イギリスのバンドであるマッシヴ・アタックが、気候変動に対応するために環境に優しいツアーを行なう必要があると提言。イギリス政府にも協力を呼びかけた。(フロントロウ編集部)

マッシヴ・アタックが環境に優しいツアーを行なうためのレポートを発表

 3Dことロバート・デル・ナジャとダディ・Gことグラント・マーシャルからなるイギリスの音楽ユニットであるマッシヴ・アタックが英現地時間9月6日、『Roadmap to Super Low Carbon Live Music』と題した、環境に優しいツアーを行なうための研究をまとめたレポートを発表した。

画像: マッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャ。

マッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャ。

 このレポートは、イギリスのマンチェスター大学の気候変動研究機関と共同でなされた研究をまとめたもので、気候変動への影響を最小限に抑えるために、アーティストがツアーを行なう上で、アーティスト自身やプロモーター、オーディエンスらに求める行動指針がまとめられている。

 英BBCはレポートでの要点を次のようにまとめている。

・移動や輸送を最小限に留めたツアールートを計画する
・チケットの価格に、公共機関での移動を含める
・会場では太陽光パネルを準備するなど、再生可能エネルギーを生成する
・ギグやコンサートの会場では再生可能エネルギーを使用する
・エネルギー効率の良い照明や音響機器を使用する
・会場間の移動には、電気自動車や電車を利用する
・音楽会場での駐輪場を充実させる
・飛行機での移動を避け、プライベートジェットをなくす
・エネルギーの使用量を削減する取り組みを行なっている会場でパフォーマンスする
・公共交通機関での来場を選択したファンにインセンティブを与える

マッシヴ・アタックが政府に協力を呼びかけ

 マッシヴ・アタックのロバート・デル・ナジャは、地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」で定められた二酸化炭素の削減量を実現するために、ライブ産業としても力を入れて取り組む必要があるとしつつも、現時点ではイギリス政府からの協力は得られていないと英The Guardianとのインタビューで苦言を呈している。

画像: マッシヴ・アタックが政府に協力を呼びかけ

 「特にEU離脱以降は、音楽ライブ産業が国家のアイデンティティや権威を保つ上で重要な役割を担っています。純粋にワールドクラスだと言える数少ない分野の1つであり、報道によれば、年間に46億ポンド(約7,000億円)を生み出し、何千人もの専任の雇用も生み出しているなど、社会や経済への莫大な価値を持っています」と、ロバートはライブ産業が現在のイギリスの経済に与えている影響について英The Guardianに語っている。

 「しかしながら、(パリ協定に)適合するために必要な適応率を支援するための政府の計画はどこでしょうか?? 存在しているようには思えません。(報告書の)データは驚くべきものではなく、欠けているのは戦略なのです」。

 マッシヴ・アタックと共に研究を行なったカーリー・マクラクラン教授は英The Guardianに次のように述べている。「このロードマップが、必要とされているアクションの規模や、ツアーにおける様々な要素を横断するマップをどう描くかを概要として示すことで、変化の一端を担えたらと思っています」。

 「気候変動に関してパリ協定と足並みを揃えて排出量を削減するためには、パンデミックが引き起こした巨大な課題から業界が再浮上していくにあたり、ツアーの慣例を異なる手法で再構築する必要があるのです」とマクラクラン教授は続け、フェスティバルやライブなどの音楽イベントが復活しつつあるなかで、長期的な目標として気候変動にどう向き合っていくかについても本格的に検討を始めていく必要があると提言した。(フロントロウ編集部)

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