俳優のスカーレット・ヨハンソンが映画『ブラック・ウィドウ』のストリーミング配信をめぐり、ウォルト・ディズニー・カンパニーを相手取って訴訟を起こしたことがわかった。(フロントロウ編集部)

スカーレット・ヨハンソン、ディズニーの契約違反を指摘し訴えを起こす

 2009年以降ウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下となったマーベル・スタジオ制作の数々の作品で人気キャラクターの1人であるブラック・ウィドウを演じ、7月8日には同キャラクターを主人公とした主演映画『ブラック・ウィドウ』が劇場公開されたスカーレット・ヨハンが、同作を配給するディズニーを相手取り、7月29日付でロサンゼルス上位裁判所に訴えを起こしたことがわかった。

 『ブラック・ウィドウ』は新型コロナウイルスの影響により延期に延期を重ね、約1年遅れて劇場公開。翌日にはディズニーの定額制動画配信サービス、ディズニープラス(Disney+)のプレミアアクセスでの配信がスタートした。

 スカーレットの出演報酬は、おもに劇場公開の成績に基づいて決まる契約だったというが、スカーレット側は劇場公開とほぼ同時にストリーミング配信が開始されたことにより興行収入に大きく影響が出たと主張。ディズニーおよびマーベル・エンターテイメントとの当初の契約では、『ブラック・ウィドウ』は劇場公開のみとなるとされており、契約違反だと訴えている。

 米The Wall Street Journalが入手した訴状の中で、スカーレットの弁護を担当するジョン・ベルリンスキー弁護士は「ディズニーは正当な理由もなく意図的にマーベルの契約違反を誘導し、ヨハンソン氏がマーベルとの交渉において自身が得ることができる利益に気づくことを阻止しました」と主張。

 劇場公開とほぼ同時にストリーミング配信が開始することで自身にもたらされる不利益について知ったスカーレットは、訴訟を起こす前に代理人を通じてディズニーとマーベルに対して問題提起したものの、両者からは回答を得られなかったという。


スカーレットの損失は約54億

 『ブラック・ウィドウ』の公開から3週間での全米興行収入は1.5億ドル。これに対し、ディズニープラスでの配信では初週末だけで6000万ドルを稼ぎ出した。ディズニープラスでの同時配信によりスカーレットが被った損失は5000万ドル、日本円にして約54億円とも言われている。

画像1: スカーレットの損失は約54億

 ベルリンスキー弁護士は、米CNBCとのメールインタビューで「ディズニーがパンデミックを口実にして、定期会員を増やしたり会社の株価を上昇させる目的で『ブラック・ウィドウ』のような作品をディズニープラスで同時配信しているというのは周知の事実です。しかし、短絡的な戦略のために映画の成功に貢献したアーティストたちとの契約を無視し、権利を踏みにじるというのはルール違反。私たちは、その事について法廷で証明してみせます」とコメント。

 さらに「ハリウッドスターたちがディズニーに対して声を上げるのは今回が最後ではないでしょう。同社がどんな方法で取り繕ったとしても、契約を守る法的義務は避けられません」と続けている。

 劇場公開からほどなくしてストリーミング配信が始まったことで、配給側とキャストや制作陣が揉めたのは今回が初めてではなく、2020年12月に劇場公開および米HBOMaxで配信されたDCEU映画『ワンダーウーマン1984』では、主演のガル・ガドットと監督のパティ・ジェンキンスがそれぞれ損失の“穴埋め”として1000万ドル(約10億円)ずつボーナスを受け取ったと報じられている。

画像2: スカーレットの損失は約54億

 またユニバーサル・ピクチャーズが配給する3Dアニメ映画『トロールズ ミュージック★パワー』に声の出演をしたシンガーのジャスティン・ティンバーレイクと俳優のアナ・ケンドリックは、同作が劇場公開と同時にオンデマンド配信されたことを受け、ボーナスの支給を求めていると報じられている。

画像3: スカーレットの損失は約54億

2021年秋以降のディズニー映画は劇場公開オンリーに?

 スカーレット側の訴えに対し、現時点でディズニーとマーベルは反応を見せていない。

 劇場公開とほぼ同時にディズニープラスでのストリーミングを開始するという戦略について、ディズニー側はパンデミック禍の一時的な対応策だと説明しており、7月29日に劇場で封切られ、その翌日にディズニープラスでのプレミアアクセス配信がスタートした映画『ジャングル・クルーズ』以降に公開される2021年内の作品に関しては劇場公開のみを予定していると発表している。(フロントロウ編集部)

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