ある同意書にサインしないとクビ!?
米アマゾンが、雇用条件として、アメリカ全土の配送ドライバーに「生体認証同意書」への署名を求めていることがわかった。米Viceによると、この同意書によって、アマゾンはドライバーの位置情報や運転中の行動、さらには顔の表情まで監視できるようになるそうで、署名を拒否したドライバーは解雇処分になるという。
同社は今年2月、約75,000台の社用車に、人工知能(AI)を搭載したカメラを設置すると発表。この動きについて、アマゾンはドライバーの安全性を高めるためのものだと主張しているが、つねに監視されることによるプライバシーの侵害を懸念する声も多く、ドライバーにとってはまさに究極の二択。
同意書にサインすることによって、走行距離、速度、加速、ブレーキ、旋回、車間距離など、ありとあらゆるデータを収集されることになるほか、ドライバーがあくびをしたり、注意力が散漫になったりしているところをとらえた、“証拠映像”の録画も可能であることから、一部のドライバーが懸念を抱くのは当然とも言える。実際、同意書の内容に納得がいかず、サインせずに辞めてしまうドライバーもいるそう。
監視カメラがドライバーのデータを収集すること自体は珍しいことではなく、UPSの配送車には多数のセンサーが搭載されており、配達時間を短縮するためにドライバーの行動のなかに修正できる点がないか把握することで、生産性の向上を図っていることは有名。しかし、アマゾンのドライバーとは異なり、UPSのドライバーは労働組合に加入しており、データの使用方法について発言権を持っている。
UPSがスマートセンシング技術を初めて導入した際、ドライバーを代表する組合はプライバシーの保護を交渉することができたが、アマゾンのドライバーは、厳密には会社に勤めているわけではなく、契約会社に勤めているためそのような影響力はない。ちなみに、現在、アマゾンの倉庫で働く従業員は、自分たちの労働条件に対する発言力を高めるために組合結成を目指している。(フロントロウ編集部)