肉食を減らすと地球はどうなる?
私たちが肉を食べる回数を減らしたら地球温暖化対策にはどれくらいの影響があるのか? 科学者たちは、大きなインパクトがあると言っている。
世界の肉の消費量は2018年までの20年間で58%も増加しており、その消費量はアメリカがトップではあるものの、日本でも食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)の1人あたりの年間供給量は1960年の3.5kgから2013年の30kgと、約50年で10倍も増加している。そんななか、肉をたくさん食べる人(1日約100グラム・日本人の男性平均は98.9グラム)の1日のカーボン・フットプリント(※)は、菜食主義者の2倍近くと、肉食が進めば進むほど地球温暖化につながる温室効果ガスの排出量がアップしていくことになる。
畜産業の温室効果ガスの排出量は、車・バス・電車・船・飛行機などすべてを合わせた輸送部門と同レベル(全体の14%)。これは、牛や豚といった家畜が排出するゲップ(メタンガス)に二酸化炭素の21倍の温室効果(=地球を温める働き)があることが大きい。
さらに畜産業は、家畜の放牧や家畜に与える大量の飼料用穀物を育てるために広大な土地が必要になるため、地球温暖化に悪影響を与える森林伐採の原因となってしまっている。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は気候変動と人間の土地利用をまとめた報告書の中で、「肉の消費を減らすことが(気候変動の影響を回避したり軽減したりする)適応策になる」と明言。IPCCの気候学者Hans-Otto Portner氏は記者団に、「皆さんに何を食べなさいと言いたいわけではありません。ただ、豊かな国の人々の多くが肉の消費を減らし、政治がそのための適切なインセンティブ(刺激・誘因)を作り出すことが、気候と人間の健康の両方にとって有益なことは確かでしょう」とコメントした。
※カーボン・フットプリント:商品やサービスなどの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでに排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算したもの。
略して「ゆるベジ」!ゆるい菜食主義者、フレキシタリアンとは
“肉食を減らす”ためにフロントロウ編集部が注目したいのは、フレキシタリアン(flexitarian)というライフスタイル。
柔軟性のある・適応性のあるという意味のフレキシブル(flexible)と菜食主義者という意味のベジタリアン(vegetarian)を合わせたフレキシタリアンは、植物性の食べ物を中心とした食生活をしているけれど肉食をすることもあるゆるいベジタリアンのこと。
フレキシタリアンの良いところは、ビーガンやベジタリアンよりもハードルが低いため、より多くの人が取り入れやすいところ。2018年に発表されたベースライン予測によると、社会がフレキシタリアンなライフスタイルに移行した場合は温室効果ガスの排出量を52%も減らせるとしている。もちろん、植物性食品を摂ることで健康に良いというプラスも忘れてはならない。
フレキシタリアン生活の始め方
- まずは小さく始めて。“月曜日だけ動物性食品を摂らない”といったルールを決めて、慣れてきたら肉を摂らない曜日を増やしていくと◎。
- 「食べない」ではなく「食べる」ことを目標にするとストレスが溜まりにくい。「野菜・穀物・豆類=たくさん食べる、乳製品=食べる、肉類=適度に食べる」に分類するなど。
- 豆腐バーガーなど代替肉を冷蔵庫に用意する。外食先でも代替肉をメニューに取り入れているレストランや野菜のメニューが豊富なレストランを調べておくと良い。
- 朝に目玉焼きを食べる習慣があるならそれをアボカドトーストに変えてみるなど、新しいメニューを取り入れることを楽しむ。
フレキシタリアンな食生活において食べて良い肉の量については議論が分かれるけれど、フレキシタリアンな食生活が温室効果ガスの排出量を52%に減らせるとした2018年の発表では、赤身の肉は週に1回抑え、鶏肉、魚、牛乳、卵は控えめに摂取することが推奨されている。
もちろんこのレベルでできないからと言って、やる意味がないわけではない。環境問題に対する対策は、完璧でなくても良いから大勢の人が参加することが大事。明日からでも良いから、ゆるベジ生活を始めてみては?(フロントロウ編集部)