エド・シーランが活動休止明け初となるニューアルバム『=(イコールズ)』をついにリリースした。エドが「どうか、一度は順番通りに聴いて欲しい」と語る本作の収録曲を、エドのリクエスト通り、順番に全曲をレビューしながら紐解いていく。(フロントロウ編集部)

エド・シーランが勧める、『=』のベストの聴き方とは?

 「Bad Habits」に「Shivers」、それからソングライティングを手がけたBTSの「Permission to Dance」。母国のイギリスであれ、アメリカであれ、日本であれ、チャートを見れば、およそ1年半も表舞台から離れていたことなど忘れてしまうほど、エドの楽曲たちがランクインしている。

 驚異的なロングヒットとなった代表曲「Shape Of You」を筆頭に、これまでシングル単位で次々とヒットを生み出してきたエドだが、2021年10月29日についにリリースしたカムバックアルバム『=(イコールズ)』については、まずは“アルバム単位”“曲順通り”に聴いてほしいと語る。

画像: 東京での思い出も!エド・シーランの30年の人生が詰まった最新作『=』、ベストな聴き方を教えます【全曲レビュー】

「どうか、一度は順番通りに聴いて欲しい。それだけが僕からのただ一つのお願い。一度聴いてもらえたら、後は好きに聴いてもらって構わない。楽曲をプレイリストに入れたり、アルバムをシャッフルで聴いたり、好きなように聴いて。ただ、少なくとも一度は、意図された聴き方で聴いてもらいたいんだ」

『=』収録曲を順番に全曲レビュー!

「Tides(タイズ)」

 アルバムの始まりを告げるのは、日本語で“潮流”を意味するタイトルが付けられた「Tides」。エドは「時間がピタッと止まるんだ/きみを抱いていると、必ず/そして人生が、人生が潮の流れを変えていく」と歌いながら、2020年にパートナーのチェリー・シーボーンとの間にもうけたライラ・アンタークティカが、いかに自分の人生を大きく変えたかを振り返る。

成長して僕も今では父親
何もかも変わった一方で、相変わらずなところもある
死を恐れたことはなかった僕だけど
今は見たいと思う まだ起きていないあれこれを

「Shivers(シヴァーズ)」

 ライラ・アンタークティカの誕生で人生の潮流が変わったと歌うエドが2曲目に収録したセカンドシングル「Shivers」で振り返るのは、2015年に交際をスタートさせた、高校の後輩でもあるパートナーのチェリー・シーボーンとの思い出。「きみの目にキスしたい/その笑顔を飲んでしまいたい」と、アルバムのなかでも最も大胆なフレーズに数えられる歌詞が歌われるこの楽曲で、エドは溢れる思いを次のように歌い上げる。

画像: 2015年、交際が報じられるようになった頃のエド・シーランとチェリー・シーボーン。

2015年、交際が報じられるようになった頃のエド・シーランとチェリー・シーボーン。

こんなに思い切り愛せる自分を、今まで知らなかった
Oh 満足を知らない僕
こんな気持ちにさせたのは、きみ

「First Times(ファースト・タイムズ)」

 「感じが違うんだろうと思ってた、ウェンブリーで演奏するのって/8万人が一緒に歌ってくれるのって/それをずっと目指してきたんだし、夢なんだから」という歌詞から始まる「First Times」。

 ループペダルを巧みに操りながら、大観衆を相手にワンマンでステージに立って見せるエドは、今やパフォーマーとしても世界トップレベルの実力者となった。エドは2019年8月26日に故郷イングランド・サフォーク州の街イプスウィッチで行なった『ディバイド』ツアーの最終公演を最後に、およそ1年半の活動休止に入ったが、2017年3月のイタリア・トリノでの初演を皮切りに、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニア、南米と、世界46カ国175都市をまわったこのツアーは、7億3,670ドル(約810億円)の興行収入を記録して、歴代で最も売り上げたツアーに。

 このツアー中には、およそ8万人を収録するイングランドのウェンブリー・スタジアムでの4日間にわたる公演も成功させたエドだが、それでも、チェリーとの“初めての思い出たち”には敵わないと「First Times」で歌う。

