スティーヴィー・ワンダーの妻に発掘された
ワシントン州生まれカリフォルニア州育ちのアンドラは、幼い頃から歌うことが大好きで、高校生だった16歳の時には歌手になるという夢を持っていたそう。そして20代中盤の頃に小さなショッピングモールの開店イベントで歌っていたところ、スティーヴィー・ワンダーの当時の妻だったカイ・ミラードの心を奪い、翌日にはカイの大絶賛を聞いたスティーヴィーから電話で連絡が! 米Live Nationでこの経緯を明かしたアンドラは、スティーヴィーからの最大の教えは「過程を楽しむこと」だと明かした。スティーヴィーは後にアンドラのデビューアルバム『チアーズ・トゥ・ザ・フォール』でプロデューサーを務めたエイドリアン・ガーヴィッツを彼女に紹介し、さらに、2015年に放送されたApple TVのCMでスティーヴィーの曲「サムデイ・アット・クリスマス」をデュエットした。
名前からして、ビリー・ホリデイを演じる運命だった
アンドラ・デイはじつは芸名。本名をカサンドラ・モニーク・ベイティー(Cassandra Monique Batie)という彼女は、11歳の時に、典型的な美しい歌声ではなく独特の歌声で真実を歌うビリー・ホリデイのパフォーマンスに心を揺さぶられ、「素晴らしいシンガーとはどんなシンガーかという定義を変えてくれた」と米New York Timesで明かす。そうして自身もシンガーとして活動することになった時、自分の音楽観を変えてくれたビリー・ホリデイのニックネームである「レディ・デイ(Lady Day)」をオマージュしたアンドラ・デイというステージネームが誕生した。
大物監督スパイク・リーに逆オファーされる
デビューアルバムを制作中だった2014年に、サンダンス国際映画祭でパフォーマンスを行なったアンドラ。マネージャーいわく「アンドラを知っている人は誰もいなかった」という会場でのパフォーマンス後、ステージから降りたアンドラの腕をまるで興奮したファンのようにつかんだのが、有名監督のスパイク・リー。しかも監督の口から出たのは、初のミュージックビデオを自分に監督させて欲しいというお願い! そしてその言葉どおり、監督が手がけたMV、「フォーエヴァー・マイン(Forever Mine)」が2015年5月に公開。マネージャーは当時を振り返り、「(パフォーマンスを見てもらったあとは)そういうことが、しょっちゅう起きていた」と米iHeartRadioに明かした。
「ライズ・アップ」がBLM活動、CM、政治の世界で使われる
アメリカの人種差別を告発したビリー・ホリデイの曲「奇妙な果実」を、劇中で見事に歌い上げているアンドラ。そんなアンドラも社会に訴える曲を作っており、逆境の中でも立ち上がることを歌った2015年の曲「ライズ・アップ」でグラミー賞にノミネート。同曲はブラック・ライヴズ・マター運動のデモで歌われたほか、米マクドナルドの5,000万個のコップに歌詞がプリントされたり、セリーナ・ウィリアムズ主演のBeats by Dr. DreのCMに起用されたり、2016年の民主党全国大会で歌われたりと、人々を鼓舞する曲として多方面で愛されている。
起用を渋ったリー・ダニエルズ監督の考えを30秒で変える
じつは『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ』を監督したリー・ダニエルズは、当初から、自身のマネージャーなどから“アンドラ・デイを検討するべきだ”と言われていたという。しかし逆に言われすぎたせいで拒絶反応を示し、アンドラとのミーティングも渋々設定したという。結果的に監督はアンドラに好印象を持ったものの、本格的な演技経験ゼロだったことがネックに。そこで演技コーチのもとにアンドラを送ったところ、「演技コーチがiPhoneを取り出し、役に入り込むための準備をする(アンドラの)姿を見せてくれたんです。その30秒の動画だけで、間違いなくビリー・ホリデイを見ているようだった。それで終わり。あれは演技ではなく、本当に(ビリー・ホリデイが)存在していたんです」と、ダニエルズ監督は米Hollywood Reporterで明かした。
あふれ出る才能で、演技経験ゼロながら映画界のトップレベルのアワードで話題を集めている大型新人のアンドラ・デイ。主演女優賞にノミネートされている第93回アカデミー賞授賞式は日本時間4月26日に開催される。(フロントロウ編集部)