2歳の子を持つシンガーで、レズビアンであることを公表しているケラーニは、クィアに理解のある大人たちに囲まれながら、子どもにクィアな教育を行なっているそう。子どもが幼いうちから、ジェンダーのステレオタイプにとらわれない教育をすることの重要性とは?(フロントロウ編集部)

ジェンダーのステレオタイプは幼少期に形成される

 近年、「男の子なら強く、女の子ならおしとやかに」のような、ジェンダーに基づいたステレオタイプにとらわれず、ジェンダーニュートラルに子育てをする親たちが増加している。

画像: ジェンダーのステレオタイプは幼少期に形成される

 生まれた時に割り当てられた性別に対するステレオタイプに沿った子育ては、子どもの生きづらさに繋がることがある。子どものための活動を行なっているイギリスの慈善団体The Children's Societyが2020年にまとめた、子どもの幸福に関するレポート「Good Childhood Report」によれば、男の子の特徴として「強さ」を挙げた子どもたちと、女の子の特徴として「おしゃれであること」を挙げた子どもたちが、最も幸福度が低いという結果が出ているといい、ジェンダーのステレオタイプに対する窮屈さが、幸福度合いと関連していることが示されている。

 幼少期からジェンダーのステレオタイプが強いことは、それぞれのジェンダーが取る行動を限定したり、それぞれのジェンダーの扱われ方を変えたりしてしまうため、結果的に大人になったときに、就ける職業の可能性を狭めてしまったり、生き方が限定されてしまったりといった、さまざまな問題につながる。加えて、子どもたちが、自分は“割り当てられた性別らしく”生きなければいけないと思い込みやすい環境を作ってしまうため、生まれた時の性別と自認している性別が異なる場合などに、打ち明けづらくなってしまうこともある。

 イギリスの慈善団体The Fawcett Societyが2019年にまとめたレポートによれば、多くの子どもたちは2歳になるまでに社会的なジェンダーの役割を意識するようになり(※1)、小学校に通い出す頃には、男の子や女の子としてどんな振る舞い方が期待されているかを認識するようになるという(※2)。

(※1)Martin, C., & Ruble, D. (2004) ‘Children’s search for gender cues: Cognitive perspectives on gender development,’ Current Directions in Psychological Science, 13(2), pp. 67-70.
(※2)Bian, Leslie, and Cimpian, (2017), ‘Gender stereotypes about intellectual ability emerge early and influence children’s interests’, Science 355(6323), pp 389-391

ケラーニが現代社会における基準に持論

 つまり、子どもに対してジェンダーのステレオタイプにとらわれない教育を始めるのは、早ければ早いほど良いのだけれど、そんなジェンダーにとらわれない教育を行なっている1人が、2018年にパンセクシャルであることをカミングアウトし、最近になってレズビアンであることに気づいたと公表したシンガーのケラーニ

 SNSのプロフィール欄には、希望する代名詞として、性自認が女性であることを示す「she」と、女性・男性という枠組みに当てはまらないノンバイナリーの人などに対して使われる「they」の2つを記載しているケラーニには、2019年にギタリストのジャヴィー・ヤング・ホワイトとの間にもうけた第1子のアデヤ・ノーミ(2)がいる。

 米Adovocateとのインタビューでアデヤの子育てについて語ったケラーニは、「社会におけるスタンダードがたくさんあるけど、どれも古くて、時代遅れだと思う」と、今の社会にある“こうあるべき”といった基準はアップデートされるべきと持論。「1つの方法で人生を生きなければいけなくて、情熱を持てないようなものを見つけるために育てられ、それに専念させられて、ある程度はお金を稼ぐけど、誰も助けることなく、ただ物を抱えて生きるようなね」として、今の社会に存在する“スタンダード”はどれも本当に人を幸せにするのか?と疑問を投げかけた。

クィアな育て方をしているとケラーニ

 そうした社会のなかでアデヤを育てているケラーニは、できる限りジェンダーのステレオタイプにとらわれることなく、クィアな教育で育てようとしているそう。ケラーニによれば、彼女の周囲にはそれを実現できる環境が整っているといい、「友だちも、おばたちも、おじたちも、娘の祖父母も、全員がクィアであることを公にしているから」と、自身やアデヤを取り囲む多くの人たちがクィアだと明かした。

画像: クィアな育て方をしているとケラーニ

 ケラーニは、「私たちの世代はそうした型にはまった考えを壊すことができたと思う」と、自分たちの世代はジェンダーのステレオタイプを打ち壊しつつあると述べた上で、「子どもたちはきっと、(自身のセクシャリティについて)認識したり、区別したりする必要がなくなるんじゃないかな。ノーマルなものになってほしい」と次の世代に向けた希望を語った。

 米Adovocateとのインタビューのなかで、ケラーニは具体的な取り組みにも触れて、「私たちはクィアの物語を読み聞かせるつもり。2人の父親がいたり、2人の母親がいたり、そのどちらにも定めていない2人を親に持つ子どもがいるようなクィアな本をね」と、必ずしも異性同士の両親が登場しないような本を読み聞かせるようにしているとコメント。「だから娘は、『これは普通とは違う』なんて思うことすらないんじゃないんかな」と続けて語り、日頃からセクシャル・マイノリティの人たちが登場する物語を読んであげることで、アデヤには、セクシャリティの違う人がいて当たり前だと思ってもらいたいとした。

 絵本におけるレプリゼンテーションの重要性は近年強く訴えられており、ジェンダーニュートラルな絵本を選んで子供に与える親は欧米を中心に増えている。例えば絵本でいつも仕事に出かけるのが男性ならば、子供の意識には“男性は仕事をするもの、仕事は男性がするもの”という固定概念が養われてしまう。それとも一つの人種のみが毎回登場する場合は、社会に他の人種の人も存在することが想像できない。その一つとして、セクシャル・マイノリティのキャラクターが登場することも重要。

 そして、親が率先して、多様なセクシャリティの人々や、多様な人種の人たちが登場する絵本を子どもに読んであげることで、世の中には多様な人たちが存在するということを幼いうちから教えていくことはもちろん大切だけれど、ケラーニが話すように、子どもの周囲にいる親以外の大人たちも、社会におけるスタンダードにとらわれない考えを持って子どもに接するのも重要なこと。ジェンダーのステレオタイプや、人種など、すべての人たちが“その人らしさ”によって悩む必要のない社会を実現するために、1人1人が意識しながら取り組んでいくことが大切。(フロントロウ編集部)

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