イギリスのロンドンで女性が誘拐・殺害されたことを受けて、安全のために女性の行動を規制するのでなく、男性に働きかけるべきだと、多くの人が声をあげている。(フロントロウ編集部)

サイモン・ペッグ、女性でなく男性が行動を変える必要がある

 イギリスのロンドン南部を、夜9時頃に歩いていた33歳の女性サラ・エヴァラードが、誘拐・殺害された。犯人は、ロンドン警視庁の現職警官だった。

 被害を受けることが多い女性は、なぜか、夜に出歩くなだとか、露出するなだとか、行動を制限されることが多い。しかし行動を制限されるべきは、加害者側ではないだろうか? イギリスでは、1970年代に女性を狙った連続殺人ヨークシャー・リッパー事件が発生した際に女性の夜間外出を規制する指示が出たため、“男性にこそ外出禁止を指示すべき”とする「Reclaim The Night(意味:夜を奪還せよ)」が起こった。

 そして今回、サラの殺害事件を受けて、「Reclaim These Streets(意味:ストリートを奪還せよ)」という呼びかけが大きく広がっている。

画像: 3月14日にロンドンで行なわれたデモ。

3月14日にロンドンで行なわれたデモ。

 一方で、このような問題が持ち上がると、ほとんどの時に主張されるのが「Not All Men(ノット・オール・メン)」。すべての男性が加害者であるわけではないと反発するもので、今回の事件でも声をあげる人々に対して、この言葉を使う人はいる。

 しかしこれに対し、# NotAllMenButAllWomen というハッシュタグが拡散されている。“すべての男性が加害者でなくとも、すべての女性は性被害を受けたことがある”というこの反論に多くの女性が賛同しており、男性からも鋭い指摘が出ている。

 映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ミッション:インポッシブル』シリーズ、『スター・ウォーズ』シリーズなどで知られるイギリス人俳優のサイモン・ペッグは、インスタグラムで、短くこのように指摘した。

 「女性たちは常に、性被害を避けるためにガイドラインのようなものを与えられているように見える。サファリパークに行った時に与えられるように。違いは、この世界は、猿にクソッタレなゲス野郎でいるのを止めろって直接言えるサファリパークってことだ」

 また、これまでも国際女性デーなどに拡散されてきた言葉である「Protect your daughter. Educate your son.(娘を守れ。息子を教育しろ)」も、ふたたびシェアされている。

 これまでにも女性が殺害される事件は数多くあったけれど、今回は、男性側の姿勢に違いが見えることは、救いになっている。ツイッターなどでは、女性のために何が出来るかを聞く男性の姿が多く見かけられる。また、サイモンの動画にも、別の男性から「サイモン・ペッグは核心をついてる。僕たち男性がマシな行動をする必要がある」というコメントがあり、多くの同意が寄せられた。

女性たちが日常における性被害を明かす

 また、このハッシュタグとともに、ただ日常生活を送っていたなかで受けた性被害を話す女性も増えている。例えば、ある女性は、ピザのデリバリーをオーダーしたところ、その配達員からその後、個人的な連絡がきたことを明かした。デリバリー配達員や、中古品の引き渡しなどで連絡を取った相手から、後日連絡をされ、不快な思いをしたという女性は多い。

 また、Netflixドラマ『セックス・エデュケーション』より、名エピソードと評されるシーズン2の第7話で、少女たちがこれまでに遭った被害を語るシーンの画像も広く拡散されている。

 そこでは、痴漢被害によってバスに乗れなくなったこと、電車で身体を触られたことで、女性は公共物のように扱われていると感じたこと、男性に守られたくないのに、道で自分を追ってきた男は父親がいることに気がついたら逃げていったこと、男性にヤジを飛ばされたのは自分の服の露出が多すぎているからだと非難され、なぜ相手の行動で自分を変えなくてはいけないのかと反抗したことなど、多くの女性が経験したことのある思いを少女たちが代弁した。

 身体的被害を伴うような被害でなくとも、不快なメールを送られる、道端でヤジを飛ばされるなどの被害を、女性は日常生活の中で受けている。さらに、被害を受けているだけでなく、女性が行動を変えるべきだと指示される。しかし、なぜ女性側が行動を制限されなければならないのだろうか? 

 サラの事件は、社会を見直す転機となっている。(フロントロウ編集部)

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