画像: 「First Times(ファースト・タイムズ)」

おかしなものだよね、人生で一番シンプルなことが人を大人にするなんて
通り過ぎていく、ちょっとした瞬間の積み重ね
でも、僕は忘れない

初めてのキス、初めての夜、初めてきみを泣かせた曲
初めての酒、赤ワイン、場所はブルックリンの階段
初めての喧嘩の感触は今も残っている

「Bad Habits(バッド・ハビッツ)」

 全英シングルチャートで11週にわたって首位を獲得し、エドがいかにファンから待ち侘びられていたかを証明することとなったファーストシングル「Bad Habits」で歌われるのは、ポップスターとしてのかつての奔放なライフスタイル

さんざん遠回りして
火傷して、楽しくなくなって

僕の悪い習慣の行きつく先は真夜中の孤独
ろくに知らない人との会話
これが最後だと誓うけど、たぶんそうはならない
もう残っていないんだ
失うものも、利用するものも、やることも
僕の悪い習慣の行きつく先は虚空を睨む見開いた目

 「Bad Habits」ではそう歌うエドだが、エドがナイトライフを楽しんでいたのは、子供が生まれるまでの話。エドはライラ・アンタークティカが生まれたことをきっかけに生活を見直し、今では「朝6時に眠る代わりに、朝4時に起きるようになった」ことを明かしている。

「Overpass Graffiti(オーヴァーパス・グラフィティ)」

 アルバムのリリース日にサードシングルとしてシングルカットされた「Overpass Graffiti」では、ミュージックビデオに登場する力士にも注目してほしい。エドの代表曲「Shape of You」のビデオにも出演していた力士が、「Overpass Graffiti」のビデオで2度目の出演を果たしており、エドはビデオのなかで、「どこにいくの?」「一緒に行っていい?」などと力士と日本語で会話している。

 楽曲の内容に目を向けると、この曲でも“変わらない愛”や、愛する人との“初めての思い出”が歌われているが、この曲はかつて経験した失恋がインスピレーションになっているとエドはApple Musicに語っている。

僕はきみをずっと愛するよ、たぶんこれからも
高架下の落書きみたいに消えてはいかないだろう
僕らに対するきみの思いは、時と共に変わるかもしれないけど
でも僕は覚えていると思う、あの頃のふたりを

「The Joker And The Queen(ザ・ジョーカー・アンド・ザ・クイーン)」

 前作『÷(ディバイド)』の「Perfect(パーフェクト)」や、セカンド・アルバム『x(マルティプライ)』の「Thinking Out Loud(シンキング・アウト・ラウド)」のようなエドのロマンティックなスローバラードがお好きなら、きっと「The Joker And The Queen」も気に入るはず。

 エドはこの曲について、イギリスのラジオ局Heartの番組で次のように語っている。「すごくスローなオーケストラで、もし結婚式の曲を探している人がいたら、この曲がピッタリだと思う」

きみを落とせるのは千のキングか、ダイヤの指輪をくれるハート
僕の手持ちのカードで一番いいのを見せてあげるよ
ジョーカーとクイーンだ

 ちなみに、エドとチェリーは2017年の年末に婚約を発表。正式に結婚は発表していないものの、2018年8月までに極秘結婚したのではないかと見られている。

画像: 2017年、「新しい年を迎える前にフィアンセが出来たよ。僕らはすごく幸せで愛に溢れている。僕らの猫も、とても喜んでいるよ」というコメントを添えて、チェリー・シーボーンと婚約したことをインスタグラムで報告したエド・シーラン。

2017年、「新しい年を迎える前にフィアンセが出来たよ。僕らはすごく幸せで愛に溢れている。僕らの猫も、とても喜んでいるよ」というコメントを添えて、チェリー・シーボーンと婚約したことをインスタグラムで報告したエド・シーラン。

「Leave Your Life(リーヴ・ユア・ライフ)」

 「Leave Your Life」は、2021年3月に68歳で亡くなった、エドの「友人。父親のような存在であり、師匠でもあった」オーストラリアを代表する音楽プロモーターだったマイケル・グディンスキー氏にインスピレーションを受けた曲の1つ。

