人間の暮らす場所から木が消えている、今こそ緑化都市を
森林伐採というと、畜産など産業のための大規模な森林伐採にスポットライトが当てられることが多いけれど、家や道路、店舗などの土地利用のために都市部や農村部で失われる木もある。アメリカだけでも、都市部と農村部を合わせて、毎年3,600万本の木が人間の構造物のために消え去っているという。
木には都市部の生態系を回復させ、気温を下げて、公害を吸収するという自然環境面での好影響のほか、人間のボディヘルス・メンタルヘルスを向上したり、自分の住んでいる物件の価値を上げたりするといったプラスがある。
“こんな街だったらかっこいい”と想像して構想される多くのSF作品で描かれる未来都市は、森の中にビルや交通機関が建つような、緑の多い都市。そんな“未来都市”は、もう現実のものになろうとしている。
メキシコのカンクンでは、建築家のステファノ・ボエリがデザインを主導するSmart Forest Cityの構想が進行中。557ヘクタール中362ヘクタールが緑となるというこの都市は、13万人の人間が350種の木が共存するという。
カンクン(メキシコ)
バーティカル・フォレスト(垂直の森)という考え
エリアが限られている都市や、たくさんの人が住める大型ビルを建設したい場合は、バーティカル・フォレスト(垂直の森)というやり方も人気を博している。
ミラノ(イタリア)
バーティカル・フォレストは、ビルの壁面を緑化して、垂直(バーティカル)な森を作る行為。広大な土地を確保することなく、大都会の真ん中に突然森を出現させて、環境や生物多様性の再生に貢献できるこのやり方は、カンクンのSmart Forest Cityを指揮するイタリアの建築家ステファノ・ボエリが提唱して、各国に広がりを見せている。
鎮江市(中国)
マドリード(スペイン)
ロッテルダム(オランダ)
プラート(イタリア)
セブ(フィリピン)
都市の緑化を進めるカナメは、地域のリーダーたちのアクション。そしてそのリーダーたちを決めて行動を後押しするのは、有権者である市民たち。5年後、10年後、さらには子供たちが大人になった時、部屋の窓からどんな景色が見たいか? 世界の例を参考に、人にも地球にも優しい都市づくりを全員が考えていきたい。(フロントロウ編集部)