Photo:ゲッティイメージズ、スプラッシュ/アフロ
思いがけない妊娠に悩み、“産まない”ことを選択したセレブたちが今思うことは? さまざまな事情により中絶を決めたセレブたちの体験談を紹介。(フロントロウ編集部)

「中絶の権利」を認めた判例が覆る可能性

 アメリカ連邦最高裁判所が女性が人工中絶をする権利を認めた1973年の判例「ロー対ウェイド判決」を覆す見通しであることを示す草案の内容が報じられ波紋が広がっている

 この草案は、妊娠15週目以降の中絶を禁じたミシシッピ州独自の法律の合憲性をめぐる訴訟に関し、“中絶を認めるかどうかは各州に委ねるべき”だとする多数意見をまとめたもので、最高裁は「最終的な立場を表すものではない」としつつも、本物であることを認める声明を出した。

 女性の生殖の自由を訴え、人工中絶や避妊をサポートしているNPO団体プランド・ペアレントフッドによると、もしも判断が覆った場合、直ちに中絶を原則禁止とするとしている州は、テキサス州、ルイジアナ州、ミズーリ州、ユタ州ほか12州。さらに、そのほかの14の州でも中絶禁止に向けた法律の制定が進むことが見込まれているという。

画像: 「中絶の権利」を認めた判例が覆る可能性

 女性の基本的人権であるボディ・オートノミー(からだの自己決定権)を保護してきたロー対ウェイド判決が覆される可能性が高まっていることに反対派は激しく反発しており、連邦最高裁のあるワシントンなどでは抗議デモにも発展している。


「中絶を選んだから今がある」セレブたちが明かす中絶の経験

 アメリカでは、ここ数年の間に共和党優位の中西部から南部の州を中心に次々と中絶禁止法が制定。

 アラバマ州では、2019年5月、レイプや近親相姦による妊娠であっても中絶できないうえ、中絶手術をした医師は罪に問われる可能性があるという全米で最も厳しい中絶禁止法が成立。2021年9月には、テキサス州で多くの女性が妊娠を自覚しない妊娠6週目以降の中絶を禁じる法律、通称「ハートビート法」が施行された。

画像: 「中絶を選んだから今がある」セレブたちが明かす中絶の経験

 2021年の世論調査(※)によると、人工妊娠中絶を「合法とすべき」という意見が「違法とすべき」よりも20%以上回る結果となったが、そういった世間の人々の声を無視した連邦最高裁の意見草案には批判が集まっており、SNSを通じて“中絶という道を選択したからこそ現在の自分がある”と、自らの体験をシェアする女性たちが続出している。

※世論調査機関「ピュー・リサーチセンター」が1995年から行っている調査。2021年の調査では、「合法とすべき」とした回答者が59%、「違法とすべき」が39%となった。

 フロントロウでは、人工妊娠中絶をめぐる議論が激化したここ数年の間にセレブたちが語った体験談を紹介する。

フィービー・ブリジャーズ

 第63回グラミー賞の新人賞にノミネートされたシンガーソングライターのフィービー・ブリジャーズは、現地時間5月2日に報じられた、ロー対ウェイド判決が覆されれば妊娠中絶禁止が合憲とされる可能性があるという情報を受け、多忙を極めていた2021年10月のツアー中に人知れず中絶したことを告白。

画像: フィービー・ブリジャーズ

 「私はプランド・ペアレントフッドに行って中絶薬をもらいました。難しいことではありませんでした。こういったアクセスはみんなに与えられるべきです」とインスタグラムストーリーに投稿し、同団体への寄付や支援を呼びかけるリンクもシェアした。


アシュレイ・ジャッド

 #Me Tooの”元凶”とも言われるハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行の被害を告発した女性の1人としても知られる俳優のアシュレイ・ジャッドは、2019年に出席した世界女性サミットのスピーチで過去に受けた3度のレイプ被害に言及。そのうちの1回が望まない妊娠につながったことを告白した。

画像: アシュレイ・ジャッド

 アシュレイは、当時暮らしていた州の法律でレイピストにも共同親権が渡ってしまう可能性があったことにふれ、「安全に、合法的に堕胎することができたことに、とても感謝しています」と話した。


ユマ・サーマン

 映画『キル・ビル』などで知られる俳優のユマ・サーマンは、2019年にテキサス州で施行された中絶制限法に反対し、米TheWashington Postに寄稿。キャリアをスタートしたばかりだった10代の頃、仕事で滞在していたヨーロッパで関係を持っただいぶ年上の男性に誤って妊娠させられてしまったことを告白した

画像: ユマ・サーマン

 “子供は産みたいが、安定した家庭環境で育てることができない”という理由から、家族と相談して中絶することを選んだというユマ。

 その後、キャリアを積み、準備が整ったうえで3人の子供を出産したユマは、今でも中絶の事を思い出して悲しくなることはあるものの、「早すぎる妊娠を終わらせるという選択は、私を成長させ、自分がなりたいと思う母親、なる必要がある母親にしてくれました」と綴った。

