ダヴ・キャメロンが新曲「Breakfast」のMVで、“男女の社会的立ち位置が逆になった世界”を描いた。そこに込めた思いは?(フロントロウ編集部)

ダヴ・キャメロン、ロー対ウェイド判決を受けての決意

 俳優でミュージシャンのダヴ・キャメロンが、新曲「Breakfast」のMVを公開。映像では、超自信家のビジネスウーマンたちが男性社員を雑に扱い、セクハラをし、そして中絶をする男性を気づかわないどころか理解せずに酷い言葉をかける様子や、テレビCMで男性に向けて、掃除グッズを購入したいと「妻に頼もう」という内容が流れる様子など、社会全体で男性を軽視している様が描かれる。

 これまで、女性の人権のために声をあげてきたダヴが、今このタイミングでこのような内容のMVをリリースした意図は明らか。アメリカでは今年6月に、最高裁が女性の中絶の権利を保障した「ロー対ウェイド判決」を覆した。すべての女性に選択の自由があるべきだが、この決定によって一部の州ではレイプの結果であっても妊娠中絶が受けられず、さらに処置が似ていることから流産、子宮外妊娠といったものへの対処も受けられない女性が出てきている。

 ダヴは米Peopleのインタビューで、判決が覆された時には気持ちが深く落ちてしまったと明かす。当時、彼女は「Breakfast」のMVの制作に加え、AppleTV+ドラマ『シュミガドーン!』のシーズン2の撮影も行なっていた。しかし彼女は自身のメンタルヘルスのことを考え、コロンビア・レコードのチームに、「Breakfast」のプロモーションから2週間ほど休みを取りたいと相談したそう。するとCEOのロン・ペリーは休みを取らせてくれただけでなく、新たに「Breakfast」のMVを作ることを提案し、彼女が社会に対して訴えたいことを組み込んだものに変更する機会を与えてくれたのだという。

 その結果、出来上がったのが「Breakfast」のMV。男女の立場を逆にして、女性が置かれている立場を訴えるという手法は、フランス映画『軽い男じゃないのよ』といった作品でも見られたが、ダヴは4分半の作品でメッセージを上手くまとめた。

 「いつくかのポイントは見ていて不快です。それが狙いです」と話すダヴ。映像のトーンを弱めようかと考えもしたが、チームで話し合い、勢いを消さないことにしたのだという。

ダヴが「breakfast」に込めた思い

 ダヴが「breakfast」を作曲したのは「Boyfriend」と同じ頃で、若い女性として無力感を感じていた頃だったという。しかし、そんな彼女の新曲の歌詞には、こんなものがある。

力について話したいの?
力というものを見せてあげる
私は朝食を食べるようにあなたのような男の子を食べる
ひとりひとりネックレスにつるして
そうすれば彼らはずっと私のもの

 強気な彼女の歌詞を聞いた女性たちのなかには、これは自立した女性の歌だとして励まされた人も多かったそうで、そんなファンの反応に気がついたダヴは、「breakfast」のMVを現在の形にしようと思ったのだそう。

 「1つのジェンダーだけが生殖に関する重荷を背負わなければいけないというのは非人道的です。馬鹿げていて、虐待的です」と米Vogueに話す。そしてMVに込めた思いについて、彼女はPeopleでこう語った。

 「この状況がどれだけ馬鹿げていて、毎日女性でいることで、どれだけ傷つけられ、制限され、罠を仕掛けられ、おとしめられているかを見せたかったんです。映像を見た後には、みんなが、“待って。これは50年代の話じゃない。これは今。昨日。これまで。そして今”となってくれれば良いなと思います」

(フロントロウ編集部)

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