5月21日にデビューEP『(L)only Child(ロンリー・チャイルド)』をリリースしたシンガーのセイレム・イリースにフロントロウ編集部がインタビュー。デビュー作のタイトルにもなっている、“ひとりっ子”であることがセイレムのアイデンティティに与えた影響や、カラフルなファッションへのこだわり、そしてもちろん、その名前を一躍広めることとなったヒット曲「Mad at Disney」について話を訊いた。(フロントロウ編集部)
セイレム・イリースがデビューEP『(L)only Child』をリリース
「私はディズニーに怒っているの/すっかり騙された/流れ星に願いをかけさせるなんて/もう20代にもなったのに/まだ何にも分かってない/自分がどんな人間なのかも」。
ディズニー映画で描かれている理想の世界と現実とのギャップに物申した、日本語で「私はディズニーに怒っている」を意味するその名も「Mad at Disney」がTikTokを中心に大ヒットとなり、2020年に時の人となった現在21歳のシンガーソングライターであるセイレム・イリース。
弱冠12歳にして、シェールらとの共作で知られるシンガーソングライターのボニー・ヘイズにその才能を見出され、ソングライターとして本格的に勉強をスタートさせたセイレム。その後、ボストンにある名門バークリー音楽大学に2年通い、作詞作曲やパフォーマンス、プロダクションについて学んだ後に退学して、ロサンゼルスに移住。ロサンゼルスに移住して最初のセッションで書き上げた楽曲のうちの1つが、「Mad at Disney」だった。
ひとりっ子として育った自分は「手がかかる人」と、セイレムは今回行なったフロントロウ編集部とのインタビューで笑いながら話してくれたけれど、物心ついた時から1人で曲を書いてきたというセイレムのルーツは、間違いなく現在のセイレムのソングライティングに大きな影響を与えている。
そんなセイレムが5月21日にリリースした待望のデビューEPにつけたタイトルは、「Only Child(ひとりっ子)」と「Lonely Child(ひとりぼっちな子)」をかけ合わせた、文字通りの『(L)only Child(ロンリー・チャイルド)』。
インタビューの直前まで5日連続でお寿司を食べていたという、お寿司大好きなセイレムとのインタビューでは、ひとりっ子としてのアイデンティティや、大好きな犬のこと、ディズニーに怒った理由、自分のニックネームにもなった『美少女戦士セーラームーン』についての思い、ルームメイトとのお寿司の大食い競争で勝利を収めた時の思い出などを振り返ってもらった。
セイレム・イリースにリモートインタビュー
5月21日にリリースするEPのタイトルである『(L)only Child』は、収録されているシングル「(L)only Child」にも同じタイトルがつけられているように、あなたにとって重要な意味を持っているのだと思うのですが、このタイトルについて教えていただけますか?
「『(L)only Child』は、ひとりっ子(only child)の言葉遊びになっているの。理由は、私がひとりっ子だから。両親からは子供の頃、犬が私のきょうだいだって言われていたんだけどね。ひとりっ子であることは、私自身についてや、私のパーソナリティそのものをよく表している。良い部分も、悪い部分もね。私は扱いづらいし、シェアすることも得意ではないけど、間違いなく自立はしているし、1人の時間の過ごし方もよく分かってる」
シングル「(L)only Child」の歌詞についてはどうでしょう? この曲に込めた想いを訊かせてください。
「これまでにリリースした曲で、最も正直な曲になっていると思う。私が書いた曲の中で、一番正直な曲であることは間違いない。歌詞を聴いてもらえれば、特にヴァースの部分は、私がこういう人だっていうことを説明するような内容になっている。私のあらゆる部分をね。ものすごく正直な内容になっているよ。私は両親とかなり仲が良いし。それに、私は最高のルームメイトではないからね(笑)。昔のルームメイトとは今も友だちなんだけどね! 彼らはきっと私のことを、一緒に楽しく生活できるような人ではないって言うはず(笑)」
「(L)only Child」の歌詞のなかで、あなたを最も表しているフレーズを教えてください。
「2番のヴァースかな。『As you can see I'm a handful / Not easy to handle /Made me a pretty hell / But at least I made myself(見ての通り、私は手に負えないの/扱うのは簡単じゃないし/ややこしくしてしまうけど/少なくとも、自分でできた)』という歌詞。そこで私が歌っているのは、自分は手がかかる人間だけど、ひとりっ子として育ったから、ある程度は自立しているということ。意図はしていないけど、手がかかる人だっていうことだね(笑)」
「(L)only Child」は、あなたが2人登場するミュージックビデオも印象的です。この演出にはどのような意味が込められているのでしょう?
