女性は、男性と一緒にエレベーターに乗らないことが自衛として呼びかけられる一方で、乗らなければ“ムカつく”として逆上される社会のなかで生きている。(フロントロウ編集部)

男性とエレベーターに乗ることが怖い女性は多い

 4月17日放送の『超無敵クラス』(日本テレビ系)でお笑いコンビ、かまいたちの山内健司氏が、エレベーターで男性である自分とエレベーターに乗ることを避けた女性に対して恐怖心をあおるようなイタズラをしようとしたエピソードを語り、問題となっている。また、それに伴い、お笑いコンビである霜降り明星の粗品氏が、彼とエレベーターに乗ることを避けた女性に対して奇声を上げたと話したYouTube動画も問題視されている。

 エレベーターは密室であり、暴力・性暴力をふるわれる可能性を警戒して、男性と一緒に乗ることに怖さを感じる女性は多い。現実として警察もエレベーターでの暴力被害の危険性をたびたび訴えており、例えば大阪府警察安まち情報はエレベーター内で痴漢事件が発生した際に、「エレベーターでは男性と二人にならないように乗り過ごすようにして下さい!」とツイート。千葉県警察は「エレベーター内では、なるべく見知らぬ男性と2人きりにならないようにし、また、出入り口付近に立つようにしましょう」としており、石川県警察は「エレベーターは密室です!」として女性に対して被害防止対策を呼び掛けている。

 また、エレベーター内だけでなく、エレベーターを降りた後につけられ、家を知られるという危険も考えなくてはならない。2008年に男が同じマンションに住む女性を拉致し、殺害した江東マンション神隠し殺人事件などが頭に思い浮かぶ人もいるだろう。

 自衛を求められるにもかかわらず、男性とエレベーターに乗ることを避ければ“ムカつく”という理由で逆上されることもあり、女性が直面する現実がいかに不条理にまみれているかが理解できる。

 そして実際に、エレベーターの中で女性が暴力・性暴力の被害に遭った事件は少なくない。

画像: 男性とエレベーターに乗ることが怖い女性は多い

 現在、カナダのトロントで、エレベーター内で18歳の女性に性的暴行をふるった男を現地警察が捜索している。警察によると、女性は2022年3月後半の日曜日の朝9時半頃にエレベーターに乗ったという。エレベーター内では男に背を向けていたという女性は、性的暴行の被害に遭った。警察によると、男は20代から30代と見られ、身長は5フィート(約152cm)の細身。警察は男が映った監視カメラからの画像も公開した。

 2018年7月には、ブラジルのエレベーターに設置された監視カメラに映った衝撃的な映像が放送され、世界中の女性に恐怖と警告を送った。そこでは、妻が夫に蹴られ、殴られ、首を絞められて絶命する様子が映っていた。男はまず、建物のガレージで暴行を開始し、女性はエレベーターの中に逃げ込んだが、追ってきた男に捕まった。男は5階で降り、そこから女性の遺体を地面に投げ捨てた。

 2019年7月には、オーストラリアの警察組織に勤務する54歳の男が、13歳の少女をエレベーターの中に追い込み、そこで少女の身体を触り、キスをするなどの性暴力をふるった。エレベーターにはさらに小さな子供もおり、その子供も目の前で起こったことにパニックになっていることが、監視カメラの映像から見て取れる。男は2021年6月に有罪となったが、その時点で少女はいぜんとして悪夢を見続けており、同じことが起こらないかという恐怖を感じていることが裁判で明かされている。

 しかもこれは、国の中枢でも起こり得る。アメリカの国会議事堂で働く女性たちは2017年に米CNNの取材に対して、女性たちの間では1人で男性たちとエレベーターに乗ることは避けるようにというアドバイスが交わされていると明かしている。とくに、「職員専用」のエレベーターが危険だそうで、何名かの元職員や元議員が、現在でも思い出すことに恐怖が伴う経験をしたことを認めている。

 密室では、性暴力だけでなく、暴行や強盗などすべての犯罪が起こり得る。ニューヨーク警察は米NY Timesの取材で、エレベーター内で起こった犯罪の統計はないが、エレベーター内で多くの犯罪が起こっていることを認識しているとした。

(フロントロウ編集部)

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