オリヴィア・ロドリゴが日本時間6月30日にYouTubeにて開催した初のオンラインイベント「サワー・プロム」の模様をレポート。(フロントロウ編集部)

オリヴィア・ロドリゴが「サワー・プロム」を開催

 「オリヴィア、一緒にプロムに行くお相手は決まった?」もしもオリヴィア・ロドリゴが、ホームスクールではなく、実際に高校に通っていたとしたら、きっと同級生の全員からそんな質問をされていたことだろう。アメリカの高校を卒業する時に開催されるプロム・パーティーでは、生徒による投票で「プロム・クイーン」を決めるのが慣習になっているが、オリヴィアはその人気の高さから、どこの高校に通っていたとしてもプロム・クイーンに選ばれていたはず。

 今年6月にホームスクールで高校の課程を終え、「またね、高校!」というコメントと共に、アカデミックドレスと呼ばれるガウンと帽子を着用した写真をインスタグラムに投稿して、高校を卒業したことをファンに報告したオリヴィア。

 そして、高校卒業の報告から間もなくしてオリヴィアから発表されたのが、「サワー・プロム・コンサート・フィルム(SOUR Prom Concert Film)」と銘打ったオンラインイベントの開催だった。このイベントが持つ意味は、大きく分けて2つ。1つは、オリヴィアが特定の誰かとプロムで踊るのではなく、世界中のファンをプロムのパートナーに選んでくれたということ。もう1つは、これがオリヴィアにとって、最初の大規模なライブイベントだったということ。

画像: ©️Olivia Rodrigo/Instagram

©️Olivia Rodrigo/Instagram

 ノミネートされていないにもかかわらず特別に招待され、「drivers license」を披露した今年5月のBRITアワードでのスペシャルなパフォーマンスなど、授賞式やテレビ番組などで1〜2曲をパフォーマンスすることはあったものの、新型コロナウイルス禍でのデビューとあってまだツアーなどは実現しておらず、まとまった楽曲数をステージで披露したことはなかったため、オンラインではあるが、「サワー・プロム」が事実上、オリヴィアにとっての初めての“公演”となった。

 開演を30分後に控え、「サワー・プロム」は、オリヴィアがファンから寄せられた質問に答えるというプレ・イベントからスタートしたのだが、オリヴィアはそのなかで、イベントの開催を決めた理由について次のように語っている。「ファンのために楽しいことがしたかったんだよね。私はホームスクールだったからプロムに行ったことがなくて。だからみんなで開催出来たら良いなって思ったの。特に今年はコロナでプロムに行けなかった人も多いと思うから、私からのお祝いみたいになったと思う」。

オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

 本編は、プロム会場に向かうため、オリヴィアが迎えに来たリムジンに乗り込むというシーンからスタートした。たびたびオリヴィアがモチーフとして使ってきた蝶をイメージさせるような、鮮やかな青いドレスを身にまとったオリヴィアが車内で最初に披露したのは、セカンドシングル「deja vu」と、「happier」のマッシュアップ。

画像1: オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

 これまでの失恋で経験してきた心情を反映したような、ハッキリとしない風景を走るリムジンのなかで、オリヴィアが、「私とも同じことしたよって、いつになったら教えてあげるの?」と新しい恋人と一緒になった元カレに向けて皮肉混じりに歌う「deja vu」と、「誰か良い人を見つけてね、私よりも良くはない人を/あなたには幸せになってほしいけど、昔よりも幸せにはならないで」と、今も大切に思う元カレへの複雑な心情を歌う「happier」を交互に披露した後で、リムジンはプロムの会場へと到着した。

 そして、そんな煮え切らない感情を抱えたまま会場に着いたオリヴィアは、先に会場に到着していた同級生たちと挨拶を交わして、アルバム『サワー』の曲順と同じように、「brutal」からプロムをスタート。この曲もまた、自身の心情を忠実に音楽に反映してきたオリヴィアが、「もう17歳にはウンザリ/私のティーンエイジ・ドリームはどこ?/もし誰かがまた私に『若い時間を楽しんで』って言ったら/泣いちゃうと思う」と、今年2月に18歳の誕生日を迎えた自身が抱える不安を素直に歌った1曲となっている。

画像2: オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

 激しいギターのリフが印象的なこの曲を、相反するような煌びやかなプロムのBGMへと違和感なく変えてみせたオリヴィア。このパフォーマンスで改めて証明されたのは、「drivers license」で失恋の感情を美しいバラードへと変えたオリヴィアが、ティーンエイジャーが抱える怒りに近い葛藤をも、音楽に昇華できる才能の持ち主だということ。