「私は『セイレム1』と『セイレム2』と呼んでいるのだけど、このビデオのコンセプトとしては、そのどちらのセイレムも、私だということ。ベースとしては、私の異なる2つのパーソナリティを表現しているの。私が自分自身と暮らしているという場面からスタートするんだけど、このビデオを通して、自分のクローンと生活したらどうなるかということを表現していて。私は子供の頃、ずっときょうだいが欲しかったの。やんちゃなお姉ちゃんとかがいたらクールだなって思っていたんだ。そうした思いが表現されているのが、セイレム2だよ。髪を上げているほうの私がセイレム2。私はむしろ、真面目なタイプなんだよね。セイレム2のほうはもっと反抗的で、セイレム1よりも遥かにクールなの。ところが、2人は喧嘩を始めて、セイレム1のほうが、1人だけで暮らしていることに感謝し始める。ビデオの最後には、セイレム1が1人で目を覚ますんだけど、そこでは、私がひとりっ子であることを受け入れて、ひとりっ子として学んできた教訓に感謝しているということを表現しているの」
ひとりっ子として育ってきたご自身のアイデンティティを「(L)only Child」で歌っているように、楽曲制作への興味も、“ひとり遊び”のようなところからスタートしたのでしょうか? 音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。
「物心ついた頃から、曲を書いたり歌ったりしていた。昔はあらゆることをテーマにして歌っていてね。子供の頃は動物のぬいぐるみについてだったり、小さなポニーと過ごす時間についてだったり、色んなことについて歌っていた。そういうものが、本格的な楽曲制作に発展していったんだと思う。9歳の頃に、レッスンを受け始めて、最高に楽しいことを見つけたって思えた。それ以外はやりたくないなって思うくらいにね。それに、私が唯一得意だったことでもあるの(笑)」
お気に入りのアーティストは誰ですか? また、コラボできるなら誰とコラボしてみたいですか?
「好きなアーティストはたくさんいるよ。デヴィッド・ボウイはその1人。犬の名前を彼にちなんでボウイと名付けているの」
「それから、ザ・キラーズ。(フロントマンの)ブランドン・フラワーズと曲を書いてみたい。彼は素晴らしいし、多作だよね。彼はあまり他の人と共作していないと思うから、実現するかはわからないけど、もしブランドンが私に連絡をくれたら最高。後は、ロードも大好き。彼女は最高だよね。それから、ドミニク・ファイクはものすごくクール。アッシュ(Ashe)のニューアルバムもすごく良かった。天才だと思う」
愛犬のボウイといえば、毎週「Dog Of The Week(ドッグ・オブ・ザ・ウィーク)」をSNSで発表していますよね。この企画はどのような経緯でスタートしたのですか?
「私は何年も前から、インスタグラムのプロフィール欄に、『犬の写真を送ってね』って書いているの。『Mad at Disney』をリリースする前からずっとね」
「それで、『Mad at Disney』をリリースした時に、ちょっとしたファンベースができて、実際に犬の写真が送られてくるようになったんだけど、その写真をどうするべきか悩んでいたの。写真を見ると幸せな気持ちになれるから、悲しい時にはいつも、DMをチェックして、送ってもらった犬の写真を見ているんだけどね。どの犬も本当に可愛くて! なので『ドッグ・オブ・ザ・ウィーク』は、送ってもらった犬の写真で何かしようと思って始めた企画。世の中にもこの写真をシェアしたいなって。それで、『ドッグ・オブ・ザ・ウィーク』を始めたんだけど、そのためのちょっとした曲まで作ったんだよ。私としては、毎週発表するものにできて良かったと思っている。犬は私が1番大好きな存在だから」
その「Mad at Disney」は大ヒットとなったわけですが、どのような経緯で誕生したのでしょう?