画像: 2018年に撮影された、マイケル・グディンスキー氏とエド・シーランの写真。

2018年に撮影された、マイケル・グディンスキー氏とエド・シーランの写真。

 「亡くなった友人(グディンスキー氏)の娘さんが、友人はいつも、あらゆる会話を『愛してるよ』で終わらせていたと言っていてね。だから、彼が娘さんに言った最期の言葉は『愛してる』だったんだ」とエドは英ラジオ局Heartで語っている。エドによれば、「Leave Your Life」では、もし自分が今亡くなるとしたら、娘のライラに何を伝えたいかを綴ったという。

僕はきみの人生から出ていかないよ
たとえ遠く離れていても、きみをいつも思っている
ずっとそばにいるよ、日々変わるとは思うけど
でも、この愛は大丈夫
きみの人生から出ていくもんか

「Collide(コライド)」

 2015年の12月にも一度、活動を休止することを発表して、その後1年間は世界中を回る旅などをしながら充電期間に充てていたエド。その時には長期にわたって日本に滞在したり、その後、2019年の活動休止後にも、プライベートで来日して友人でもあるONE OK ROCKのライブに飛び入り参加したりと、エドの日本好きはファンの間では有名な話。

 「Collide」は、チェリーとの思い出を1つ1つ振り返る内容になっているのだが、ここには、日本で過ごした時の思い出も登場する。

ふたりで旅をして
雪のように地面に舞い落ちる花びらを眺めた
東京の小さな部屋でイチャイチャした
借りた衣装で葬式に出た
きみのお祖母ちゃんが死んだ時は
きみの父さんのウイスキーを一緒に飲んだ
真っ暗だった夜を抜けて、朝へと僕を導いてくれたのはきみ

「2 Step(2ステップ)」

 かつてラッパーのタイ・ダラー・サインから“ラップバトルの強さ”を認められたほど、ラッパーたちからも“ラッパー”として一目置かれているエド。そんな彼のラップの才能を堪能できる「2 Step」では、自身が抱える日々のストレスを矢継ぎ早に吐き出しながら、愛するチェリーと一緒にいることで安らぎを得られると歌われている。

愛する女性と2ステップ
悩みはすべてどうでもよくなる
きみの瞳に僕が映っている間は

「Stop The Rain(ストップ・ザ・レイン)」

 “雨を止めろ”というタイトルとは裏腹に、「雨を止めることはできない、どうしたって」と歌われる「Stop The Rain」で綴られるのは、自分に降り注ぐ雨をうまく避けながら、足を引っ張ろうとする存在に惑わされることなく成長してきたという自負。

雨を止めることはできない、どうしたって
雨雲がまた頭上に現れたら傘を握りしめ
探しているのは、リアルな何か
やつらが興じるゲームじゃない

「Love In Slow Motion(ラヴ・イン・スロウ・モーション)」

 「Collide」、「Stop The Rain」とアップテンポな2曲を駆け抜けた後で、一休みするように文字通りスロウ・モーションで奏でられる「Love In Slow Motion」で歌われるのは、猛スピードで動いていく人生で、腰を据えて愛する人とゆっくりとした時間を過ごすことの大切さ

 「消してしまおう、世界を、電話を/きれいだよって、きみに伝えなきゃ/だって、こんなに時間が経ってしまって/だから僕、謝るよ」と、仕事に気を取られ、以前と比べてチェリーに向き合う時間が少なくなったことを謝りながら、エドは次のように歌っている。

今夜、僕は愛したい
キャンドルの火の傍らでふたりきり
くり返し、くり返し、僕らの生き方は
せっかちになってしまうけど
でも、今夜は違う スローモーションの愛

「Visiting Hours(ヴィジティング・アワーズ)」

 “面会時間”を意味するタイトルが付けられた「Visiting Hours」には、エドが今は亡きマイケル・グディンスキー氏に宛てた、心からの思いが綴られている。

 今年3月にグディンスキー氏の葬儀がオーストラリアで行なわれた際には、きちんと隔離期間を経て葬儀に出席して、「Visiting Hours」を初パフォーマンスしたエド。この曲では、自身のメンターであるグディンスキー氏にしか語れない、抱えている不安を打ち明けている。

しばらく話していいかな、僕の不安が消えるまで
あなただから言うけど、僕は失敗するのが怖いんだ
あなたは言うだろう
忘れるな、答えは僕らが育む愛の中にあるって
色んなことが変わったんだよ、あなたがいなくなってから
天国に面会時間があればいいのに

