アカデミー賞5部門ノミネート『プロミシング・ヤング・ウーマン』
第93回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、主演女優賞にノミネートされている映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』。本作は、かつては医学部に通う将来有望な女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)だったものの、現在はウェイトレスとしてカフェで働くキャシー・トーマス(キャリー・マリガン)が主人公。
泥酔した女性とセックスしようとするようなレイピストや、レイプ文化の容認に加担している人物たちを懲らしめるために人生を捧げている主人公キャシー。本作は、レイプというセンシティブなテーマを扱いながら、全編を通してシニカルな明るさで描いている点と、社会の中で自然に起きている不条理を炙り出して観客の心を揺さぶる点が評価されている。
エメラルド・フェネル、子供時代に親が呼び出されていた理由
『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、劇中で主人公が見ているメイク動画の出演者としてカメオ出演しているエメラルド・フェネルが脚本・監督・プロデュースを行なった作品。
俳優としてショービズ界入りしたフェネル監督は、英ドラマ『コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語』に出演。シリーズの撮影の合間に時間があったため、その時期に小説を発売するという活動を続けていたところ、その1冊を読んだジェシカ・ナペットの誘いでシットコム番組『ドリフターズ』に脚本家として参加することに。そこから脚本家としての道が始まり、人気ドラマ『キリング・イヴ/Killing Eve』でも脚本を担当。『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、長編映画における脚本・監督デビュー作となる。
そんなフェネル監督は、幼少期によく親が学校に呼び出される“問題児”だったという。しかしその理由が、映画においてレイピストたちへの復讐劇というテーマをダークユーモアで描いている監督らしかった。
フェネル監督は米Hollywood Reporterで行なわれた脚本家たちの対談の中でこう語った。
「(演技などに比べて)最も多くしていたのが(物語を)書くことでした。小さい頃からね。そしていつも恐ろしく暴力的(な内容)。両親がオフィスに呼び出されて、私が大丈夫か聞かれるってことがよくあったんです」
そう、フェネル監督は子供時代から書くストーリーがハードコアすぎて周囲の大人を心配させていたということ。当時は子供らしくないと不安視されたようだけれど、現在の成功から振り返ると、逆に子供ながらに卓越していたということのよう。
人が良さそうに優しく笑う姿からはギャップたっぷりなフェネル監督のバイオレンスやサスペンス好きは著書にも色濃く現れており、『コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語』の撮影の合間に執筆した著書2作は、子供向けのホラー作。フェネル監督自身、「ご存知のとおり、これはとても人気のジャンルですよね」と対談で笑った。
アカデミー賞では個人としては作品賞・監督賞・脚本賞の3部門にノミネートされているエメラルド・フェネル。結果は日本時間4月26日(月)午前に開催される本番で明かされる。日本では同日午前8時半からWOWOWで独占生中継。そして映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』は今夏に日本公開予定。(フロントロウ編集部)