された『ゲーム・オブ・スローンズ』の第1話から娼婦のロス役で計14話に出演。
出演シーンには裸を晒したセックスシーンも含まれたが、マリリンは自宅に客人が来ると、わざとエスメの濡れ場をプロジェクターで繰り返し流して、「これは僕のガールフレンドだ。彼女は娼婦。見てみろよ、乳が丸見えだ」と愉快そうにしていたという。
あるパーティーではスカートをめくられ、みんなの前ですでにアザだらけだった尻を叩かれたといい、マリリンのアシスタントだったアシュレイいわく、その模様はビデオに記録されているという。
DV事件の時効を延ばす「フェニックス・アクト」を支持
自由を奪われ、虐待に耐えられなくなったエスメは、こっそりと転居先を探し、ある日、マリリンの就寝中に彼のもとを去った。その1カ月後にメールで別れを告げたというが、ビザの問題もあり、マリリンが何らかの罰を与えてくるのではないかと不安でたまらなかったという。
10年が経った現在でも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされているというエスメ。じつは、2019年には、虐待者がマリリンであるとは明かさずに、カリフォルニア州議会公安委員会の集会で被害を告発したことがある。
これは、当時、同じく、まだ虐待者がマリリンだとは明かしていなかった第1告発者のエヴァンも参加した、「フェニックス・アクト(Phoenix Act)」と呼ばれる、家庭内暴力(DV)被害者たちの権利を拡大し、時効を延長するための法案への支持を表明するため。
エスメは、集会で自身が受けた虐待行為を明かすとともに、「7年が経ち、ようやく法的なアドバイスを得ようと試みましたが、私よりも先に(助けを必要としている)何千人もの虐待サバイバーたちが存在していると告げられ、さらに、被害を訴えても、『もう遅い』『何もできる事はない』と言われました。そのため、私は、自分を虐待した人物が、今もまだ毎日ルーレットを回し、ほかの女性たちに取り返しのつかないダメージを与えていることを知りながら、日々を生きています」と訴えた。
エヴァンやエスメの訴えの甲斐あって、カリフォルニア州議会は2020年にフェニックス・アクトを可決。エヴァンは、この時一緒に尽力してくれたスーザン・ルビオ上院議員とともに、先日、マリリンに対する虐待疑惑や人身売買に関する捜査の開始をFBIに要求しており、これにはフロリダ州議会のアンナ・エスカマニ下院議員や、マサチューセッツ州議会のナタリー・ヒギンズ下院議員も賛同している。
マリリンは、自身にかけられた虐待や性的暴行等の被害告発のすべてを否定している。
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