SNSの普及で著名人の炎上が日常の光景となった現代。ハリウッドでも毎週のようにセレブリティの発言や行動が炎上しており、時には本人からの謝罪につながることもある。ただ、その謝罪がさらなる炎上を招くことも少なくない。騒動後に業界やファンから受け入れてもらえるかどうかは、問題となった言動や騒動後の行ないにもよるが、“火に油を注がない”謝罪とはどんなものなのか? セレブリティ文化を10年以上報じてきているフロントロウ編集部が、ハリウッド流の謝り方から解説。(フロントロウ編集部)

2020年のセレブの謝罪、火に油を注いだNGケース

 まずは、謝罪したことが状況をさらに悪くしたケースから検証。

 謝罪するときにやるとほぼ100%炎上するのが、当然と言えるかもしれないが、言い訳をすること。2020年3月にインスタグラム・ライヴで、「例え皆がかかったとしても、まあ、人は死ぬだろうけどさ、もちろんそれは恐ろしいことだけどさ、まあ、避けられないんじゃないかな」と、新型コロナウイルスについて発言して炎上した俳優のヴァネッサ・ハジェンスは、その後、「文脈を切り取られた」とSNSで釈明。しかしこの言葉が“言い訳だ”としてさらなる批判を招いた直後、ヴァネッサはSNSを再び更新。「私の言葉が無神経で、今の国や世界が置かれている状況に全く適していなかったことを理解しました。今回のことは、今まで以上に、自分の言葉が持つ意味に気づかされる経験になりました」と謝罪した。

画像: テレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』などで知られるヴァネッサ・ハジェンズ。

テレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』などで知られるヴァネッサ・ハジェンズ。

 そのほかにセレブリティの謝罪声明でよく使われるものの、批判されやすいのが、“passive voice(受動態)”という表現の仕方。これは例えば、「私はケーキを作った」というところを「ケーキが作られた」と、主語から行為を行なった者を抜いた表現の仕方。

 司会者を務めるトーク番組でセクハラやパワハラが横行していたことが2020年に発覚し、自身も多くの人から横柄な態度が告発されたエレン・デジェネレス謝罪声明では、出だしで、「I learned that things happened here that never should have happened(ここで起こってはならないことが起きていたことを知りました」と、“passive voice(受動態)”を使用。さらに、270人のスタッフを管理することの難しさや、横柄だというウワサの背景にある誤解を説明したこの謝罪の翌日、メディアの見出しには「不誠実」「最悪」といった言葉が並んだ。

画像: パワハラやセクハラが告発されたトーク番組『エレンの部屋』は2022年で放送終了が決定。エレン・デジェネレス本人は、騒動と番組終了に関係はないとしている。

パワハラやセクハラが告発されたトーク番組『エレンの部屋』は2022年で放送終了が決定。エレン・デジェネレス本人は、騒動と番組終了に関係はないとしている。

 “相手のとらえ方”を謝罪声明に入れるのも、さらなる炎上を招く要注意行為。2020年に、ドラマ『glee/グリー』の撮影現場でのひどい態度が当時の共演者から暴露されたリア・ミシェルは、謝罪文で「自分自身のキャストたちに対する行動が、彼らには、どのように受け取られていたかということを見つめ直すきっかけとなるものでした」と、“perceived(受け取られていた)”という言葉を使用。すると、あたかも行動が悪とされたのは相手がそう受け取ったからだと言っているような表現が集中砲火を受けて大炎上。最初の告発を行なった俳優のサマンサ・ウェアも不快感をあらわにした。

画像: ドラマ『glee/グリー』に出演したサマンサ・ウェア(左)の告発を皮切りに、ヘザー・モリスやメリッサ・ブノアなど他の出演者からもサマンサの告発を支持する反応があり、窮地に立たされたリア・ミシェル(右)。

ドラマ『glee/グリー』に出演したサマンサ・ウェア(左)の告発を皮切りに、ヘザー・モリスやメリッサ・ブノアなど他の出演者からもサマンサの告発を支持する反応があり、窮地に立たされたリア・ミシェル(右)。

 また、謝罪声明においてよく聞く、“傷つけるつもりはなかったですが、もしも傷つけてしまっていたのならば申し訳ない”というフレーズ。きちんと謝っているように聞こえるかもしれないが、「もしも(if)」という言葉が入ると高い確率でさらなる炎上を招く。例えば、複数の男性からMeTooされた俳優のケヴィン・スペイシーの「もしも、私が彼の言うような行動をとっていたとしたら、彼に心からの謝罪をしなければなりません」という言い回しにはと大きな批判が出た。

画像: ケヴィン・スペイシーは他にも、謝罪声明をゲイであることをカミングアウトする場として使ったことに対して、論点のすり変えであり、さらにはLGBTQ+コミュニティへの侮辱だとして批判が大きかった。

ケヴィン・スペイシーは他にも、謝罪声明をゲイであることをカミングアウトする場として使ったことに対して、論点のすり変えであり、さらにはLGBTQ+コミュニティへの侮辱だとして批判が大きかった。

 NGなケースを見ていると、そこには共通するのは、自分の責任を100%認めきれていないというところ。では、炎上を招きにくい優等生な謝罪声明とはどんな内容のものなのか?