スティーヴィー・ニックス

 ヒット曲「ドリームス」などで知られるイングランド初のロックバンド、フリートウッド・マックのボーカルであるスティーヴィー・ニックスは、バンドが全盛期を迎えていた1979年に妊娠し、中絶を選んだことを英The Guardianのインタビューで明かした。

画像: スティーヴィー・ニックス

 「もしあの時、私が中絶していなければ、フリートウッド・マックの成功はなかったでしょう。あの頃の私には、子供を育てながら、当時の膨大な仕事量をこなすということは到底できませんでした。たぶん活動を辞めることになっていたと思います」

 自分の音楽で世界中の人々の心を癒したり幸せにしたりというのは、そう誰にでもできることではないはずと、子供を産んで育てることよりもキャリアを優先したことを「一切後悔していない」と語った。

ローラ・プレポン

 ドラマ『オレンジ・イズ・ニューブラック』の俳優ローラ・プレポンは、2018年、2人目を妊娠中にお腹の子の脳と骨の発達に異常があることがわかり、妊娠を続けると母体にもリスクが生じると医師から告げられた。

 夫で同じく俳優のベン・フォスターと話し合って妊娠を継続しないことを決めたというローラ。非常につらい経験で、身体的にも精神的にも回復に時間はかかったが、その後、2020年に3人目を妊娠し、元気な赤ちゃんを出産した。

画像: ローラ・プレポン

 妊娠を人工的にストップするという経験をしたことで「健康な子供が生まれるということが、どれだけ恵まれていることか気づきました」と米Peopleに話している。


キキ・パーマー

 ディズニー・チャンネル出身で映画『ハスラーズ』などに出演した俳優のキキ・パーマーは、アラバマで中絶禁止法が施行されたことを受け「失望した」とコメントし、ツイッターで自身の体験を打ち明けた。

画像: キキ・パーマー

 もし子供を産んだら自分のキャリアがどうなってしまうのか心配だったというキキ。「キャリアウーマンと母親としての役割を両立できる気がしなかった」というつぶやきを、ツイッターで語るには難しいトピックだったと、その後削除してしまったが、「女性の人権に関する法律はどんどん後退している気がする。個人の選択肢が奪われていくことに困惑している」ともコメントした。


ミンカ・ケリー

 ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』などに出演する俳優のミンカ・ケリーもアラバマ州の中絶禁止法成立に抗議。

 「若い頃、私は中絶をしました。それは私の人生だけでなく、当時のボーイフレンド、そして生まれてくることはなかった胎児にとっても最善の決断でした」とインスタグラムでコメントしたミンカは、「もしあの時、赤ちゃんを産んでいたとしたら、それは私が生まれついた貧困の悪循環や混沌、機能不全を存続させることにしかならなかったはずです」と、不遇だった自身の子供時代を自分の子供に経験させたくないという思いもあったことを説明した。

画像: ミンカ・ケリー

 ミンカは中絶禁止法に賛成した上院議員たちに宛てて「女性たちに妊娠を最後まで継続することを強制するなら、なぜ性教育や産婦死亡率、保育施設の無償化、有給の育児休暇に関して議論することを避けるのでしょうか?」という疑問も投げかけている。


ニッキー・ミナージュ

 ラッパーのニッキー・ミナージュは2014年の米Rolling Stoneとのインタビューで、10代の頃の妊娠・中絶に言及した。「それまでの人生で一番つらい出来事でした。ずっと頭から離れません」と振り返ったニッキーは、母親になる「準備ができていなかったんです。子供にしてあげられることが何もありませんでした」と、当時は中絶以外の選択肢は無いと思っていたと明かした。

画像: ニッキー・ミナージュ

 ニッキーは2021年9月、夫のケネス・ぺティとの第1子を出産。溺愛する我が子を思い切り甘やかす写真をたびたびインスタグラムで公開している。


テス・ホリデー

 20歳で第1子を出産し、30歳で第2子を出産したモデルのテス・ホリデーは、産後うつから回復しきれないうちに再び妊娠。自殺を考えることもあるほど鬱だったという当時のメンタルでは、妊娠を継続し3人目を生んで育てることは厳しいと判断し、パートナーと話し合ったうえで堕胎を選択した。

画像: テス・ホリデー

 「もしも私が望み、必要としていた中絶をすることができなかったら、今でも苦しんでいたと思います。中絶をするという決断は、もちろん簡単ではなく、いろんな意味でとても辛かったですが、自分にとっても家族にとっても正しかった、必要だったと思っています。自分の選択を後悔しているかって? いいえ、まったく後悔していません」と、インスタグラムを通じて打ち明けている。(フロントロウ編集部)

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