馬場早希さんプロフィール
誰もがセクシャルウェルネスをポジティブに捉え、人生を豊かに楽しむためのセクシャルライフスタイルブランド「BONHEUR(ボヌール)」を展開する株式会社BONHEURの代表取締役。ベンチャー企業の輸入事業の立ち上げで製品の企画・開発の事業に携わった後、2020年に株式会社BONHEURを創業した。
国際女性デーに考えたい、セクシャルウェルネスのこと
3月8日の国際女性デーは、女性にまつわる歴史を振り返り、変革を呼びかける記念日。そんな国際女性デーをきっかけに考えたいのが、女性のセクシャルウェルネスについて。
性の健康はジェンダーを問わず大切な要素なのにもかかわらず、これまで女性の性に関するトピックはタブー視されることが多く、とくに日本ではオープンに話す機会が少なかった。さらにセックスやセルフプレジャーを楽しむためのセックストイなども男性視点でデザインされたものが多いなど、セクシャルウェルネスの向上をセルフケアの一環として考える人が多い欧米諸国にくらべて、日本においてのセクシャルウェルネス製品は、女性の意見が反映されたものが極端に少ない傾向にある。
そんななか2020年に誕生したのが、女性主導のセクシャルウェルネスブランドであり、日本発のブランドである「BONHEUR(ボヌール)」。
フランス語で幸せを意味する言葉“BONHEUR(ボヌール)“をブランド名に掲げるBONHEURは、全ての女性が心身ともに健康でいるためのセクシャルウェルネスという考え方を日本で広め、人々の幸せを追求することをミッションに掲げるブランドで、セルフケア、セルフプレジャー、セックスライフまでさまざまなシーンで使えるアイテムを展開。セクシャルウェルネスをポジティブに受け入れられる社会を目指し、オリジナル製品の開発だけでなく、海外からセレクトしたセックストイの販売も行なっている。
その創業者である馬場早希さんに、女性に寄り添ったセクシャルウェルネスブランドを立ち上げたきっかけやその思いについて聞いた。
創業のきっかけは、幼少期からつづいた関心や葛藤
日本ではまだまだ珍しい、女性主導のセクシャルウェルネスブランド。この分野での起業へと馬場さんを突き動かしたのは、幼少期や思春期に感じた性への関心や葛藤。幼い頃から、性への関心が高かったことがもっとも根底にあるきっかけだと感じているそう。
馬場さん:「子供ながらに小学校低学年の頃から家庭の医学書などを見て、性に対していろいろ調べたり、妊娠する母体の体について調べたりしていた記憶があって、タブー視することなく当たり前のものとして性について興味を持っていました」
そんななか幼少期から思春期になるにつれて、性に関して不安に感じることも増えていったそう。
馬場さん:「性についてインターネットなどで調べたりすることもあったのですが、正しい知識が得られないことも多く、自分の自己肯定感とか固定観念が歪んだ時期がありました。なんというか偏った知識とか認識、価値観が刷り込まれてしまった気がして。10代はそういう時期が多かったです」
そこから馬場さんを大きく変えたのは、日本とは異なる海外のセクシャルウェルネス事情や価値観に触れたこと。
馬場さん:「高校生の頃に雑誌などを通して、海外の女性たちがセックスをウェルネスという文脈で語っていたのを見たり、海外のセックストイについて知ったりしたことが、自分にとって最初のイメージの転換になりました。20歳を超えてからは、海外でセックストイを専門に扱うセレクトショップに足を運んだときに、アダルトショップという枠組みではなく、ウェルネスやヘルスケア、さらにコミュニケーションツールとしての冷静な在り方を見て、イメージが大きく覆されました」
さらにもうひとつ馬場さんにとってセクシャルウェルネスを考えるきっかけになったのが、家族との別れだったという。
馬場さん:「10代の頃に母親を病気で亡くしたことで、健康やウェルネスについて考えるようになり、生命の根源であるセクシャルウェルネスも向き合うべき健康のひとつなのではないかと思うようになりました」
その後22歳になった馬場さんは、ベンチャー企業の輸入事業の立ち上げで家電製品などの企画・開発の事業に携わることに。異なるジャンルの事業を手掛けるなか、馬場さんが当初から変わらず持ち続けていたのが、セクシャルウェルネスの分野で物づくりがしたいという思いだった。そして2020年に株式会社BONHEURを創業。それと同時に同名のブランドを立ち上げた。
馬場さん:「欧米諸国で女性目線のセクシャルウェルネス製品が増えていたことにも後押しされて、女性が欲しかったものという入り口で自分自身が起業したいという思いが強くなり、製品をつくり出すことにしました」
