『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が間もなく公開
2021年10月1日、人気スパイ映画『007』シリーズの25作目として話題を集める映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が公開される。本作は、過去5作にわたって主演のジェームズ・ボンドを演じたダニエル・クレイグの卒業作。
そんな記念すべき作品の公開に先駆け、米Apple TV+では『007』に関する特別番組が配信された。その中で、本シリーズの主人公である「ジェームズ・ボンド」というキャラクターの多様性について、関係者がコメントした。
物議を醸した『007 スカイフォール』のシーン
ジェームズ・ボンドといったら、彼と恋に落ちる「ボンドガール」というキャラクターの存在からも知られるように、“女好き”という印象を持つファンも少なくないはず。
そんなボンドの描写で物議を醸したのが、2012年に公開された『スカイフォール』における、悪役ラウル・シルヴァとの駆け引きのシーン。シルヴァは椅子に縛られたボンドの膝や身体をまるで愛撫するかのように撫で上げ、会話の中でボンドがLGBTQ+である可能性を示唆した。
番組の中では、父親から映画『007』シリーズのプロデューサーを受け継ぎ、1995年の『007 ゴールデンアイ』以降全ての作品にクレジットされているバーバラ・ブロッコリが、このシーンを公開するにあたって、映画配給会社の重役からセリフをカットするように言われたことを明かした。
「スタジオからあのセリフをカットするように言われたのを覚えているけど、私たちはノー、ノー、ノーと言った。我々は抵抗したの」と言ったバーバラは、「プレミアの夜、あのセリフで会場全体が盛り上がったのを覚えている。スタジオの重役を見て、『ほら、言ったでしょう』と言ったのを覚えている」と続けた。
さらに、同作の監督で映画『1917 命をかけた伝令』や『アメリカン・ビューティー』などで知られるサム・メンデスは、ボンドが“女たらし”だと世間的には言われているにもかかわらず、「多くのボンド映画では同性愛の気配が強くある」と付け加えた。
『007』のジェームズ・ボンドのセクシュアリティ
『007 スカイフォール』の脚本を手がけ、映画『ラスト サムライ』や『エイリアン: コヴェナント』などの脚本でも知られるジョン・ローガンは、2012年のインタビューでボンドがLGBTQ+である可能性が示唆されたことについて、「私がゲイだからだと言う人もいるが、それは全く違う」と語った。
「サム(・メンデス)と私は議論した。『007は殺しの番号』でも『007/ゴールドフィンガー』でも何でもボンドが悪役と対決するシーンはたくさんあり、猫がネズミを追うようにボンドを怖がらせる方法はたくさんある。その中で我々は、本当に観客の居心地を悪くさせることは性的な威嚇であると考えた。根底に密かに存在するホモエロティックさを使ったんだ」
あのシーンについては、ボンド役のダニエル、シルヴァ役のハビエル・バルデムも公開当時にそれぞれ行なわれたインタビューでコメントしている。
「僕は世界を性的に分けて見ていない」と言ったダニエルは「僕はあのシーンが大好き。笑ってしまうよ。あなたも笑ってくれると嬉しいな」と語り、シルヴァがゲイであるという憶測に対し「僕は、彼は誰とでもヤると思う」と続けた。
シルヴァ役のハビエルは、自分のキャラクターの目的は出会った人々に「不快な状況」を作り出すことだと言い、「相手がジェームズ・ボンドでさえどうやってそこから抜け出せばいいのかわからないような、非常に不快な状況に追い込むことが目的だった」と語っている。
『007』ジェームズ・ボンドの未来
ダニエルがジェームズ・ボンド役を卒業するにあたり、次のボンド役を務める俳優が誰になるのかという話題に注目が集まっている。
次のボンドは女性なのではないか、「黒人俳優を起用する可能性もある」など、様々な憶測が飛び交う中、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』などでボンド役を務めたピアース・ブロスナンは、2015年に行なわれた英The Guardianとのインタビューでゲイの007のアイディアを支持すると語った。
ピアースは「確かに、(007がゲイであって)なぜいけないのか」と述べた後、「実際のところ、どうやってうまくやるのかはわからない。バーバラが生きている間に、ゲイのボンドが登場することを許すとは思えない。でも、それはそれで面白いと思うよ」と自身の考えを述べている。
もしかしたら、出演者や関係者の意見の中から、今後多様な007の姿が描かれていくかもしれない。
ダニエルが最後のジェームズ・ボンドを演じる映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、2021年10月1日に日本公開となる。(フロントロウ編集部)