ウォーカー、エンプティ…、『TWD』のゾンビ
2010年から続く大人気ドラマ『ウォーキング・デッド』は、ロバート・カークマンによる同名コミックが原作。とはいえ、原作ではもちろんリックはいなくならないうえ、ドラマで死んだ/死なない多数のキャラクターは原作では別の運命を辿ったといったような違いはある。
そして、ある大きな違いがあるのをご存じだろうか。じつは、原作の『ウォーキング・デッド』では、“ゾンビ”という言葉が使われているのだ!
ドラマ『ウォーキング・デッド』ではゾンビのことはウォーカー、『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』では感染者、『ウォーキング・デッド:ワールド・ビヨンド』ではエンプティと呼ばれ、また、生き残りグループによってはまた違う呼び方をしている。
しかしそのなかにゾンビという呼び方はない。それは一体なぜなのだろうか?
原作者のロバートが、先日出版された『THE WALKING DEAD DELUXE #30』のなかで明かした。
ドラマ版制作での気づき
ロバートによると、コミック版でも当初はゾンビという単語を多用するのは避けていたという。そのなかで生み出されたのが、ドラマのなかで総督などが口にした“lurkers”や“roamers”という呼び方。
しかしコミックが10巻、20巻頃になった時に、「それらの単語を何度も何度も使い続けるのがバカらしく感じた」そう。そこで、「もう止めだ。あれらはゾンビだ。みんなゾンビって呼べば良い。誰が気にするんだ」となったとのこと。
しかしドラマ化にあたり、ゾンビという単語を使用することに乗り気ではなかったのが、本シリーズを始めたプロデューサーだったフランク・ダラボンで、ゾンビという単語は、「ゾンビものというフィクションが世界に存在しなければ、世界にその単語は存在しないと感じる」からというのが理由だったそう。
そう聞くと、たしかにドラマ版のウォーカーといった呼び方は、あれらの特徴から出来上がった呼称であり、現実に即している。さすが、『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』の監督でもあるダラボン氏の視点と言える。
そこで、彼やロバートらは“ゾンビ”ではない呼び方を考えることになり、“ウォーカー”という答えに行きついたという。
「そしてこの手の物語が機能するためには、ただ人々が“あいつの頭を打て”と言うだけじゃダメなんだ…。ロメロ映画(※)のゾンビみたいにはね! このユニバースはジョージ・A・ロメロが現代的なゾンビを作らなかったと考える必要がある。だから僕たちはドラマのために“ウォーカー”という単語を作ったんだ」
※ゾンビ映画の第一人者と言われるジョージ・A・ロメロ監督のこと。
『ウォーキング・デッド』はゾンビものというジャンルの作品ではあるものの、生き残った人間たちの交流や戦いを描くヒューマンドラマでもある。その世界観において、ゾンビという単語が使われていないことも、作品のリアリティに繋がっているだろう。
オリジナルシリーズは、現在最終章に突入しているが、10年以上をかけて構築された世界観はスピンオフシリーズに繋がっている。そこには、当初からの鋭い創造性があった。
(フロントロウ編集部)