そして馬場さんは、デザインやコミュニケーションを使ってセクシャルウェルネスのイメージそのものを塗り替えていきたいという想いのもと、製品の企画や開発を開始。女性が抱える悩みやニーズを反映したセルフケアアイテムやセックストイを手掛けていく。
「女性が抱える悩み」を原動力に製品を開発
BONHEURの人気アイテムのひとつが、デリケートゾーンのデイリーケアとしても使えるローション(潤滑剤)。「BONHEUR Awaken CBD ルブリカント」と名付けられたこのアイテムが生まれたのは、多くの女性が性交痛の悩みを抱えていたことがきっかけだった。
馬場さん:「ルブリカントを最初につくり出したのは、乾燥などによって性交時に痛みを伴う性交痛を感じている女性が約70%もいることを知ったのがきっかけです。そして何か対策をしているかというアンケートをしたところ、対策している人は12%しかいかなかった。そこで日常的に保湿アイテムとしても使える2つの意味合いを持ったローションをつくることになりました」
馬場さんのSNSのもとには、実際に使用したユーザーからのリアルな感想が届くこともあるそうで、ルブリカントは性交痛に悩む女性から高い支持を得ているという。
セクシャルウェルネスのイメージを変える製品デザイン
BONHEURはブランドビジュアルや製品デザインの面でも、ほかのセクシャルウェルネスブランドとは一線を画すスタイリッシュなブランドであることも魅力のひとつ。
なかでもパートナーとのナイトライフからソロタイムまで寄り添う「WEHVE セックストイ バイブレーション」や膣トレアイテムとしても活用できる「wyle セクシャル・デバイス ローター」などのセックストイは、一見セックストイには見えないデザイン性の高さが魅力。カラーという点だけで見ても、セックストイでは今までピンクやレッド、パープルなどのカラーが多かったが、BONHEURではネイビーやミントブルーなどの落ち着いたカラーを採用している。
馬場さん:「大人になった女性が欲しくなる、日常にフィットするデザインのものをつくりたいというのもそうですが、プロダクトのデザインやデザインによるコミュニケーションでセクシャルウェルネスのイメージを変えたいというビジョンを持って製品のデザインをしてきました」
さらにデザイン性の向上だけでなく、今までにない全く新しい形の製品やサービスを手掛けることも目標に掲げている。馬場さんは、ローションやセックストイなど製品として今までにあったものだけでなく、より新しくユニークで、生活を豊かにする進化した製品を生み出したいと考えているという。
従来の枠にとらわれないブランドを目指す
女性主導のセクシャルウェルネスブランドというだけでも日本では希少な存在ながら、「BONHEUR」ではセックスやデリケートゾーン、パートナーシップなどの悩みをざっくばらんに話すオンラインイベント「ミレニアルズWOMENセックストーク」なども主催。そして今後は、製品の販売だけでなく体験という形のサービスを提供し、ブランドが持つ思想を共有することにも尽力する予定だという。そのひとつが、ユーザー参加型の製品企画や製品開発。
馬場さん:「直近で計画しているのが、一般のユーザーを一緒に巻き込んで設計を進めること。プロダクトをつくるうえでの思想や目的の設定、課題解消のための工夫など、製品ができあがるまでのすべての過程をユーザーとともに取り組む機会を設けようと考えています。この取り組みは、BONHEURの理念を共有できるだけでなく、セクシャルウェルネスが浸透することによって女性にどのような影響があって、世の中がどう変わっていくのかを知ることにもつながると思っています」
そんな馬場さんが明かした今後の大きな展望が、セクシャルウェルネスという言葉が持つ従来の意味を超えて、女性が抱える課題を根本的に解決すること。
馬場さん:「女性の多くが抱えている潜在的な課題を解消するために、ヘルステックやヘルスケアという意味合いを持つ製品を開発していきたいと思っています。これで悩んでいるからこれという合理的な答えがあるわけではないので、課題にたどり着くことも難しいのですが、本当の意味で課題を解消していけるものづくりをしていきたいです」
「BONHEUR(ボヌール)」の馬場さんは、日本におけるセクシャルウェルネスの環境を変えるべく、これからもさまざまな新しい挑戦を続けていくという。近い将来、人が健康のために正しい食事や運動を取り入れるように、人それぞれが自分に合うセクシャルウェルネス製品を当たり前に取り入れる日が来るかもしれない。
BONHEUR公式サイト:https://store.bonheur-inc.com/
BONHEURインスタグラム:@bonheur_wellness_jp
馬場早希さんインスタグラム:@bonheur_babasaki
(取材:フロントロウ編集部)