フロントロウMEMO
謝罪声明と言えば、2017年からはハリウッドでMeTooされた男性からの謝罪声明が多く発表された。そのうち219件を分析したジョージア州立大学法学部による研究『申し訳ありません(申し訳なくありません):#MeTooの弁護を解読』によると、謝罪声明でもっとも顕著に使われていた言葉は「never(決してない)」と「alledge(主張)」。多くの声明で“否定”する言い回しと、告発をあくまで“主張”とする言い方が多かったことが分かった。責任を認め切れていない言い方と言えるが、予想どおり、著名人のMeTooに対する謝罪声明はそのほぼすべてが火に油を注ぐ結果となった。

評価された、ビリー・アイリッシュの謝罪

 最近のなかで謝罪声明が評価されたのが、グラミー賞シンガーのビリー・アイリッシュ

画像: 評価された、ビリー・アイリッシュの謝罪

 ビリーは2021年6月半ば、アジア系に対する差別用語を口ずさむ古い動画がソーシャルメディアで拡散。ビリーが人種差別から環境問題まで社会問題に対して普段から発言していることや、現在交際がウワサされているマシュー・タイラー・ヴォースにも過去のSNS投稿で人種・女性・LGBTQ+差別発言が発覚していたことが合わさり、ツイッターではビリー・アイリッシュという名前がトレンド入りするほど炎上。ファンからも説明を求める声が多くあがり、日本時間2021年6月22日にインスタグラム・ストーリーズに謝罪文を投稿した。

ビリー・アイリッシュ謝罪声明の全文訳

「私はみなさんを愛しています。そして皆さんの多くからこの件について言及するようお願いされてきました。自分の本来の姿ではないレッテルを貼られていることも合わさり、この一件に言及したいと思います。出回っている編集済みのビデオのなかで、13歳か14歳の頃の私が楽曲に登場する言葉を口ずさんでいますが、私は当時、それがアジア系コミュニティの方々に対する蔑称だと理解していませんでした。私は絶句していますし、恥ずかしく思うと同時に、1度でもそのような言葉を口ずさんでしまったことに吐き気を覚えます。それまで、私の周囲にいる家族であの言葉を使ったことがある人はいなかったため、あの言葉を聴いたのはあの曲が初めてでした。私の無知さや幼さを抜きにしても、傷つけてしまったという事実の言い訳にはなりません。そのことについて、申し訳なく思っています。編集済みの別のビデオには、意味のない言葉を喋っている私が映っていますが、あれは私が子供の頃からやっているもので、ペットや友人、家族に対し、ああいう話し方で話してきました。そういう話し方をしたに過ぎず、ただのおふざけであって、誰かや何かしらの言語、アクセント、文化をからかうという意図は一切ありません。私のことを知っている人であれば、私がずっとそういう喋り方をしてきたことを知っています。どのように解釈されたにせよ、私には自分の行動で誰かを傷つけるつもりなど全くなく、それを聞いた人が傷ついてしまうようなレッテルを貼られてしまったことに心を痛めています。私は信念を持っているだけでなく、これまでずっと、自分のプラットフォームをインクルージョンや平等のために使おうと懸命に取り組んできました。私たちは誰もが、会話をし続けなければいけませんし、耳を傾け、学び続ける必要があります。皆さんの声は私に届いていますし、私は皆さんが大好きです。これを読む時間を取っていただき、ありがとうございました」

ハリウッドで“正解”とされる謝罪に不可欠なものとは

 さらなる炎上を招かないセレブリティの謝罪声明には、以下の要素のすべてまたは大半が含まれている。

  • 自分の非を認めている
  • 反省の念を述べている
  • 自身の言動が他人を傷つけたことへの理解を示す
  • 自身の言動の問題点に言及する
  • 傷つけてしまった相手と良好な関係を築き、この一件から成長して前に進みたいという意志表示

 つまり、「申し訳ない」という謝罪の言葉をしっかり述べて、その行為を反省していることを伝え、はっきりと自分の責任を認めて、この状況から学び償う姿勢があることを示す、というのが、ハリウッドで優等生とされる謝罪声明。実際に評価の声が多かったビリーの声明には、これらの要素が含まれている。

