『マンダロリアン』解雇は「SNSで知った」と主張
SNSへの不適切とされる投稿が原因で『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフドラマ『マンダロリアン』から、事実上、解雇された俳優ジーナ・カラーノが、自身がシリーズから離脱することを知ったのは、世間と同じくSNSで目にしたニュースだったとオピニオンライターのバリ・ウェイスがパーソナルメディアのSubstack(サブスタック)で公開した記事に寄せた声明で言及した。
ディズニープラス(Disney+)で現在シーズン2までが配信されている『マンダロリアン』で、メインキャラクターの1人であるキャラ・デューンを演じたジーナは、これまで何度も、SNS上で不適切とされる発言や投稿を行なって物議を醸してきた。
彼女の行動を問題視する『スター・ウォーズ』ファンたちの間で、シリーズ解雇を求める声が高まるなか、米現地時間の2月10日、『マンダロリアン』を制作するルーカス・フィルムが、「ジーナ・カラーノは現在、ルーカスフィルムと雇用関係になく、将来的にも彼女が雇用される予定はありません」と声明を通じて発表。
今後ジーナを起用しない理由について、彼女がその前日に行なった“不適切なSNS投稿”に原因があると、「彼女のSNS投稿は、文化的・宗教的アイデンティティに基づき人々を中傷するものであり、忌まわしく、許容できるものではありません」と説明した。
ルーカス・フィルムが問題視した“不適切なSNS投稿”とは、現在のアメリカの政治情勢をユダヤ人だというだけで600万人以上もの人が虐殺された負の歴史であるホロコーストと比較した別のユーザーによる投稿をインスタグラムストーリーでシェアしたもの。
このほかにも、ドナルド・トランプ前大統領率いる共和党を支持してきたジーナは、2020年11月の大統領選挙後には、ジョー・バイデン大統領が勝利した裏には不正があったと根拠なく主張する投稿を投下。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるためのマスク着用を揶揄するような投稿をして、世間から反感を買っており、ルーカス・フィルムとディズニーは、とくにジーナが11月に行なったある2つのツイートを問題視。
ジーナ演じるキャラを主役にしたスピンオフの計画を白紙に戻し、以来、「彼女を解雇する理由を探っていた」ところ、2月に入り行なったホロコーストに関する投稿が「最後の一撃となった」と関係者がTheHollywood Reporterに証言している。
LGBTQ+とアライを嘲笑したとする行動に批判
ジーナは、今回の声明の中で、自身のシリーズ離脱のニュースが世間を駆け巡る前には、スタジオ側から自身に対して、何の警告も、通達も無かったと示唆。
『マンダロリアン』シーズン2の配信が開始する前、LGBTQ+コミュニティやアライ(支持者)から大きな批判を浴びたツイッター上でのある行動をめぐり、「ルーカス・フィルムから謝罪するよう求められたが、用意された文言を一言一句使うよう要求され、自分の言葉で伝えたいと、それを拒否すると、シーズン2のプレスツアーから外され、以来、ルーカス・フィルムからSNS投稿に関して連絡が来たことは無い」と主張した。
一部の人々を激怒させたジーナの行動とは、昨今、海外で増えているSNSのプロフィール欄にプロナウン(代名詞)を記載する人々を揶揄したと言われるもの。
セレブや若い世代を中心に、自身の性自認・性表現が女性の人は「she/her」、男性の人は「he/him」、女性・男性という枠組みに当てはまらないノンバイナリーの人は「they/them」と明示することで、LGBTQ+の人々へのサポートを示し、代名詞は他人が勝手に推測するものではなく、個人によって違うのだという考えがノーマライズ(標準化)されるよう促す動きが活性化している。
ところが、ジーナはこれをからかうかのように、自身のツイッターのプロフィール欄に「boop/bop/beep」と、まるで電子ブザーの音かのような文言を記載。
これが、ジェンダーに関する偏見を取り除こうとしている人々を「馬鹿にしているようだ」と非難された。
ジーナは、その後、ツイッターを通じて、『マンダロリアン』に主演するペドロ・パスカルと話し、「彼から、なぜ人々がプロフィール欄に代名詞を記載しているのか教えてもらって理解した」と、代名詞についてよく知らなかったと説明。「自分ではやらないけど、やっている人はいいと思う。私はいじめには反対。とくに、一番の弱者や選択の自由に対するいじめはね」とコメントして、悪意はなかったと強調した。
ジーナがルーカス・フィルムが用意した謝罪文の内容を拒否して伝えた“自分の言葉”というのは、この弁解を指しているものと思われる。
保守派メディアと結託
『マンダロリアン』シーズン2のプレスツアーから除外されたことは、「胸が痛かったけれど、みんながプロジェクトに注ぎ込んだ努力を水の泡にしたくなかったから、我慢した」というジーナ。
「私が自分がシリーズをクビになったことを知ったのは、みんなと同じ、SNSだった」と声明でコメントし、ルーカス・フィルムやディズニーの対応は冷酷なものだったと印象づけようとしている。
ジーナの解雇騒動をめぐっては、「言論の弾圧だ」、「ハリウッドは共和党支持者を排除しがち」といった意見も見られ、ルーカス・フィルムおよびディズニーの対応に疑問や怒りを示す声もある。
マネージメントを手がけていたエージェントとも契約打ち切りとなったジーナだが、その後、 保守派メディアのThe Daily Wireと提携し、映画を制作・監督・主演することを発表。
米Deadlineへの声明では「全体主義者の暴徒にキャンセルされそうだと恐怖を感じながら生活しているみなさんに、直接、希望のメッセージを届けます。私はようやく自分の声を使えるようになったのです。今だかつてないほど自由になった私の声が、みなさんにインスピレーションをもたらしますように。私たちがそうさせなければ、彼らは私たちをキャンセルすることなどできません」とコメントしている。
ジーナの“事前の通達が無かった”という主張に関して、ルーカス・フィルムやディズニーは、現時点では反応していない。(フロントロウ編集部)
※こちらの記事は「民主党」の記載を誤って「共和党」としてしまったため修正しました。