2021年のアカデミー賞でイスラム教徒として史上初めて主演男優賞にノミネートされたリズ・アーメッドが依頼した、映画の中で描かれるイスラム教徒のステレオタイプについてのレポートが完成した。(フロントロウ編集部)

イスラム教徒のイギリス人俳優、リズ・アーメッド

 リズ・アーメッドは、映画『ナイトクローラー』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などへの出演で知られるイギリス人俳優。彼は2021年、映画『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』でイスラム教徒として初めてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。

 そんな彼が支援した南カリフォルニア大学の研究チームによって、映画の中で描かれるイスラム教徒についての調査をまとめたレポートが発表された。リズは、イスラム教徒が映画に登場することは滅多になく、もし登場したとしても、ステレオタイプのテロリストとして描かれることが多いという状況を「危険な比喩」であると米Varietyで指摘していた。

映画の中で描かれるイスラム教徒

画像: 『ラミー 自分探しの旅』より ©️Hulu

『ラミー 自分探しの旅』より ©️Hulu

 『喪失と悪意:世界のポピュラー映画におけるイスラム教徒の現実(Missing&Maligned:The Reality of Muslims in Popular Global Movies)』と題されたそのレポートでは、2017年から2019年にかけて公開された、米国、英国、オーストラリア、ニュージーランドの人気映画200本を対象に調査が行なわれた。

 その結果、イスラム教徒が主演級の役をを務めたのはたったの6作品のみで、そのうち女性が主演の作品は1作品。また、イスラム教徒のキャラクターが登場する作品は全体の1.6%で、そのうちの30%以上が暴力の加害者で、50パーセント以上が暴力の犠牲者だった。

 さらに、200本の映画の中の9,000ものセリフのうち、イスラム教徒が話すセリフは2%以下で、アニメ映画23本の中にはイスラム教徒は含まれていなかった。

リズ・アーメッド「ショックを受けた」

 リズは米NPRに「厳しい統計データを目の当たりにして、状況のひどさにある種のショックを受けました。イスラム教徒がどのように排除されているか、特に黒人のイスラム教徒や、イスラム教徒の女性がどのように排除されているか、それは本当に衝撃的でした」と語った。

 また、グループの共同創設者兼社長であるカシフ・シェイクは、イスラム教徒のコミュニティは人種的および民族的に多様だが、映画でそれが描かれることはめったにないと語る。「イスラム教徒を常にテロリストとして描いていると、それは(悪い)影響を生み出します」と語るカシフは、「私たちの人間性を奪うのは簡単です…」と続けた。

 カシフのグループは、必ずしもイスラム教徒のポジティブな描写だけを求めているわけではないが、ネガティブな描写に偏っている点を問題視しており、『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』で描かれた、障がいを持つ人やLGBTQ+なども含めて、イスラム教徒の役に多様性を増やすことを提唱しているという。

 映画スタジオ、映画学校、慈善団体が状況改善のために使える資料も含まれている今回の調査に協力したリズは、映画会社に、イスラム教徒のクリエイターと契約して、古い表現を終わりにすることを求めていくという。また、リズと同じく調査に協力した、イスラム教徒のコミュニティ財団Pillars Fundは、イスラム教徒のアーティストに対して新たな奨学金制度の設立を発表した。(フロントロウ編集部)

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