ボディ・オートノミー(からだの自己決定権)って何? 基本的人権なのに、じつはあちこちで侵害されているボディ・オートノミー。性的虐待や性暴力被害の対策や発覚につながるとして、幼い頃から子供たちに教える家庭が増えている。(フロントロウ編集部)

※当初この記事ではボディ・オートノミーを「身体の自主権」としていましたが、UNFPAの日本語訳に合わせて「からだの自己決定権」に変更しました。

ボディ・オートノミーとは What's Body Autonomy?

画像: ボディ・オートノミーとは What's Body Autonomy?

 ボディ・オートノミー(からだの自己決定権)とは、人が外部からの影響や強制を受けることなく、自分の身体に起こることを管理・決定する権利のこと。英語ではほかに、Bodily Autonomy(ボディリー・オートノミー)やBody Integrity(ボディ・インテグリティ)という言い方をすることもある。

 ボディ・オートノミーは基本的人権。しかしながら、じつは多くの場所で侵害されている。レイプや虐待、痴漢、DVなど犯罪とされているものもあるが、処女テストやFGM(女性器切除)など一部の地域で慣習とされていることや、なかには法律がボディ・オートノミーを侵害しているケースもある。

ボディ・オートノミー(からだの自己決定権)が侵害されている事例

画像: ボディ・オートノミー(からだの自己決定権)が侵害されている事例

 すでに挙げた、性暴力身体的暴力処女テストFGM(女性器切除)といったこと以外にも、ボディ・オートノミー(からだの自己決定権)が侵害されているケースはたくさんある。

 いつ・誰と一緒に子供を授かるかを自分で決めることは全員が持つボディ・オートノミー。だからこそ、妊娠の強要はもってのほか、人工妊娠中絶へのアクセスを制限することや、避妊ピルや緊急避妊薬が手に入りにくい状況にすることも、ボディ・オートノミーの侵害にあたる。

画像: ブリトニー・スピアーズは成人後見人制度のもと、子供が欲しいのにIUD(子宮内避妊用具)の装着をやめさせてもらえないことを2021年の裁判で訴えた。もちろんこれは、ボディ・オートノミーの侵害。その後SNSでは、メンタルヘルスの悩みを抱えた人や障がい者から同じような体験談が次々と明かされた。

ブリトニー・スピアーズは成人後見人制度のもと、子供が欲しいのにIUD(子宮内避妊用具)の装着をやめさせてもらえないことを2021年の裁判で訴えた。もちろんこれは、ボディ・オートノミーの侵害。その後SNSでは、メンタルヘルスの悩みを抱えた人や障がい者から同じような体験談が次々と明かされた。

 女性が“性被害を受けるかもしれないからあの道は歩けない”と思うことや、セクシャル・マイノリティの人が道を歩くときに“ハラスメントを受けるかもしれない”と恐れることは、個人の自由な活動を侵害しているため、ボディ・オートノミーの侵害にあたる。

 さらに、人が自分の身体について決定・管理するためには、自分の身体に対する正しい知識を持つことは不可欠。だからこそ、適切な性教育が与えられないこともボディ・オートノミーの侵害にあたる。

 ちなみに、ボディ・オートノミーは全員に与えられる権利ではあるものの、女性の方がより侵害されやすく、UNFPA(国連人口基金)は、「およそ半数の女性が、健康管理や避妊、セックスについて自主的に判断する力を持っていません」としている。

子供にボディ・オートノミー(からだの自己決定権)を教えよう、性被害や虐待対策に

画像: 子供にボディ・オートノミー(からだの自己決定権)を教えよう、性被害や虐待対策に

 子供たちにボディ・オートノミー(からだの自己決定権)という権利、つまり、“自分の身体は100%自分のものであり、自分が不快だと感じることにはNOと言う権利がある”と教えることは、性被害を減らすことや、性的虐待被害の発覚に貢献するとして、欧米を中心に子供との対話に取り入れている親が増えている。

 性的暴行を受けたサバイバーを支援している非営利団体Resilienceは、児童に対する性的虐待を防ぐための取り組みのひとつとしてボディ・オートノミーを子供たちに教えることを挙げており、ボディ・オートノミーを子供たちに教える企画を実施。この企画の最後では、子供たちが、“この感じは嫌だなと思ったらストップと言っていい”や、“相手が不安を感じない距離感は状況によって変わるから触っていいかは同意を受けてからの方が良い”と、自分や相手のボディ・オートノミーを理解して尊重していることがわかる。

Resilienceが公開しているアドバイス

  • 性器も含めて、身体のパーツの正しい名称を教える。
  • 幼い子供には、不快や危険などの言葉の代わりに「ゲゲッな感じ」など簡単な言葉を使うと子供が判断・表現しやすい。
  • 性的・非性的なタッチに対して「悪い・良い」という表現を使うと、性的関係を持つ年齢になったときに「性的なタッチ=悪い」というイメージを持ってしまう可能性があるため、「安全・安全じゃない」という表現を使う。
  • 他人だけでなく知り合いも含めて、相手のタッチが自分を“ゲゲッな感じ”にさせた場合はどんな時でもNOと言う権利があることを教える。
  • 秘密にしなくてはいけないタッチはないから、もしも誰かにそう言われたらそれ事態が“ゲゲッな感じ”だと判断して信頼できる大人に伝えると教える。

※Resilience:https://www.ourresilience.org/what-you-need-to-know/prevent-child-sexual-abuse/

 さらにResilienceの企画の中では、普段から母親に「my vagina, my rules(私のヴァギナ、私のルール)」とボディ・オートノミーについて教わっていた当時4歳の子役が、撮影中にズボンをずらされそうになったときに、「my vagina, my rules」と言ってそれを止めたという経験談が明かされた。その後、「おへその少し下までズボンを下げたいのですがいいですか」「いいですよ」と同意のうえで進めてもらったという。この状況は母親も同伴していた安全なケースだったが、そうではないケースや、性的関係を持つ年齢になった時に、ボディタッチに関してこの姿勢が最初からあることは大きな力となる。

 基本的人権でありながら、侵害されやすいボディ・オートノミー(からだの自己決定権)。SDGs(持続可能な開発目標)の目標5.6(※)では、リプロダクティブ・ヘルスケアに関する意思決定と法律を測定する2つの国際的な指標が認識された。ただ、UNFPAは「これらはまだ出発点に過ぎません」としており、今後もこの権利に対する認識の普及と、国際的な取り組みが求められている。

※SDGs目標5.6.1:性的関係、避妊、リプロダクティブ・ヘルスケアについて、自分で意思決定を行うことのできる15歳~49歳の女性の割合/5.6.2:15歳以上の女性及び男性に対し、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスケア、情報、教育を保障する法律や規定を有する国の数。

(フロントロウ編集部)

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