AREA21がデビューアルバム『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』をリリース
DJ/プロデューサーのマーティン・ギャリックスとシンガーのメイジャーの分身である、通称M&Mことエイリアン・トラベラー2人による共同プロジェクト、AREA21(エリア21)がデビューアルバム『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』をリリースした。
2016年に最初のシングルとなる「Spaceships」をリリースし、その後何曲かのシングルを単発で発表した後で、2021年4月にシングル「La La La」をリリースして本格的にAREA21としての活動をスタートさせたマーティンとメイジャー。
そして、ついに2021年11月にリリースされた待望のデビューアルバム『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』には、マーティンが得意とするフェスティバル向けの踊れるダンスチューンはもちろんのこと、SNS社会に警鐘を鳴らす「Followers」など、“エイリアンとして地球を見る”というユニークな視点のもとで、現代の社会問題を扱った楽曲も収録されている。
フロントロウ編集部が、マーティンとメイジャーの2人にアルバムでのそれぞれのお気に入りについて訊いてみると、次のように返ってきた。
マーティン:「All I Need」ですね。友情や絆についての曲で、世界のどこにいようと、大切なのは仲間という内容になっています。最悪のバーにいたって、最高の友達と一緒にいれば楽しいですから。僕自身を含め、多くの人が、何を持っていないかということにばかり気を取られがちだと思いますが、それよりも楽しいこと、素晴らしいことってあると思うんです。コロナ禍以前からそういうことを大切にしていましたが、コロナでいっそう痛感しましたね。ハグをしたり、家族と会ったり、祖父母と会ったり。そういう日常的なことの大切さを「All I Need」は教えてくれます。
メイジャー:「All I Need」は僕も大好きな曲ですが、マーティンが選んだので、僕が他の曲を選ぶとすれば、「Human」ですかね。今の世の中、人間であるってだけでも大変だと思うんです。分断されたり、恐怖を感じていたり。僕たちエイリアンは、(この曲で)「もし人間だったら愛してくれる?」と、疑問を投げかけています。人間同士や社会に対する見方や態度を、改めて考えるきっかけになればと思います。僕自身が強く願っているメッセージです。
今回、マーティンとメイジャーの2人によるレーベルのオフィシャルインタビューも併せて到着。オフィシャルインタビューでは、2人がAREA21を結成した由来や、そのコンセプト、『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』のお気に入りの楽曲などについて語っているほか、実はソロでの来日に向けて動き出しているというマーティンに、AREA21としての来日予定についても教えてくれている。
マーティン・ギャリックスとメイジャーにインタビュー
一緒に音楽を作ることになったきっかけや、AREA21というユニットを結成するに至った経緯を教えてもらえますか?
マーティン:(これまでの自分の音楽とは)まったく違った音楽をやれるってことに興奮したのが大きいと思います。僕は以前はエレクトロニック・ミュージックだけにフォーカスして、大きなフェスに出演することや、いわゆるEDMのような、そういう音楽のことだけを考えていました。そうだったのが、メイジャーと一緒にやるようになってから、いろんな意味で開眼した感じで。新しいサウンドに実験的に取り組んだり、ずっと長い間触ってなかったギターを弾いてみたり、よりライヴ感に富んだサウンドに取り組むという、そういう作業が凄く楽しくて一緒に始めました。それは今でも変わりません。このプロジェクトのコアの部分は、そこですね。とにかく楽しいってことです。
メイジャー:まったく同感ですね。楽しいことを満喫する、それがこのプロジェクトの原動力になっています。何も、「エイリアンとか使ってクレイジーなプロジェクトをやろうぜ」という感じで始めたのではなく、2人の中から自然に生まれたものなんです。心を開いて、可能性を追求しています。制約を取り払い、新しいアイデアに挑戦し、楽しくやっていたら、すごくクールで「これってすごいんじゃない?」と思えるものが誕生して、ここまで来た感じですね。
デビュー曲「Spaceships」のリリースが2016年で、その後いくつかシングルが発表されましたが、デビュー・アルバムの完成までにはかなり時間が掛かっています。当初から長く続けるプロジェクトとして考えていたのですか?
マーティン:最初から長く続けるとか、一生やり続けようみたいなことは考えていませんでした。とにかく2人で音楽を制作するのが楽しくて。音楽って、そういうものじゃないかと思うんです。人々を楽しくさせて、人々を繋ぐ。実際、僕たち2人も音楽で繋がれたわけだし、僕がしみじみ感動させられるのは、このアルバムの楽曲を作るのも楽しかったけれど、それを聴いた人々にもその楽しさが伝わって、みんなとも繋がれたということです。熱い気持ちが湧き上がってきます。それって大切なことだと思います。
このプロジェクトのコンセプトである、宇宙を旅していたエイリアンが地球に不時着、というのを思いついたのはどちらなんですか?
マーティン:2人で一緒に考えました。前に使っていた僕のスタジオが宇宙船みたいなデザインで、21階にあったので、AREA21という名前をつけたんです。それに、デビュー曲が「Spaceships」だったから、「それなら、僕たちはエイリアンになってしまおう」ということで。エイリアンの絵を描いて、以来、そのコンセプトになりました。
メイジャー:音楽って、いつも他の惑星から聴こえてくるような気がしているので。エイリアンによる音楽(というコンセプトになった)は、ごく自然なことですね。
マーティンにとっては専属のヴォーカリストをもつのは初めてだと思いますが、毎回違ったヴォーカリストと仕事をするのと、メイジャーの1人だけと仕事をするのとではどう違っていますか?
