ろう者でバイレイシャルのローレン・リドロフが、『エターナルズ』の撮影で苦労したこと、そしてその経験を経て気がついたことを語った。(フロントロウ編集部)

ろう者として、バイレイシャルとして…、ローレン・リドロフの苦労

 MCU映画『エターナルズ』や、ドラマ『ウォーキング・デッド』などへの出演で知られるローレン・リドロフは、メキシコ系アメリカ人の父親と、アフリカ系アメリカ人の母親を両親に持つ。彼女はろう者であり、有色人種であることから、様々な苦労をしてきたという。しかし、『エターナルズ』の撮影で目が覚める経験をしたと明かした。

 彼女の髪の毛は黒人の髪の毛であり、黒人の髪の毛を扱ったことのない人がヘアセットをするのは難しい。『エターナルズ』で彼女の髪を担当したのは黒人の髪の扱い方が分からなかったそうで、3人がかりで、6時間をかけて準備されることになったと、米EWに明かす。

 ここ数年では多様性をつぶさない作品づくりを心がけているマーベル・スタジオによる作品の撮影でも、このような問題が起こっていたことには驚き。そしてローレンは、ろう者としてすでにいくつかの頼みごとをしていたそうで、それに加えて、さらにヘアスタイリストに黒人の髪の毛を扱える人を起用してほしいと頼むことは考えもしなかったという。

画像: ろう者として、バイレイシャルとして…、ローレン・リドロフの苦労

 まだまだ差別構造が残る社会では、有色人種であれば、白人よりも映画出演へのチャンスは少ない。さらに、ろう者であればチャンスはほとんどないと言っても過言ではないだろう。そのため、「そこにいられることがラッキーだと感じていた」と話すローレンだが、そんな彼女にある出来事が起こった。映画の共演者である別の黒人俳優は、自分の美容師をロサンゼルスから呼び寄せていたのだそう。そこで、彼女も同様のことを頼んで良いのだと知ったという。

 「私は自分の時間を投資しているのだと気がつきました。私は届けたい。演じたい。仕事をしたい。そして仕事をするためには、ろう者として、バイレイシャル(※)として、私が必要とするものを得られなければならない。そして私にはこの髪の毛がある。あれは私をハッとさせる出来事でした。その後は、頼み事をすることについて、より勇気が持てるようになりました」
 ※両親の人種がそれぞれ異なる人。

黒人俳優が直面する髪の毛の問題

 ローレンが頼む勇気を持てたのは非常に良いことだが、一方で、彼女の話からはまず、何かを頼む必要がない立場でいられることは特権なのだと理解させられる。ローレンが白人だったり、耳が聞こえていたりしたら、まずこの問題は起こらなかったはず。

 黒人の髪の毛を扱えるヘアアーティストが起用されていないというのは、度々問題になることで、映画『ハイスクール・ミュージカル』でテイラーを演じたモニーク・コールマンは、キャラクターのトレードマークであるカチューシャをつけることになった原因は、ヘアスタイリストが自分の髪の毛を扱えなかったことだったと明かしている

 これらのことから、ショービズの世界では、黒人のヘアメイクアップアーティストが充分に起用されていないことや、黒人の髪の毛は扱えない人もいるということが認識されていないこと、そして黒人の髪の毛が扱えなくても一流作品のヘアメイクアップアーティストになれるということが分かる。

 黒人でもあり、ろう者でもあるローレンが直面する問題は多い。最後に彼女は、様々な作品に出演してきたことで、ろう者の俳優はもっと起用されるべきだと気がついたと話した。

 「ハリウッドは小さな場所で、歴史的には、1人か2人のろう者しかいられなかった。そして、とても長い時間そう考えられていた。しかし今、いくつかの作品に参加してきて、『ノー。より多くの才能を持つろう者のための場所がかなりある』というかんじです」

(フロントロウ編集部)

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