「この曲は(ボーイフレンドの)ベンディック・ムラーと(彼の友人の)ジェイソン・ハースと一緒に書いたの。およそ1年前(2020年7月24日)にリリースしたから、もう少しで1周年を迎えるんだけど、もう1年が経つと思うとすごく変な感じがする。これはLAでの最初のセッションの1つで作った曲で、2人と話をしていた時に、ジェイソンが唐突に、『ねえ、ディズニーに怒ってるんだけど』って言い出したのを覚えてる。それで、私が『どうしてディズニーに怒っているの?』って訊くと、ディズニーが、私たちが子供の頃に観て育ってきた名作のリメイクや、その実写版ばかり作っているからだと言っていて。彼は『ライオン・キング』の実写版を観てきたらしいんだけど、好きになれなかったみたい。そんな会話をしながら、私も『ねえ、私もディズニーに怒ってる。ただ、まったく別の理由でね』っていう風に話し始めたの」
「そこから話を発展させていって、子供の頃に、いかにディズニーが私たちを騙してきたかについて討論したんだ(笑)。私は幼かった頃、ディズニー・プリンセスの映画を何度も繰り返し観て、毎年ハロウィンにはプリンセスの格好をしていた。プリンセスのドレスをカジュアルに着て、ハロウィンの週末に近所を歩き回っていたの。私はそういうディズニーのイメージにすっかり取り憑かれていて、ステレオタイプを完全に受け入れていた。それがどの時期から変化していったかは分からないけど、どこかの時点でスイッチが入って、『ちょっと待って。これってまったくリアリティがない』っていうことを思い始めたのを覚えてる。(現実の)愛はこういうものではないし、女性はわざわざ救われる必要なんて全然ないし、王子様が白馬に乗って私を助けに来てくれることはないってね。それで、その時からちょっとシニカルに考えるようになって、それをセッションで話題にあげて、全員で話し合っていったの」
好きなディズニー・プリンセスはいますか?
「ラプンツェルは大好きだよ。彼女はカメレオン(パスカル)を飼っていて、私はアゴヒゲトカゲを飼っているから。そこが似ているなって。トカゲ女子仲間っていう感じで好きなんだよね(笑)」
シングル「about a breakup」は日本語バージョンのリリックビデオも公開されています。このビデオのアイディアはどのように思いついたのでしょう?
「実は、『(L)only Child』のミュージックビデオと同じセットで撮影したものなの。(カリフォルニア州の)パームスプリングスにあるセットなんだけど、私たちはそこを2日間借りていてね。たくさんの部屋があって、そのどの部屋もカラーリングが違うっていう、ものすごくクールな家だったの。それで、『(L)only Child』の撮影の空き時間に、『about a breakup』のリリックビデオも撮影してしまおうという話になって。私たちがこのビデオで目指したのは、2020年に起きた出来事を、テレビのスクリーンに合成して映すということ。私たちが社会として一致団結して乗り越えてきた、世界各地で起きた出来事を映して、今なお重要な意味を持っているということを伝えたいと思ったの。『about a breakup』は、私にとってすごく興味深い曲でね。というのも、この曲はパンデミックが起きるよりも前、それも2020年になる前に、つまり、あらゆる出来事ができる前に書いた曲なの。それが、あらゆることを経験してきた今、私にとってそれまでになかったような意味を持つ曲になったんだから」
「Mad at Disney」も「(L)only Child」も、実体験が基になっていると思うのですが、「about a breakup」で歌われている失恋も、ご自身の実体験に基づいているのでしょうか?
「そうだと言える。この曲はボーイフレンドと書いたから、そこは笑えるんだけど(笑)。(プロデューサーの)ライアン・デイプルと一緒に書いた曲で、私たちが最初に書いたのは、『I could paint the ceiling blue / And never leave my room(天井をブルーに塗って/部屋に引きこもってもいいけど)』って歌われる、1番のヴァースだった。それから、『You could paint your bedroom green / While sobbing over me(寝室をグリーンに塗りながら/私を思って泣くのもいいけど)』とも歌っているのだけど、どうしてそういう歌詞を思いついたかと言うと、子供の頃、実際に部屋の天井がブルーに塗られていたからで。母親が素晴らしいアーティストで、青空と雲で天井に空模様を描いてくれていたの。それから、壁はグリーンの背景に花が描かれているという感じで、すごくクールだった。寝室にいながら、屋外にいるような気持ちになれたの。それを思い出した時に、コンセプトとしてクールなものになるんじゃないかって思って。ほら、失恋って、自分がそれを経験している時には、それが世界中で最も重大なもののように思えるでしょ? この曲は、そんななかでも自分自身に優先順位を思い出させるような曲になっているの。失恋や、自分が苦しんでいることが世界で1番重要なことのように感じていたとしても、涙を流すべきもっと大切なことが他にもあるということをね。いつだって、それ以上にエネルギーを傾けるべきものがあるということを歌っている」
印象的なカラフルな衣装をはじめ、MVなどではファッションにこだわっている姿が見受けられますが、スタイリングする際に気をつけていることはありますか?
