名作SFの『ターミネーター2』
2021年になっても色あせないSF映画の名作『ターミネーター2』。アーノルド・シュワルツェネッガーが演じるT-800と、エドワード・ファーロングが演じるジョン・コナー、そしてロバート・パトリックが演じるT-1000の共演は、ファンの心を惹きつけた。
一方で、脇役たちの存在も物語を盛り上げたことは確実。
ジョンの里親であるジャネルに擬態したT-1000が、ジョンとの電話中に、彼女の夫であるトッドを片手で殺すシーンは、ほんの3分弱だが、『ターミネーター2』の名シーンの1つとなっている。
そしてこの短いシーンが名シーンとして語り継がれることになったのには、様々な人の努力があった。
ザンダー・バークレーの努力と苦労
米The Ringerのインタビューで当時を振り返ったアーノルドは、特殊メイクを担当した故スタン・ウィンストンは「天才だった」と語り、ジャネルを演じたジェニット・ゴールドスタインは、「スタッフは私の腕の模型を作って、小さなそばかすから剣の部分までペイントで肌を描いて、そしてそれをザンダーの口の中に設置した」と、その制作過程を明かす。
しかし、じつはあのシーンでの最大の功労者の1人は、トッドを演じたザンダー・バークレーだったよう。
『ターミネーター2』について、「どれだけ細かなところまで気を配られていたかを考えると、目を見張るものになるのは分かっていたよ。これまでに誰も見たことのないようなね」と話し、そのデザインに敬意を示したザンダーだったが、続けて、あの少しのシーンのためにどれだけの時間と労力を割いたかを明かした。
「撮影の前に2週間、剣を飲み込む練習をしなくてはいけなかった。アルミで出来た刃でね。あと、刃が出し入れ出来る剣を頭の後ろへ飛び出させるために、クリエイターたちは僕の頭の型を取った。でも、刃が僕の頭の後ろに通り抜けているように見せるためには、刃は僕の口の奥まで入らないといけなかった。
3つの異なる刃が僕の喉にあったんだよ。1つは真っ直ぐなもので、端っこの方に持ち手がついていたからスタッフがそれを持って、僕に突き刺したままパン(※1)していた。そしてスタッフが僕から刃を抜いたら、僕は床に倒れるんたけど、その体勢で4、5時間いなきゃいけなかったんだ。動かずに朝の4時まで。身体は床に横になっていて、そこは牛乳と血の湖だった。ジム(※2)は個人的にめぐるましく動き回っていた。一連のシーンで、もし僕の髪の毛が一本でも動いたら、それは撮影を破滅させると、彼は非常に分かりやすく力説してきた。あのあと数日間は歩けなかったよ、でも彼は、僕の努力に(シャンパンの)クリスタルのボトルを送ってくれたよ」
※1:カメラの撮影方向を水平(左右)に動かすこと。
※2:ジェームズ・キャメロン監督のこと。
なんとザンダーはあのシーンのために2週間前から準備を始め、撮影では朝の4時まで5時間も横になったまま動いてはいけないという過酷な経験をしていた!
神は細部に宿る、とはよく言ったもの。『ターミネーター2』の完成度は、その2時間半の映像のすべてで一切の手抜きをしなかったからこそ達成されたもののよう。
(フロントロウ編集部)