コールドプレイが環境に優しいワールドツアーを発表
10月15日に通算9作目となるニューアルバム『Music Of The Spheres(ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ)』をリリースしたコールドプレイが、同作を引っ下げた2022年のワールドツアーの日程を発表した。
現時点で発表されているのは、アメリカ大陸やヨーロッパの日程で、2022年3月18日にコスタリカのサンホセ公演からスタートすることが明らかになっている。日本を含むアジアやオセアニアでの日程は発表されていないものの、コールドプレイは「さらなる日程もすぐに発表されます」としており、今後の発表を待ちたい。
コールドプレイのファンにとって、今回のワールドツアーはサプライズとも言えるものとなっていて、コールドプレイは2019年、環境に優しい方法を見つけるまではツアーを行わないと宣言。もちろん、新型コロナウイルスという不測の事態も考慮に入れる必要はあるが、2019年にリリースした前作『Everyday Life(エヴリデイ・ライフ)』の時にはツアーを行なっておらず、彼らにとっての最後のツアーは、2017年11月に締めくくられた『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』のワールドツアーとなっていた。
環境に優しいツアーはどうやって実現する?
ツアーを発表するにあたり、コールドプレイは声明で「地球は気候の危機に直面しています。このツアーを可能な限り持続可能なものとし、同じくらい重要なこととして、このツアーの可能性を活用して状況を前に進めるために、この2年の間、我々は環境の専門家に意見を伺ってきました。完璧に正しくはできませんが、できる限りのことに取り組み、我々の学びを共有していくことにコミットしていきます」と述べている。
バンドは今回のツアーについて、2016年〜2017年に行なった前回のツアー『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』ツアーの時と比較して、二酸化炭素の排出量を50%削減すると宣誓しているほか、会場では、ほとんどすべての動力を「再生可能エネルギー」でまかなうとしている。
コールドプレイが掲げている施策の一部は以下の通り。
<キネティック(動力)フロアを会場に設置する>
ライブ中の観客の動きでエネルギーを生成できるように、会場に発電効果のあるキネティック・フロアを設置。また、会場には発電できる自転車を設置し、観客が任意で電力を発電できるようにする。
<ソーラーパネルを至るところに設置する>
会場のフロアや屋根、コンコース、ステージ上などにソーラーパネルを設置。太陽光で発電した電気で、公演に必要なバッテリーの充電を行なう。
<再生可能のバイオ燃料を使用する>
パーム油(※)を一切使用せず、使用済みの調理用油を再利用した水素化植物油を使用。これにより、従来の燃料と比較して二酸化炭素の排出量を最大で90%削減。バスやトラックなど、使用できる場面ではできる限りこの燃料を使用する。
※世界自然保護基金(WWF)によると、日本で使用される植物油のうち、菜種油に次いで2番目に多く消費され、 国民1人あたり年に4~5リットルも消費していることになるというパーム油。日本や世界で幅広く消費されている一方で、長年、東南アジアの熱帯林破壊をもたらす主因として指摘されてきており、自然環境や野生動物への悪影響のほか、生産に伴う人権侵害などが問題視されている。
<ステージも再利用可能な材料で>
竹やリサイクルされた鉄など、再利用可能な材料でステージを組み立てる。
<リストバンドも再利用>
コールドプレイのライブ演出において鍵を握っているアイテムである、観客1人1人に配られるリストバンドにも工夫が。100%、堆肥化可能かつ植物由来の材料で作られ、公演ごとにリストバンドを回収。殺菌消毒をした上で、再利用する。これにより、生産量を80%削減する。
<飛行機での移動を最小限に>
ワールドツアーなので飛行機での移動が避けられないケースもあるが、必要最低限の利用に留める。再生可能な燃料を使用して、持続可能な航空燃料のサーチャージを支払う。
<低炭素な移動手段で会場を訪れたファンにはサービス>
低炭素な移動手段で来場したことをアプリで証明したファンには、会場で割引サービス。ファンの移動方法をアプリを通じてモニタリングし、公演に関連した移動で排出された二酸化炭素排出量を算出する。
<チケットの売り上げごとに植樹>
チケットが1枚売れるごとに1本、植樹する。
そのほかの取り組みについては、コールドプレイの公式サイトでまとめられている。
気候変動への対策として、音楽ライブもできる限り環境に優しい方法で行なうことが求められているなか、コールドプレイのようなワールドクラスのバンドが率先してこのような施策に取り組んでいくことは、大きな意味を持っている。(フロントロウ編集部)