 ビリーは、「私の無知さや幼さを抜きにしても、傷つけてしまったという事実の言い訳にはなりません。そのことについて、申し訳なく思っています」という言葉で被害への理解を示して責任を認め謝罪したうえで、「私は絶句していますし、恥ずかしく思うと同時に、1度でもそのような言葉を口ずさんでしまったことに吐き気を覚えます」という言葉で反省の念を述べ、「私たちは誰もが、会話をし続けなければいけませんし、耳を傾け、学び続ける必要があります」という言葉で対話と成長の意思を伺わせた。

 とくに、今回の騒動では動画が収録された時点でビリーが13〜14歳と幼かったため擁護する声があるが、謝罪声明であえてそのことに触れて、それでも「傷つけてしまったという事実の言い訳にはなりません」と、当時の状況などに関係なく傷ついた人がいることを認めて謝罪した点は評価が高い。

画像: ハリウッドで“正解”とされる謝罪に不可欠なものとは

 そしてこれはハリウッド特有かもしれないが、自分の言動により被害を受けた人々を支援するチャリティに寄付したり、当事者と交流できるイベントに参加したり、リハビリ施設に入ったりといった、謝罪後のアクションが声明に組み込まれる場合もある。

ブラックフェイス騒動で出た、2人の司会者の違い

 炎上しやすい謝罪と炎上しにくい謝罪のポイントを紹介したところで、最後に、2020年にジミー・ファロンジミー・キンメルという2人の司会者に起きたブラックフェイス騒動を紹介する。ブラックフェイスとは、非黒人が黒人に扮するために顔を黒塗りすること。差別的な背景があるため、近年はこれをすることはタブーとされている。

画像: 同時期に過去のブラックフェイス騒動が浮上した、ジミー・ファロン(左)とジミー・キンメル(右)

同時期に過去のブラックフェイス騒動が浮上した、ジミー・ファロン(左)とジミー・キンメル(右)

 夜のトーク番組司会者であり、同じジミーという名前を持つファロンとキンメル。そんな2人がそれぞれブラックフェイスでコントをする昔の様子が、2020年に発掘されて炎上。2人とも謝罪するところまでは同じ道を辿ったのだが、キンメルの謝罪だけがさらなる炎上を招く結果になった。

 キンメルは、「私のメイクや言葉で純粋に傷ついたり、不快な思いをされた方にお詫び申し上げます」という言葉で謝罪し、「これらのスケッチの多くは恥ずかしいものです」と自責の念を伝えた一方で、謝罪声明のおよそ3分の1で、今回のブラックフェイス騒動が自分を嫌う層(トランプ支持者)が焚きつけていると主張し、「この話が持ち出されるのはこれで最後ではないでしょうし、きっと私を黙らせるためにまた利用されるでしょう」「抑圧的で人種差別的な政策を進めるために、(この件に対する)怒りを装う人たちからの脅しに黙ってはいません」とコメントした。

 キンメルが言っていることは事実で、このブラックフェイス騒動は、反トランプを掲げるキンメルを批判する恰好の材料としてトランプ支持者らに使われていた。そうは言っても、その場は、ブラックフェイスをしたことで傷つけた人々に謝るための場。米Los Angeles Timesはコラム欄で「ブラックフェイスをしたことについて謝るなら、ブラックフェイスをしたことについて謝ればいい」と辛辣な言葉を送り、キンメル擁護派の反応も冷ややかだった。

 一方のファロンは、ツイッターで、「弁解の余地はありません。この紛れもなく侮辱的な決断をしたことを大変申し訳なく思っており、私にその責任を取らせてくださっている皆さんに感謝しています」と謝罪した後、番組でも謝罪。「恐ろしくて、申し訳なくて、恥ずかしいと言わざるをえません。 私のような白人の男やその他の人たちがやっている最大の犯罪は、沈黙することだと気づきました」としたうえで、黒人差別の話題に触れ、当事者の声を聞くために、当初予定されていたファーストゲストであるレディー・ガガに代わり、NAACP(全米黒人地位向上協会)の代表を招待して対話した。自分の責任をはっきりと認め、自責の念を述べ、被害と問題点を理解していることを示し、対話と成長というアクションを取ったファロンの謝罪は業界では評価された。

 炎上した時には、謝るだけが選択肢ではない。ただ、一度謝ると決めたならばいさぎよく謝るべき、というのが欧米論のよう。アメリカのPR界で権威的な存在である危機管理のプロ、ハワード・ブラグマンは、米Labrea Mediaのコラムでこう書いたことがある。「謝罪とは、あなたが100%悪いということではなく、あなたにその問題を乗り越える決意が100%あることを意味します。そのためには、120%の責任を取ること、つまり『自分を犠牲にすること』が必要なのです」。(フロントロウ編集部)

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