2022年の東京レインボープライドにも協賛企業として出店しているドン・キホーテ。運営会社のPPIH(株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は「多様性を認める企業」という企業理念を掲げ、企業によるLGBTQ+の人々のための取り組みを評価する「PRIDE指標」で4年連続ゴールド認定を受けている。同社への取材から、多様な人にとって働きやすい会社とはどんな会社なのかを考える。(フロントロウ編集部)

LGBTQ+が働きやすい社内制度を生み出すPPIHの企業文化とは?

 ドン・キホーテを運営するPPIHでは『源流』という企業理念集を発表しているのだが、それが、女性だから、社員じゃないからといったバイアスに縛られることなくアクションが起こしやすく、意見が言いやすい環境づくりを後押ししている。

「弊社には「権限委譲」という、信じて任せる文化が根付いており、国籍・性別・雇用形態を問わず、意欲を持った人財が積極的に業務に携われる環境がございます。また、弊社の企業理念集『源流』には、自分の意見をはっきり述べることや、役職や上下にかかわらず、個人の多様性を尊重して認め合うことを定めており、店舗・サポート部門問わず、日頃から、意見を言いやすい環境です」

画像: PPIHのLGBTQ+研修の様子

PPIHのLGBTQ+研修の様子

 PPIHでは2016年に社内でLGBTQ+プロジェクトを発足し、レインボープライドへの参加とLGBTQ+研修をスタートさせ、PRIDE指標ではシルバーを受賞。そんなLGBTQ+プロジェクトも、意見が言いやすい環境のなかで生まれた。

「LGBTQ+プロジェクト発足は、2016年に行なった部署横断型の研修において従業員からの提案がきっかけです。プロジェクト発足当初は、基礎的な内容の研修を主に首都圏で開催しておりました。2018年以降は社内当事者の協力を仰ぎ、研修に当事者の体験を反映させるなどさらに内容をブラッシュアップさせました。さらに、当事者の従業員が講師として研修を行なうこともありました。その後、初めて地方のレインボープライド出店(九州)が決まったことをきっかけに、首都圏以外でも研修を開始して、2019年以降は複数の当事者の講師と共に店舗での研修を行ないながら、資料の内容もさらにブラッシュアップさせました。札幌・仙台・沖縄でのLGBTQ+イベントへの参加をきっかけに、研修対象も拡大し、2020年以降は従業員向けポータルサイトでWEB研修の受講も可能となっております。アライの表明を希望する研修受講者には、レインボーバッジやステッカーを配布しております。2022年4月時点で、グループで累計約2万人の従業員が受講しております」

 こういったダイバーシティ研修が商品開発に活かされることもあるそう。

「LGBTQ+に理解のある店長とエリアマネージャー複数名の協力により、当事者の従業員に権限委譲し、当事者向け(エスパン:ftm向けアンダーウェア)商品の販売を行ないました。また、ある店舗でLGBTQ+研修を受けた従業員が、その後ドン・キホーテ小樽店の店長になり、それがきっかけで小樽プライドへの参加につながりました」

 そして2018年には、わずか1年でPRIDE指標シルバーからゴールドへと昇格。その背景には、主に3つの取り組み強化があったという。

  • 社内報で、LGBTQ+プロジェクトの活動を公開。従業員から協力を募っていることを掲載し、さらに、東京レインボープライド2017・2018への参加報告を社内報で掲載した際に参加した従業員の写真を掲載した
  • 従業員向けの相談窓口に、LGBTに関する相談枠を設けた
  • 社内規程で定めた「配偶者」の解釈を同性パートナーにも拡大し、婚姻に関する福利厚生が享受できるライフパートナー制度をスタートさせた
画像: (右)PPIHでは2020年にダイバーシティ・マネジメント委員会発足。(右)社内で使用されているライフパートナー届。

(右)PPIHでは2020年にダイバーシティ・マネジメント委員会発足。(右)社内で使用されているライフパートナー届。

 ダイバーシティを促進する制度をつくり、その後も従業員からのアイディアやフィードバックをもとに制度のブラッシュアップに積極的に取り組み続けているPPIH。2018年に導入されたライフパートナー制度については、社外からは当事者からの働きたいという応募が増え、社内からはダイバーシティ推進に協力したいという声が増えたそうだが、そこからさらに2021年に制度の強化が発表された。

「同性カップルがさらに福利厚生を享受しやすい環境を整えました。同性カップルが法律婚と同様に福利厚生を享受できるよう『新・ライフパートナー制度』を策定し、『自治体の同性パートナーシップ制度の利用』という条件を撤廃しました。従業員とそのパートナー両名が、同住所に住民登録していることが分かる住民票の提出があれば出来るようになりました」

 そんなPPIHは2020年に、社内で「ダイバーシティ・マネジメント委員会」を設立。LGBTQ+の支援、女性活躍促進、シニア・外国人の活躍推進、障がい者雇用の促進など幅広くダイバーシティ推進に積極的に取り組むことを目標と掲げている。さらに2021年には、社外向けのダイバーシティサイト「PPIH DIVERSITY(www.ppihgroup.com/diversity/)」も開設した。

 従業員がいくら動いても、管理職や上層部が積極的でなければ制度は進まない。逆に会社側が制度を作りたくても従業員の声がきちんと反映されなければ本当に働きやすい会社とは言えない。普段から役職や雇用形態、国籍・性別などにかかわらず権限委譲し、意見やアイディアが生まれやすい環境をつくり、会社に属しているすべての人に等しい価値が置かれている企業文化こそが、PPIHのダイバーシティの豊かさを生み出している。会社もダイバーシティ促進も一部のひとだけでは成り立たない。PPIHの取り組みは、そんな当たり前だが忘れがちなことを再認識させてくれる。(フロントロウ編集部)

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