マーティン:すごくアプローチが違います。僕がデモを作ったり、メイジャーも時々デモを作ったりするのですが、「これはちょっとAREA21向けじゃないな」と思えば、マーティン・ギャリックスの曲として使うこともできるわけで。実際、今度リリースされるマーティン・ギャリックスの曲は、メイジャーと一緒に書いたものなんです。気分を上げてくれるような曲で、AREA21向けというより、ギャリックス向けの曲だと思ったので。「今度はフェス向けの曲を作ろうか」みたいに目標を決めなくても、自由にやってみて、後から(その曲をどうすれば良いか)決めればいいので、すごく楽ですね。同じ声を使って仕事をするっていうことで、曲によってどんなふうに彼の声を変えようかって、いろいろと試すこともできるので、それも興味深いです。曲の一部を取り出して、コードや音程などを変えたり、ディストーションを掛けたり、オートチューンを使ってみたりといった具合に。大変なこともありますけど、アルバム1枚を通して楽しんでもらうためには、色々と工夫が必要ですからね。メイジャーの最高の声を使って、いろいろ試すことで、ネクスト・レベルに高めてくれるんです。
「Followers」では現代のソーシャル・メディアに関する問題を取り上げています。ソーシャル・メディアとはどんなふうに付き合っていくべきだと思いますか?
メイジャー:SNSには良い面と悪い面とがあると思います。良い面としては、友人や家族と連絡を取ったり、世界の見聞を広めて探検したりできるということで、凄くいいことだと思う。僕はミシガン州のデトロイト出身だけど、こうして音楽業界に入れたのもソーシャル・メディアがあったからで。実際にはそこにいなくても、ネットやソーシャル・メディアがあったから(音楽業界に)入れたと思っています。ただ、みんなが苦労していることもありますよね。ソーシャル・メディアが原因で、みんなが...
マーティン:他人と比較するだとかね。
メイジャー:そうそう、他人と比較したり、依存しすぎたりしてしまうということです。ネットばかり見ていると、本当に何が大切なのか、現実を忘れてしまいがちになります。常に他人と比較したり、自分自身を批判して落ち込んでしまったり、他人が何をしているかばかり気にかけてしまうんです。健全ではないですよね。なので、僕たちはそういう点については警笛を鳴らそうとしていますが、何もかもを否定するつもりはないんです。素晴らしいツールであることも確かなので。
マーティン:特にコロナ禍では、(ソーシャル・メディアが)人々を繋いでくれました。健全なバランスを見つけるのが大切だということです。とにかく、他人と比較するのはよくない。服装にしても、アーティストにしても、アートやサウンドのことにしても、どちらが上とか比較したり、数字を比べたり、そうなってしまってはダメです。みんなそれぞれに道があり、進み方があると思うので、他人と比べてばかりいたら、自分を見失ってしまいます。「あっちの方がクール」だとか、「あっちの写真の方がクール」とか思っていたら、キリがありません。誰もが、最高のローケーションで撮影した、最高の写真しかアップしないわけですから。ソーシャル・メディアの上では誰もがハッピーに見えるかもしれませんが、そうではないのが現実です。誰だって感情の浮き沈みはあるわけで、その現実とソーシャル・メディアとの違いを知っておくことが大切だと思います。
あらゆる境界とは無縁のエイリアンの2人にとって、地球上の人々がやってることで不思議に映ったり、変だなと思うことはありますか?
マーティン:エイリアンとしては、「国境って何のため?」って、すごく不思議に思います。地球は球体なのに、あえて線を引くなんて。それに、どんな愛だって愛なのに。誰を愛そうと、愛には変わりません。すごく見方が狭いというか、愛の形で区別しようとしますよね。地球以外の星ではそんなの見たことないので、とても不思議です。誰を愛そうと自由ですし、他人が決めることではありません。それこそがすべての鍵になるのではと思います。こんなに分断してしまった世界はおかしいですよ。
メイジャー:そういう視点で見ると、地球上の人々のやってることが見えてきますよね。それを反面教師にすることで、学べることがあると思います。僕たちには何ができるのかということです。
今後のライヴの予定を教えてください。またどんなステージを計画していますか?
マーティン:ちょうど今、ツアーのリハーサルをしているところです。フル・バンドでステージに立つ予定で、ドラム、ベース、キーボード奏者もいますし、僕はギターを弾いて、メイジャーはラップとヴォーカルを担当します。また日程は未定ですが、ツアーも準備中です。
日本にも来てくれそうですか?
マーティン:もちろん。今、マーティン・ギャリックスとしての来日を計画をしているところで、AREA21としての来日も考えています。日本や東京は、僕が世界中で一番大好きな場所ですから。日本のファンの前で、バンド演奏を披露できたら嬉しいです。
メイジャー:僕も同感です。日本のみんなの前でパフォーマンスができたら、夢のようですね。
最後に日本のファンへのメッセージと、このアルバムの聴きどころについて教えていただけますか?
メイジャー:日本のファンをはじめ、地球上のみんなに対して僕から伝えたいのは、みんなひとつということ。みんながハーモニーを重ねることで、繋がりは強化されていく。愛することを忘れないでほしい。
マーティン:僕からみんなに伝えたいのは、これまでの素晴らしい応援に対して、どうもありがとう、という感謝の気持ちです。AREA21はもちろん、マーティン・ギャリックスに対するサポートにも感謝しています。みなさんの美しい国での体験が、僕にとって忘れがたい人生最高の想い出となっているのは間違いないし、AREA21で来日したときには、さらに多くの新しい想い出が作れるのではないかと期待しています。アルバムに関しては、このアルバムを聴いて、みんなが楽しんでくれることを願っています。みんながハッピーになって楽しんでくれて、踊り出したくなったり、気分が良くなり、何か感じてもらえると嬉しいです。どうもありがとう。(両手を合わせて日本語で)ありがとう!
<リリース情報>
AREA21
『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』
発売中
(フロントロウ編集部/協力:村上ひさし)