ジェーン・フォンダ、信念をブレずに生きた演技派
1972年の映画『コールガール』と1978年の映画『帰郷』でゴールデン・グローブ賞とアカデミー賞の主演女優賞をダブル受賞した演技派であるジェーン・フォンダ。84歳になる2021年は、Netflix最長作品となることが決定した主演コメディドラマ『グレイス&フランキー』のシーズン7の制作が予定されている。
映画『黄昏』でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞をダブル受賞したヘンリー・フォンダを父に持ち、俳優活動をする前は、モデルとしてハイファッション誌Vogueの表紙を飾ったこともあるジェーンのキャリアにおいて、アクティビズムを語らないわけにはいけない。
今でこそセレブが社会問題のためにアクションを起こすことは当たり前な時代だけれど、ジェーンは、それがタブーとされてきた70年代からアクションを起こして現代のベースを築いてきた数少ない俳優。
1979年の第51回アカデミー賞に出席する前には、字幕がないために聴覚障がい者がアカデミー賞の放送を楽しめていないことを知ったジェーンは、アカデミー協会に字幕つきでの放送を求めたものの、それを拒否されると、受賞した場合はスピーチの一部を手話で行なって問題提起しようと決意。結果的に『帰郷』で主演女優賞を受賞し、聴覚障がい者が1400万人以上いることなどを訴え、テレビ放送が抱える問題を指摘した。
さらに1970年代には、ベトナム戦争の反戦活動に参加。当時は非国民だとして大きな批判を受け、業界を干されたも同然の状態になったものの、そんな反発はジェーンのアクティビズムを弱めるどころか逆に強め、彼女が支援してきた社会問題は、人種差別、ジェンダー平等、LGBTQ+の権利、環境問題、若者のエンパワーメントなど多岐にわたる。さらにそのアクティビズムには現在も陰りはなく、2019年には、真っ赤なコートを着てワシントンD.C.で気候変動に関する平和的デモを行ない逮捕される姿が話題になった。
ジェーン・フォンダ、ゴールデン・グローブ賞でのスピーチ全訳
ハリウッドだけでなく社会に大きなインパクトを与えたジェーンが、この度、長年にわたるエンタメ界への貢献を称えるセシル・B・デミル賞を受賞。同賞の過去の受賞者には、ウォルト・ディズニー、スティーヴン・スピルバーグ、メリル・ストリープなど大御所が並ぶ。
フロントロウ編集部が、約4分に及ぶジェーンのスピーチを全訳。
「ハリウッド外国人映画記者協会の全会員に感謝します。このような栄誉を頂けて感動しています。ありがとうございます。
私たちはストーリーテラーのコミュニティですよね。このような激動の、危機的な時代には、ストーリーテリングはつねに不可欠な存在でした。物語には、私たちの心や考えを変える力があるのです。お互いを新しい視点から見て、お互いに共感して、多様性があるとは言え私たちは皆まずは人間なのだと認識する手助けをしてくれます。
私は長い人生の中で多くの多様性を見てきましたが、出会った人たちを理解するよう私自身も求められたことがあります。でも心さえオープンで、表面にあるものの下に目を向けられれば、必然的に親近感を感じるのです。
それこそが、ブッダ、モハメッド、イエス、老師といった偉人が、物語や、詩や、比喩で語った理由です。アートという、直線でも理性的でもない形態は、違った周波数を持っているのですから。私たちが見聞きするのを恐れていたものを見聞きできるように、私たちをこじあけ、私たちの防御を突き破ることができる新しいエネルギーを生成します。
この1年だけでも、『ノマドランド』は私たちの中にある放浪者を愛する手助けをしてくれました。『ミナリ』は新しい土地での現実に直面する移民たちの経験を教えてくれました。そして、『Judas and the Black Messiah』、『Small Acts』、『The United States Vs. Billie Holiday』、『マ・レイニーのブラックボトム』、『あの夜、マイアミで』は、黒人として生きるとはどういうことかということに対する私の共感を深めてくれました。『Ramy』はムスリム・アメリカンとして生きることはどういうことかを感じる手助けをしてくれました。『I May Destroy You』はまったく新しい視点で性的暴力を考える手助けをしてくれました。ドキュメンタリー『All In』は私たちの民主主義がどれほど儚いものであるかを再認識させてくれ、それを守るために闘うよう触発してくました。そして『デヴィッド・アッテンボロー: 地球に暮らす生命』は、私たちの小さな青い惑星がどれだけ儚いかを見せてくれ、それと自分たちを救うようインスパイアしてくれます。
ストーリー。それは本当に本当に人々を変えられるのです。
この業界には、私たちが見聞きするのを恐れてきた自分たちのストーリーがあります。どの声を尊重し、昇格させるかについての物語。そして、どの声を排除するかについての物語。誰がテーブルに座れて、誰が意思決定が行なわれる部屋に入れてもらえないかについての物語。
だから、誰が採用され、何が作られ、誰が賞を受賞するかを決めるすべてのグループを含めて、私たちみんなでそのテントを広げる努力をしようではありませんか。皆が立ち上がり、皆の話が見聞きされるチャンスを与えられるように。
そのためには、真実を認めることが必要なのです。過去に行進して闘ってきてくれた人たちと、今日バトンを手にした人たちのおかげで、新たに生まれつつある多様性に歩調を合わせていきましょう。アートは常に歴史と歩調を合わせてきただけではなく、道を切り開いてきたのですから。
だからみんなでリーダーになりましょう。いいですか?
ありがとう。ありがとうございます」