「カラフルで、明るくて、鮮やかな色彩の服が好きなの。それから、90年代に影響を受けたスタイルのような、昔の服を着るのも好き。ヴィンテージもののジャケットが大好きで、レーシングジャケットや、オーバーサイズのジャケットもすごく好き。ミュージックビデオや撮影では、様々なスタイルの服を試すことができるっていうところが楽しいと思う。例えば、『(L)only Child』のミュージックビデオでは、2人の私が登場することもあって、10回くらい衣装チェンジをしたの。たくさんの衣装を楽しみながら着ることができたから、最高だった。そんななかでも、あのビデオでの衣装は、私のガーリーな部分を反映していると言えるかな。EPのカバーでは、スーツのセットアップを着ているから、そっちのほうは、『大人のセイレム』という感じ。そういうわけで、あらゆる衣装やペルソナ、ファッションを試すことができたのは楽しかった。もちろん、カラフルな服はお気に入りだよ」
今年の夏にチャレンジしたいスタイルはありますか? また、すでに購入しているアイテムがあれば教えてください
「スカートをたくさん買ったよ。テニススカートも買ったんだけど、笑えるのが、私はまだテニスを始めたばかりだということで。ものすごく下手なの(笑)。友だちが住んでいるマンションにテニスコートがあって、私たちはみんなもう(新型コロナウイルスの)ワクチンを打ったから、毎週日曜日に集まって、テニスをしたりブランチを食べたりしているんだ。これからは、テニスをしていない時にも私はテニススカートを履くと思う。すごく履き心地がいいし、可愛いからね」
ところで、『セーラームーン』が大好きだそうですね!
「そうなの! セーラームーンは大好き。4年連続でハロウィンにはセーラームーンの格好をしているよ(笑)」
『セーラームーン』のどこに魅了されたのでしょう?
「私が『セーラームーン』を観始めたのは、子供の頃に、いとこたちが私のことをセーラームーンと呼んでいたからなの。それが私のニックネームだったんだけど、私としては、『何それ? セーラームーンって何?』っていう感じで。それで、調べてみて、自分でも観てみたら、『最高じゃん。すごくイケてる』って思うようになったの。だから、セーラームーンに例えてもらえたのは嬉しかった。今まで呼ばれたニックネームで1番のお気に入りだよ。セーラームーンは最高にクールだし、カッコいい女性だと思う」
先日、友人たちと、“どれだけお寿司を多く食べられるか”を競っている様子をSNSにアップされていましたよね。勝者はあなたでしたが、よくお寿司は食べられるのですか?
「あれは笑えた(笑)。誰が1番お寿司を食べられるかを競う動画をTikTokにアップしようと思って、ルームメイトたちとお寿司の食べ放題へ行ったの。私が勝てるなんて思ってなかったんだけどね。私は2人の男性のルームメイトと住んでいて、2人とも食欲がすごいから。お寿司は私の大好物なんだけど、あくまでもヤラセではなかったということは伝えておく。私はルームメイトのキャメロンに真っ向勝負を挑んだつもりだけど、多分、彼が私を勝たせてくれたんだと思う。私は『キャメロン、あなたなら食べられるはず。もう1口食べて』って促したんだけど、『セイレム、僕はもうこの先の人生で一貫も食べられないよ』って言われたの(笑)。それで、私としては『あら、そう。私はあと1本ロール寿司を丸ごと食べられると思う』っていう感じだったから、そのまま食べ進めたっていう。良い気分だったよ。勝てて嬉しかったし」
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「それが水曜日の話ね。木曜日には、友だちのアルマと一緒に(寿司レストランである)Sushi Stopへ行った。金曜日はマネージャーがこっちへ来たから、(同じく寿司レストランである)SUGARFISHへ行ってお寿司を食べた。土曜日は、大学時代の友人が遊びに来て、キャッシュというお店へ行って、お寿司を食べた。それから日曜日には、自分でサーモンのお寿司を作ったの。だから5日連続でお寿司を食べていることになるかな(笑)。それでも全然飽きてないよ! お寿司は大好物なの。特にアヒツナ(マグロ)が大好き」
日本に来ることができるようになったら、どんなことがしたいですか?
「ショッピングに行きたいし、お寿司を食べたい。それからファンのみんなをハグして、サポートしてくれていることへの感謝を会って直接伝えたい。オンラインでみんなと話すのも楽しいけど、直接みんなと会って、ショウでみんなの前で歌うことを楽しみにしてる」
最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。
「いつもサポートしてくれてありがとう。掛け替えのない存在だと思ってる。みんなには感謝しているし、直接あって、早くみんなにハグしたいよ。安全に行けるようになったら、すぐに日本に行くからね。楽しみ!」
セイレム・イリース
デビューEP『(L)only Child(ロンリー・チャイルド)』
配信中
(フロントロウ編集部)