90年代に世界を揺るがした、パメラ・アンダーソンとトミー・リーのセックステープ流出スキャンダルを題材にしたドラマ『パム&トミー』(ディズニープラスのスターで配信中)。この騒動が、セレブのプライバシー、ポルノ文化、そしてインターネットに与えた影響とは?

史上最も有名なセレブのセックステープ

画像1: ドラマ『パム&トミー』の実話がセレブのプライバシー、インターネット、ポルノに与えた影響とは
 

 ドラマ『パム&トミー』が題材にしているのは、モニカ・ルインスキー事件やO.J.シンプソン事件などの大事件が起きた1990年代を代表するスキャンダルのひとつとして世界中を騒がせた、パメラ・アンダーソンとトミー・リーのセックステープ流出事件。

 毎週約10億人が視聴する世界No.1テレビ番組だった『ベイウォッチ』に出演していた超人気女優パメラと、伝説のヘビメタバンド“モトリー・クルー”のドラマーだったトミーは、1995年に熱烈な恋に落ちて初デートから4日で電撃婚。ハネムーン中に夫婦の営みをビデオに収めたのだが、それが、トミーが怒らせたある人物の手によって“セックステープ”として世界中に流出してしまう。

画像: パメラ・アンダーソン役にはリリー・ジェームズが起用。

パメラ・アンダーソン役にはリリー・ジェームズが起用。

 
画像: トミー・リーはセバスチャン・スタンが演じた。

トミー・リーはセバスチャン・スタンが演じた。

 

 セレブのセックステープと言えば、パリス・ヒルトン、キム・カーダシアン、フレッド・ダーストのものなど多くが流出してきたが、世界規模で騒がれたものとしてはパメラとトミーのセックステープが初めて。当時、メディアや世間はお祭り騒ぎとなり、セレブのプライベートの覗き見はベッドにまで浸食した。

 ドラマ『パム&トミー』では、テープが盗まれた経緯や世間の反応を詳細に振り返りながら、騒動がパメラとトミーのキャリアと結婚生活に与えた影響を描く。そして同時に、プライバシーの境界線やメディアと世間の責任について問いかけていると、トミー・リー役のセバスチャン・スタンはフロントロウ編集部に語る。

 「この出来事は、メディアと観客である僕たちについて多くを物語っています。そして、性的な意図をもってストーリーを作りあげるためにメディアが観客との関係を操作しているということも明らかにしていると思います。同時に、僕たち全員が観客としてその問題の大きな一因になっていることを認識すべきでもあるのです。この番組ではそこを掘り下げています。プライバシーの侵害はどこまでいくとやりすぎなのか? そこを問いかけているのです」

インターネットの発展とポルノ文化にも影響を与えた

画像2: ドラマ『パム&トミー』の実話がセレブのプライバシー、インターネット、ポルノに与えた影響とは
 

 パメラとトミーのセックステープ流出事件は、インターネットとポルノの発展にも大きな影響を与えた。セックス動画はそれまではビデオテープで消費されていたが、2人の動画はインターネット上に流出。アダルトコンテンツをインターネットで消費する動きを加速させたのだが、1995年はアメリカでインターネット接続があった成人が全体の14%*という、インターネット普及初期。そんな時代に登場した“セレブ夫婦のセックステープ”は、世間でのインターネットへの関心を高めた。さらにこの騒動は、特定の人が説明責任を持つことなく不特定多数に情報を拡散できるというインターネットの威力と闇が同時に見えた出来事でもあった。 *ピュー研究所発表

画像3: ドラマ『パム&トミー』の実話がセレブのプライバシー、インターネット、ポルノに与えた影響とは
 

 当時は「インターネットの始まりだった」と話すクレイグ・ギレスピー監督は、パメラとトミーの騒動が「プライバシーの侵害、インターネットで起きたことの説明責任の欠如といったサイクルを始めることになった」と話し、「(インターネットは)未開拓の分野だったんです。何が起きているのか、誰もその巨大さを理解出来ていませんでした。インターネットがどれほどのスケールのものになるかということをね」と続けた。

画像4: ドラマ『パム&トミー』の実話がセレブのプライバシー、インターネット、ポルノに与えた影響とは
 

 監督が言うとおり、『パム&トミー』でのパメラとトミーはインターネットという未知のツールで夫婦の営みが拡散されていくことになす術もなくフラストレーションをためていき、その結果、相思相愛だった関係に暗い影が落ちはじめる。

 セックステープの流出を止められなかった理由とは? そしてなぜトミーよりもパメラの方が被害が大きかったのか? 社会の問題点を浮き彫りにする騒動のいきさつを『パム&トミー』で確認してほしい。

『パム&トミー』は全員の“責任”について考えさせてくれる

画像5: ドラマ『パム&トミー』の実話がセレブのプライバシー、インターネット、ポルノに与えた影響とは
 

 セックス中の映像が同意なく他人に配られることが権利の侵害であることは明白。しかしパメラとトミーのテープの存在を知った社会は、この1組の夫婦が受けた被害を見過ごし、この騒動を好奇的な目で見てしまった。それから20年以上が経ち、社会はどう変わったのか?

 現在のアメリカでは、セレブ本人の同意なくリークされた性的なコンテンツは掲載を控えるメディアが大半。ドラマで描かれているように、1995年にパメラのビデオが流出した際は多くのメディアがそれをジョークのネタにしたが、2014年に女優や歌手のヌード写真がネット上に大量リークされた際には、多くのメディアが被害者に同情的な報道をして、リーク犯を批判した。

画像6: ドラマ『パム&トミー』の実話がセレブのプライバシー、インターネット、ポルノに与えた影響とは
 

 一方で、セレブに対する好奇心は未だに強く、さらにインターネットやSNSの普及により個人のプライバシーがより侵害されやすい土壌が出来ているのも事実。セバスチャン・スタンはフロントロウ編集部にこう語る。

「この番組は、私たちの社会が当時どのように騒動を扱ったかについてとても考えさせてくれます。彼らカップル、とくに彼女に対する影響への考慮が間違いなく欠如していました。そして私たちは現代においても、メディアとして、観客として、ある意味で同じタイプの行動を繰り返してしまっていると思います」

 90年代を代表するセレブスキャンダルの真相を描きながら、プライバシーやインターネット、さらには他人のプライベートへの好奇心に対する問題提起をする全8話のドラマ『パム&トミー』はディズニープラスのスターで独占配信中

ドラマ『パム&トミー』(全8話)
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スター(Star)の視聴方法
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(フロントロウ編集部)

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