Rotten評価100%のAmazon Originalドラマ
『地下鉄道~自由への旅路~』は、ピューリッツァー賞や全米図書賞など多数受賞した名作、コルソン・ホワイトヘッド著の『地下鉄道』を全10話のミニシリーズとして映像化したAmazon Originalドラマ。本作は、映画『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督が指揮をとる初のテレビシリーズ。
物語の主人公は、米南部ジョージア州のプランテーション(大規模農園)で奴隷として働いているコーラ・ランドル(スソ・ムベドゥ)。彼女は、黒人奴隷を南部から逃がす地下鉄道を目指して旅を始める。賞金稼ぎのリッジウェイ(ジョエル・エドガートン)に追われながらも他の州へと旅をし、その先で、かつて彼女を置き去りにした母親が残したものと対面することとなる。
5月14日にAmazon Prime Videoで配信開始する前にシリーズを視聴した批評家からは、奴隷制度を題材にした作品は多くあれどジェンキンス監督のような描き方をした人は初めてだと高く評価する声が多く、批評家のレビューをまとめた米サイトRotten Tomatoesでは100%Freshを獲得した。
撮影現場にはセラピストが常駐していた
2019〜2020年にジョージア州を中心に撮影された『地下鉄道~自由への旅路~』では、現場にキャストやクルーのメンタルヘルスを支えるセラピストを常駐させたという。
ドラマに出演した黒人キャストにとって、ドラマの題材となった奴隷制度は自分たちの先祖が実際に経験したこと。先祖たちのトラウマを撮影を通して経験することは精神的につらいこともあるだろうと、ジェンキンズ監督はカウンセラーを起用。
奴隷制度から解放され他の黒人の解放のために活動するロイヤルを演じたウィリアム・ジャクソン・ハーパーは、「バリー(監督)は安心できる環境を上手く作れる人なんだ。現場にセラピストもいた。ちょっときつすぎる時には、その人と話すことができた」と英Guardianに告白。ウィリアムによると、監督自身も心のバランスが乱れた時にはこのカウンセラーと話していたそうで、「バリーは僕らの世話をする合間に(セラピストと会話を)していた」と続けた。
そしてジェンキンス監督は、このカウンセラーに“いつカットをかけても良い”という、普段ならば監督以外には与えられることはない権利を与えたそう。“その場にいる人の心の負担になっている”と感じた時には監督や俳優がシーンに夢中になっていてもカットの声をかけても良いという、俳優を温かく育てる育成型監督として知られるジェンキンス監督らしい制度が導入された。
バリー・ジェンキンス監督が無言になったシーン
そんなジェンキンス監督は、とくに過酷だったシーンについて豪The Sydney Morning Heraldで明かしたことが。そのシーンは、実際に黒人奴隷が働いていたジョージ州のプランテーションで撮影された、黒人奴隷がリンチされて焼かれるシーン。このシーンの撮影は全員の心を揺さぶり、監督は無言になりそのまま何も言わずにセットからいなくなってしまったという。
「あのシーンの撮影が最も難しかった。とても不思議だけどね。血も、炎もなかったから」としたうえで、「私たちが立っていた場所と同じような場所で、もっとひどいことが起きていたことは、リサーチで知っていました。だからキツかったんです」と、シーンを振り返った監督。
ただ監督自身、カウンセラーであるキム・ホワイトの存在には助けられたそうで、「(ホワイト氏は)撮影の全権を握っていて、止めるべきだと思えば止めてくれました。通常、撮影の開始や中止を指示できるのは私か、安全のためにスタントコーディネーターくらいですが、キムさんは必然的に私を凌駕していました」と話した。
ジェンキンズ監督の全身全霊の思いがこもったドラマ『地下鉄道~自由への旅路~』は、5月14日(金)よりAmazon Prime Videoで独占配信開始。(フロントロウ編集部)