ビル・コスビー、性暴力事件の有罪判決破棄
ビル・コスビーは、1960年代に女性に薬を飲ませてレイプしたことを告発されたのを皮切りに、合計で60以上の女性から性暴力被害を訴えられたことで知られるコメディアン。女性たちの告発は長い間置き去りにされてきたものの、2015年に米New York Timesが被害者女性35人がイスに座る写真と共に彼の性暴力疑惑を特集。2018年に有罪となり、3〜10年という実刑判決を受けた。
判決は罪の重さに見合わないと反発も強かったなか、今回、米東部ペンシルベニア州最高裁は起訴手続きに不備があったとして有罪判決を破棄してコスビーを釈放した。コスビーを起訴したケビン・スティール地方検事が、前任のブルース・キャスター地方検事が2005年に交わした「起訴しない」という合意に違反したと判断したという。ちなみにこの合意は、書面によるものではなかったとされている。
ツイッターでは怒りの声、女性の訴えはいつ正当に対応されるのか
有罪判決破棄がわかった直後、ツイッターでは「Bill Cosby」がワールドトレンド1位に。セクハラ被害を告発するMeTooというハッシュタグも再び多く使用され、多くの人が今回の判断に怒りや悲しみの声を訴えた。
「60人の勇気ある女性たちに告発されたビル・コスビーの有罪判決が技術的なことのせいで破棄されてしまうなんて、ジェームス・フランコが一生残るトラウマを数億円の“賠償金”で示談(※)できるなんて、茶番です」※同日、複数の人から性被害を訴えられていた俳優のジェームス・フランコが約2億円で示談したことが報じられた。
「もう二度と『あなたは(性被害を)報告したんですか?』なんて言葉聞きたくない。60人の女性がビル・コスビーを告発したうえ、60人の告発者がいても有罪にするのに何年もかかった。そして今では彼は自由の身」―ベストセラー作家兼コメディアンのレーン・ムーア
「今度誰かが『#MeTooは行き過ぎたのでは』と聞いてきたら、60人の女性がビル・コスビーに対して信憑性の高い申し立てをして、こうなったことを思い出してください。私は、あまりにも多くの点で、#MeTooは十分に進んでいないと言いたい」―アン・オリヴァリアス博士
「これだから女性は被害を訴えないんです」―ジャーナリストのE.ジーン・キャロル
「女性とサバイバーのためのMeToo時代に、キャンセル・カルチャーがいかに男性の人生を台無しにしたか、私たちが行きすぎていたかについては、聞きたくありません。今日、コスビーの有罪判決が覆されたというニュースは、私たちが十分に行き過ぎていないことを証明しています。私たちの司法制度は変わらなければなりません」―Time’s Up発起人のひとりである俳優のアンバー・タンブリン
「ビル・コスビーのホラーショーについては、何と言っていいかわかりません。このニュースで間違いなくトラウマになっている被害者の皆さんには本当に申し訳なく思っています。そして、この痛みを深く感じている性的暴行の被害者の皆さんにも申し訳なく思います。不公平だし、動揺させられるもの」―俳優のアリッサ・ミラノ
「数多くの女性をレイプしたビル・コスビーが釈放されました。アリソン・マック(※)は、数え切れないほどの女性の人生を破壊したとして、3年の懲役を言い渡されました。(25歳では足りなかったでしょう)。状況は良くなっているかどうか、もう一度聞いてみてください。状況が変わったかどうか、もう一度聞いてみてください」―俳優のエレン・バーキン ※セックスカルトNXIVMに被害者を加入させるリクルーターなどとして関わり2018年に実刑判決を受けた俳優。
「ビル・コスビーの釈放をお祝いしている奴らはクソバカ野郎どもだ」―ラッパーのキッド・カディ
(フロントロウ編集部)