中絶の権利のために声をあげている女性のなかには、実際に中絶を経験した女性も多い。しかし、そんな彼女たちを「中絶させた男性」が声をあげないのは何故なのか。デヴィッド・クラムホルツが怒りの言葉。(フロントロウ編集部)

中絶を経験した女性の数だけ、相手の男性がいる

 女性の中絶の権利は、各国で長年阻まれてきた。アメリカではここ数年で、いくつかの州が女性の中絶の権利を認めない法案を可決し、1973年に女性の中絶の権利を認めたロー対ウェイド裁判の判決が覆されそうになっている。

 日本では、人工妊娠中絶を受けるには非常に高額な費用がかかることに加え、配偶者やパートナーの同意が必要であることが長年問題となっており、女性が女性の身体について自分で決めることが難しい状況が続いている。

 そんななか、ドラマ『NUMBERS 天才数学者の事件ファイル』で知られるアメリカ人俳優のデヴィッド・クラムホルツがインスタグラムに投稿した怒りが称賛を浴びている。彼が指摘したのは、「女性に中絶をさせた男性」が、女性の中絶の権利のためには声をあげていないこと。

 「沈黙が聞こえるか?それは、性的な関係にあったパートナーが妊娠していた時に、どうしても中絶を必要としていた男たちの沈黙だ。それは耳をつんざくよう(な沈黙)だ。吐き気がしそうだ。充分な“男性”の味方が声をあげていない」

 望まぬ妊娠、そして中絶は、精神的に非常に大きな負担がかかる経験。それでも中絶を選ぶ女性がいるのは、中絶しなければならない理由があるからだ。

 そして妊娠は、女性1人でするものではない。必ず相手がいる。中絶を経験した女性の数と同じだけ、その女性と性的関係を結んだ男性がいる。日本で2021年になされた中絶数は、14万5,340件にのぼる。

男性も女性の中絶の権利に責任がある

 女性たちは、自分が中絶を経験したことがなくとも声をあげてきた。2021年には妊娠中だった俳優のジェニファー・ローレンスが、中絶禁止法に反対する抗議デモに参加。彼女とともに参加したのは、2021年に子宮と虫垂を摘出する手術を受けた俳優のエイミー・シューマー。

 また、ミラ・ジョヴォヴィッチやユマ・サーマン、ニッキー・ミナージュ、フィービー・ブリジャーズ、ローラ・プレポン、アリッサ・ミラノ、ビジー・フィリップズ、アシュレイ・ジャッドなど多くの著名人が、過去に中絶をした経験があるという告白もしている。

 では、当時の彼女たちの相手の男性は?

 中絶を選ぶ理由には、2人の関係の状況、経済的な状況、それぞれがおかれている社会的状況など、様々なものがある。女性たちが中絶できていなかったら、その相手の男性が女性の負担に一切関与しない姿勢でない限り、男性の人生も今あるものとは異なるものになっていただろう。

 女性の権利を制限する法律を制定している政治関係者には圧倒的に男性が多い。2019年にアラバマ州で、レイプ被害による妊娠の中絶すらも禁止する法案が可決されたが、その法案に賛成票を投じたのはすべて男性だった。それを受けて当時、「男性が女性の身体に関する法律を作るべきではない(Men Shouldn't Be Making Laws about Women's Bodies)」という言葉が広く拡散された。男性たちがそれぞれの立場から、女性たちの声を聞いて、女性のために行動を起こすことが求められている。

(フロントロウ編集部)

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