「Sandman(サンドマン)」

 “眠りの精”を意味する「Sandman」というタイトルが付けられたこの曲は、エドがライラ・アンタークティカに宛てた曲。「見当もつかないよ、子供をどう育てるかなんて」と「Visiting Hours」で歌っていたエドだが、「Sandman」では、「生まれる前からきみは愛されていた」と歌う。ちなみに、この歌詞が示すように、この曲はライラが生まれる前に書かれた曲だという。

パパはきみのベッドを整え、きみの子守唄を作ったよ
そしてママはモビールを作って空に吊るした
きみを愛するのは簡単、だけど人生は必ずしもそうはならない
きみの歌の世界に浸ればいい
きみが何を感じようと、間違いではあり得ない

「Be Right Now(ビー・ライト・ナウ)」

 14曲からなるアルバムの本編を締め括るのは、ポップスターとしての多忙な生活を経て、チェリーとライラ・アンタークティカという掛け替えのない愛を見つけたエドが、「一生という時間がだんだん物足りなく思えてきた」と歌う「Be Right Now」。

 「何ひとつ見逃したくない」と繰り返し歌いながら、エドはアルバムを次のように締め括っている。

あるのは今いる空間だけ
慌ただしさも騒音も締め出して
ただ、ここにいよう
今を生きよう

【ボーナス・トラック】「Afterglow(アフターグロウ)」

 国内盤のボーナストラックに収録されている「Afterglow」は、エドが2021年6月に「Bad Habits」で本格的にカムバックを果たす前に、2020年12月にサプライズでリリースしたシングル。

 「日の名残」を意味するタイトルが付けられたこの曲で、エドは愛する人と過ごす何気ない時間を慈しむように、次のように歌っている。

時の過ぎるのも忘れてしまうほど
僕はそれでもかまわない きみと僕がいれば
奇跡を待ちながら、ふたりは愛に酔いしれて
冬の雪の中、互いを探してる
愛に包まれふたりきり、世界も消えてしまったようだ

 『+(プラス)』、『x(マルティプライ)』、『÷(ディバイド)』と、これまでアルバムのタイトルに計算記号を用いてきたエド。彼は『x(マルティプライ)』をリリースした当時、アルバムにこのようなタイトルをつけている理由について「これまでに誰もやっていなかったようなことをやりたかった」からだと語っていたが、本作に『−(マイナス)』ではなく、“等しい”を意味する『=(イコールズ)』がついている理由は、アルバムを通して聴けば理解できる。

 名実ともに世界トップのアーティストとなり、多忙な時期を過ごしてきたエドが、およそ1年半の活動休止期間の間にチェリーとライラと過ごすなかで辿り着いたのは、家族という安息の場所。『=』というタイトルは、これまで、足したり、掛けたり、割ったりしながら表現してきた自身の心境が、ようやく安定したことを示していると言えるかもしれない。

 前作から4年の歳月を経てリリースされた『=』には、アーティストとしてのエドだけでなく、30年を生きてきた1人の人間としてのエドの人生そのものが詰め込まれている。

リリース情報

エド・シーラン
『=(イコールズ)』
CD購入/ダウンロード/ストリーミングはコチラ

画像: edsheeranjp.lnk.to
edsheeranjp.lnk.to

2021年10月29日発売
国内盤CD
品番:WPCR-18456
価格:税抜価格:¥2,000 / 税込価格:\2,200

収録曲:
1. Tides / タイズ
2. Shivers / シヴァーズ
3. First Times / ファースト・タイムズ
4. Bad Habits / バッド・ハビッツ
5. Overpass Graffiti / オーヴァーパス・グラフィティ
6. The Joker And The Queen / ザ・ジョーカー・アンド・ザ・クイーン
7. Leave Your Life / リーヴ・ユア・ライフ
8. Collide / コライド
9. 2 Step / 2ステップ
10. Stop The Rain / ストップ・ザ・レイン
11. Love In Slow Motion / ラヴ・イン・スロウ・モーション
12. Visiting Hours / ヴィジティング・アワーズ
13. Sandman / サンドマン
14. Be Right Now / ビー・ライト・ナウ
15. Afterglow / アフターグロウ(*BONUS TRACK)

Photo:Dan Martensen,ゲッティイメージズ,スプラッシュ/アフロ,Instagram

(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.