 続けて披露された、コーラスが印象的なバラード「traitor」でも、オリヴィアはそのパフォーマーとしての幅広さを証明。バックダンサーを従えたオリヴィアは、倒れそうになりながらもダンサーたちがハグをして支えるという、メンタルヘルスと周囲からのサポートを表現したような振り付けを披露しながらしっとりと歌い上げ、ロックなナンバーからバラードへと、スムーズに移行してみせる。

 そして次の「jealousy, jealousy」では一転、再びバンドのヘヴィーな演奏にフォーカスが当たった一方で、映像は、オリヴィアにのみフォーカスがあたるというカメラワークに。それは、他人との比較で自己と向き合い、自分に無いものを羨むジェラシー(嫉妬)がテーマになったこの曲ならではの演出となっていて、パフォーマンスの後半には、オリヴィアが持つ名声や才能を羨む同級生たちが、寄ってたかってオリヴィアを手繰り寄せようとするという演出も。

画像3: オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

 そんな自身を羨む同級生たちから逃げるように、オリヴィアは写真を現像する暗室へと1人で入り、「サワー・プロム」のキャストやクルーたちのプロムでの思い出写真に囲まれながら、「enough for you」をギターの弾き語りで披露。ここでも、激しめの楽曲とバラードが交互にパフォーマンスされる。

 続けて、暗室から出たオリヴィアはジャケットを羽織ると、同級生たちに拍手で見送られつつ、自身を一躍スターダムにのし上げた「drivers license」をパフォーマンス。世界中の音楽ファンが今年最も聴いた1曲がここでは、点滅する照明に照らされながら、ダンサーたちをバックに披露される。三角関係の噂も手伝い、失恋をテーマにした歌詞が注目された「drivers license」だが、ここまでプロムでずっと特定の誰とも踊らずに楽曲を披露してきたオリヴィアによる今回のパフォーマンスからは、失恋の悲しみよりもむしろ、傷心を経ての自立心のような、楽曲が持っている力強さがより伝わってくるものとなっている。

画像4: オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

 今回のプロムで、南カリフォルニア大学のマーチングバンドを従え、主役のニニを演じる『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』を思い起こさせるような演出で最後に披露されたのは、ポップパンクなサウンドでも注目を集めたサードシングル「good 4 u」。ミュージックビデオと同様に、チアリーダーたちも登場し、観客席にいる同級生たちに見守られながら披露されたこのパフォーマンスは、オリヴィアから届けられた、高校を卒業した同世代のファンや、自身のライブを待ちわびていたファンへの祝福の花束のようだった。

画像5: オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

 「good 4 u」のパフォーマンスを終えると、親友であるシンガーソングライターのコナン・グレイや、ディズニー・チャンネル『やりすぎ配信! ビザードバーク』で共演したマディソン・フーら友人たちと肩を組み、ホッとしたような表情を浮かべて競技場を後にしたオリヴィア。

 最後、カメラを振り返って舌を出してみせた表情からも、オリヴィアがまだ高校を卒業したばかりの18歳だということを改めて実感させられるが、今回の「サワー・プロム」をもってオリヴィアが示したのは、等身大の感情を音楽へと変えられる才能があるのはもちろん、それをそのままパフォーマンスでも体現できる才能も持っているということ。

 オリヴィアはプロムに先駆けたQ&Aのなかで、「高校を卒業してどんな気分?」という質問に次のように回答している。「言葉では表せないくらい安心してる!ずっと仕事をしながら学校の勉強もしてたから、今は音楽に集中できてすごく嬉しい」。パフォーマンスのみに集中できるようになったオリヴィアが、次はどんなものを届けてくれるのだろうか? 将来が楽しみでならない。

画像: プロムに駆けつけた友人たちとの記念ショット。 (左から)リディア・ナイト、コナン・グレイ、オリヴィア・ロドリゴ、アイリス・スコット、マディソン・フー。

プロムに駆けつけた友人たちとの記念ショット。
(左から)リディア・ナイト、コナン・グレイ、オリヴィア・ロドリゴ、アイリス・スコット、マディソン・フー。

 オリヴィア・ロドリゴによる「サワー・プロム」の視聴はこちらから。

アルバム情報

オリヴィア・ロドリゴ
最新アルバム『サワー』発売中

画像6: オリヴィア・ロドリゴの「サワー・プロム」をレポート

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